Q:繰り下げ受給に向いている人って?
「年金はできるだけ遅くもらったほうがお得ではないかと思っています。どんな人が繰り下げ受給するのに向いているんでしょうか?」(57歳男性)
年金の繰り下げに向いている人とは
A:収入を得ることができる人、受給開始までの生活費を賄うだけの金融資産を保有している人等です
老齢年金は、65歳で請求せずに66歳以降、最長70歳(令和3年現在)までの間で、申し出た時から繰り下げて請求できます。繰り下げ受給の請求をした時点に応じて、ひと月あたり0.7%の年金額が増額されます。増額率は、繰り下げ月数×0.7%(0.007)で計算しますので、70歳まで繰り下げると、65歳時点の年金額より42%増額された年金額を受け取れます。
また、2022年(令和4年)4月以降は、昭和27年4月2日以降に生まれた人が対象になりますが、受給開始の上限年齢が、70歳から75歳に引き上げられることになります。
例えば、最長75歳で受給開始すると、65歳時点の年金額より、84%増額された年金を受け取ることができます。増額された年金額は一生涯続きますので、老後生活の安心材料となります。
繰り下げしている期間は年金がもらえませんので、日々の生活費を賄うためには、年金受給開始までは働いて収入を得る、もしくは貯金を取り崩すことになります。
繰り下げ受給を検討する時は、65歳時点の年金額が基準になりますので、65歳からの年金受給額がいくらなのかを調べましょう。その上で老後資金が不足する場合には、足りない分を自分で準備する必要があります。
また、老後の生活費をダウンサイジングをすることも必要になります。60歳、65歳で完全に仕事を辞めてしまうと、繰り下げ受給を検討している人は、多額の金融資産を保有していない限り老後の生活を維持することができません。
よって、下記のような人以外は、繰り下げ受給をすることは難しくなります。
【1】年金受給開始までの生活費を働いて収入を得ることができる人
【2】勤労収入が少なくても保有している預貯金で不足を賄える人
【3】多額の金融資産を保有している人
繰り下げ受給をした結果、受け取る年金額が多くなりますので、所得税や住民税の負担が重くなることや、国民健康保険料や介護保険料の負担が多くなる可能性も高くなります。年金収入が現役並みの所得に該当してしまうと、医療費の自己負担額が3割負担、介護保険の利用も、2割もしくは3割負担になる可能性もありますので注意しましょう。
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監修・文/深川弘恵(ファイナンシャルプランナー)
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