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経済活動と環境保全、どちらが重要?深刻化する海洋ごみの実態を紹介

10月にTBSでスタートした日曜劇場『日本沈没-希望のひと-』でテーマのひとつとなっている「経済と環境、どちらを守るか」。今回は「経済か環境か」の意識調査アンケートの結果を発表するとともに、現実に起こっている海洋ごみの実態も紹介します。

鴫谷 隆

執筆者:鴫谷 隆

海洋環境問題・スキューバダイビングガイド

10月にTBSでスタートした日曜劇場『日本沈没-希望のひと-』。第1話(10月10日)の無料見逃し配信再生回数が、放送後1週間で261万回を記録し、日曜劇場の初回としては歴代1位を獲得するなど、現在話題になっているドラマですが、皆さんはもうご覧になりましたか?

このドラマでテーマのひとつとなっているのが、「経済と環境、どちらを守るか」というもの。実はこの問題、ドラマの中だけでなく、現実の中でも起こっており、世界の多くの国で経済活動が加速する中、多くの環境問題が起こっています。

特に注目されているのが、プラスチックごみをはじめとする海洋ごみの問題です。

そこで今回、All About編集部では「経済か環境か」の意識調査アンケートを実施しました。その結果を発表するとともに、現実に起こっている海洋ごみの実態も紹介します。

・男女比:男性 150名/女性 342名/回答しない 8名
・年齢比:10代 4名/20代 100名/30代 164名/40代 128名/50代 76名/60代 26名/70代 2名
・アンケート実施期間:2021年10月15日~21日
 

経済と環境、どちらが重要?

経済と環境、どちらが大事ですか?

経済と環境、どちらが大事ですか?

All About編集部が実施したアンケートの結果では、経済活動よりも環境保全のほうが大事という人がかなり多い結果となりました。

『日本沈没』を見たという人は、見ていない人に比べて「環境保全のほうが大事」という割合が高く、ドラマの影響でより環境問題に関心が高まっていることも感じられます。

また、「どちらでもない」「わからない」など、どちらか一方を選択することは難しく、「どちらも大事なので両立する道を探すべき」という意見も多く見られました。

〇環境保全のほうが大事という人の意見
・いくら経済活動を活発に行なったとしても、土台となる地球環境が破壊されてしまったら本末転倒。(50代 男性)

・環境はひとたび壊れてしまうと再生までにかなりの年月が必要となるため、子や孫の世代にまで影響を与えてしまう。経済は人類の作るシステムだから考えや目先を変えるなどの修正がいくらでもできる。(50代 男性)

〇経済活動のほうが大事という人の意見
・まずは経済が潤って人々に生きる余裕が出なければ、環境のことを考える余地が生まれないから。(30代 女性)

・日本は他国に比べれば環境保全はいいのではと思う。二酸化炭素の排出量についても罰金とかではなく発展途上国に技術を伝えて減らしていくみたいなのがいいと思う。(40代 男性)
 

現実の海で今、起こっていること。

「経済活動のほうが大事」という人の中には「環境問題について懐疑的に見ている」人もいましたが、私がダイビングで海の中を見ていると、今まで海藻が繁茂していた場所が、砂漠のようになっていたり、いくつものプラスチックごみが海中を漂っていたりと環境はどんどん悪化しているように感じています。
海の中に潜ると、海底にもいろいろなごみが沈んでいます。

海の中に潜ると、海底にもいろいろなごみが沈んでいます。

特に最近気になっているのが、海洋ごみについて。海のごみの7~8割は陸から来ている陸域から河川への廃棄物流出メカニズムの共同調査より〉といわれており、風で飛ばされたり、川から流されるなどして海に到達します。

その約7割がビニール袋やペットボトルなどのプラスチックごみで、毎年少なくとも800万トンとも。2015年のデータでこの量なので、現在ではさらに多くのプラスチックごみが海に流入していることが考えられます。

このままいくと、2050年の海の中は、魚よりもごみの量のほうが多くなる世界経済フォーラムの報告書(2016年)より〉という試算もあります。
実際にダイビングで拾ったごみの数々。いろいろな種類のごみがありますが、プラスチック製品も多いです。

実際にダイビングで拾ったごみの数々。いろいろな種類のごみがありますが、プラスチック製品も多いです。

 

問題1 海中や海岸の景観を損ねる

プラスチックごみは自然分解せず、半永久的に海の中を漂います。そのため、風や潮によってプラスチックごみが流れ着くと、そこにどんどんごみが溜まっていき、海中や海岸の景観を損ねることになります。

汚い海には、誰も行きたいと思いませんよね。2018年にOECD(経済協力開発機構)が発表した報告によると、海に流れ出たプラスチックごみがアジア・太平洋地域の観光業に与える損害は年間6億2200万ドル(約672億円)経済協力開発機構(OECD)報告書より〉といわれています。

