よりによって結婚式直前に……
「彼が別れたと言っていた彼女とまだ会っているとわかったのが、結婚式3日前だったんです。こんなタイミングでどうして、と泣き崩れました」そう言うのはアヤノさん(33歳)だ。この夏、2年つきあった彼と結婚式を予定していた。つきあっている間、彼に「怪しい影」はなかったという。
「今年の初めに結婚という言葉が出て、そこからいろいろ話し合って結婚を決めました。彼は2歳年上。わりと密なつきあいをしてきたんです。ここ1年は半同棲状態でした。ふたりともひとり暮らしです。この1年はリモートワークになっていたので、昼間はそれぞれ自宅で仕事をして、夕方以降はどちらかの部屋で過ごすことが多かった。まったく浮気しているなんて思いませんでした」
それがバレたのは、彼の元カノから、SNSを通じてアヤノさんに連絡があったからだ。
「結婚するってホント?と私のSNSに匿名で書き込まれていたんです。誰からなんだろうと思っていたら、今度はメッセージで『彼、まだ私とつきあっているのにww』と書かれていた。彼から元カノの話はちらっと聞いていたから、ああ、あの人なんだろうなとわかりました」
彼はその元カノと20代後半に1年ほどつきあい、浮気されたあげく逆ギレされて別れたと話したことがあったのだ。
「性格が悪くて男を翻弄するような女だったと聞いたとき、彼はまだ彼女に未練があるのかもと不安を覚えたのは事実です。もう関心がなければそんな悪口言いませんからね」
そんな不安が的中してしまったのだ。アヤノさんはそのSNSのスクリーンショットを撮って彼に送った。彼はあわてふためいたように、「違うよ、彼女が勝手に言っているだけ。相談があるからと言われて会ったけど何もしてない」とすぐに返信してきた。
「彼、もともと返信が遅いタイプなんですよね。でもあのときだけは早かった。だからますます怪しいと思ったんです」
昔の彼女にSNSで侮辱されて
その彼女からは何通かメッセージが来た。アヤノさんが傷ついたのは、「結婚したとしても、彼はずっと私のことを思い続けるんじゃないかな。それでもいいの?」という言葉だった。「あなたも彼に未練があるなら、きちんと言えばいいでしょと返したんですが、彼女は『私はもっといい男と結婚するから。彼とのことは元々遊びだし』って。私の結婚相手をそんなふうに侮辱するなんてと腹が立ちましたね。彼も、どうしてそんな女性と結婚間近までつきあっているのか。彼は彼女に侮辱され、私はふたりにバカにされている。そんな気がしました」
その日の夜、彼は彼女の自宅にやってきて、さまざまな言い訳をした。言葉を重ねれば重ねるほど彼が薄っぺらく見えたという。当然、結婚式は中止になったのかと思いきや、「結婚したんですよ、私」とアヤノさんは言った。
「結婚式を辞めたら違約金が発生するし、招待客にも申し訳ない。だから結婚式だけはするしかないと思ったんです。式の間中、私は彼を睨んでいたし、彼はひたすら頭を下げていましたけどね」
その後、ふたりは婚姻届を出さないままだ。ただ、不思議なのは彼との関係はそれまでと同じ状態で続いているということ。
「別れる踏ん切りがつかないんですよね。彼は本当に元カノのことを思い切ったみたいに振る舞っているし、彼女からの嫌がらせもなくなった。完全に切れているなら、もう少し様子を見てもいいのかなと思って。友人からは『さっさと別れたほうがいいよ』と言われるんですが、決断ができないままです」
このまま彼に貸しを作った状態で結婚したら、いろいろなことが自分に有利に運ぶかもしれないという「ずるい考え」もあると彼女は白状した。
「来春、私の住んでいる集合住宅が更新になるんです。そのときに決断するしかないと思っています。彼は『オレは許してくれるのを待つ』と言っていますが、私は自分の気持ちがわからなくて。許したためにあとで後悔するのは嫌だし、このまま別れてしまうのもなんとなく惜しい。こんなに心が揺れたことはありません」
最悪のタイミングで浮気が発覚した上に、元カノから屈辱的な言葉を浴びせられたアヤノさん。それでも彼への気持ちが完全に冷めたわけではなさそうだ。彼の本音を聞き出しながら、ゆっくりじっくり考えるしかないのかもしれない。