プラスチックごみは観光を主とする地域の経済活動に大きな影響を与えるのです。
こんな海には誰も行きたいと思いませんよね…

こんな海には誰も行きたいと思いませんよね……

 

問題2 海の生き物にダメージ

海洋プラスチックごみの影響により、魚類、海鳥、アザラシなどの海洋哺乳動物、ウミガメを含む少なくとも約700種もの生物が傷つけられたり死んだりしているWWFジャパンより〉といわれています。

例えばエサと間違えて食べてしまう場合、ちょっとしたプラスチックごみでも、喉に詰まれば動物は窒息してしまう可能性が。また、プラスチックをたくさん飲みこんでしまうと、消化されないプラスチックで胃がいっぱいになってしまい、餌をとろうという気持ちにならず、栄養分が体にいかないため、餓死してしまいます。

そして、釣り糸やロープ、ビニールテープなどのプラスチックごみは、動物や鳥のヒレやヒレ足、羽、首に巻き付くことで、ケガや窒息、溺死の原因になります。海にすむ生き物にとってプラスチックごみは大きな脅威となっているのです。
水中を漂うビニール袋は、遠くから見るとまるでクラゲのよう。エサと間違えてウミガメが食べてしまうことが報告されています。

水中を漂うビニール袋は、遠くから見るとまるでクラゲのよう。エサと間違えてウミガメが食べてしまうことが報告されています。

 

問題3 マイクロプラスチックの有害性

海洋プラスチックごみにおける問題で、今大きく注目されているのが「マイクロプラスチック」についてです。

マイクロプラスチックとは、廃棄されたプラスチックが、紫外線や波の影響で劣化し、5mm以下のサイズになったもののことをいいます。

そのほか、化粧品や洗顔料にスクラブ材(磨き粉)として配合されている1mm以下の球状のプラスチック粒(マイクロビーズ)や、ポリエステル、ナイロン、フリースなどの素材を洗濯すると発生するくず、台所のポリウレタン製やメラミンフォームのスポンジやアクリルたわしの破片も、下水道や河川を通じて海に入っており、世界中の海に漂うマイクロプラスチックは、50兆個以上グリーンピース・ジャパンより〉あるという推計もあります。

心配されるのは、それがエサとして、あるいはエサと一緒に生物の体内に取り込まれ、それを人が摂取したときに、どのような影響が出るのかということ。すでに私たちは1週間でクレジットカード1枚分(5グラム)を体内に取り込んでいるという研究結果〈豪ニューカッスル大学などの報告より〉もあります。

まだ明確なエビデンスはないものの、マイクロプラスチックに吸着した環境ホルモン等の有害物質が、健康への被害や生殖機能への悪影響を引き起こすのではないかと懸念されています。
世界の海に漂うマイクロプラスチックは50兆個以上とも言われています。

世界の海に漂うマイクロプラスチックは50兆個以上ともいわれています。

 

私たちにできることは?

前述したように、海洋ごみの7~8割は陸から来ています。つまり、私たちが日常で排出しているごみが、最終的に海にたどり着いているのです。ですから、私たちにできる最初のことは、「陸から出るごみを減らす」こと。

・プラスチックごみが出ない商品を選ぶ
・プラスチック製品の使い捨てを避ける
・プラスチックの代わりになる製品を使う


など、ちょっと意識するだけで、日常生活から出るプラスチックごみは大きく減らすことができます。

「ペットボトルの代わりにマイボトルを使う」、「ビニール袋の代わりにマイバッグを使う」、「プラスチック製の使い捨てのスプーンやフォークを使わずに、カトラリーを持参する」など、できることから実践してみてはいかがでしょうか。

また、ご自身のごみの廃棄の仕方が適切かも改めて見直してみましょう。プラスチックごみはきれいに洗って水切りし、きちんと分別して出すことが基本。

出したごみが、風で飛ばされたり、雨で流されたりしないよう、決められた場所に適切な形で出すことも大切です。
私はいつもカトラリーを持ち歩いて、使い捨てのプラスチックのスプーンやフォークを受け取らないようにしています。けっして食いしん坊だからというわけではありません。

私はいつもカトラリーを持ち歩いて、使い捨てのプラスチックのスプーンやフォークを受け取らないようにしています。けっして食いしん坊だからというわけではありません。

 

おわりに

最近では海洋プラスチックごみをアップサイクルして製品にするという取り組みも増えてきており、環境保全を経済活動にうまく生かしている例も見られます。

海の中の環境はなかなか目にする機会がなく、ややもすると遠い世界のように感じられがちですが、海の環境に大きな影響を与えているのは陸上の活動であり、その影響はやがて私たちのところにも戻ってきます。

美しい海の環境を守り、後世に残し、自然とうまく共存した生活ができるよう、自分たちに何ができるか、一緒に考えてみませんか。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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