岸田新政権発足で注目の市場動向
岸田文雄氏が自民党総裁に選出され、その後の臨時国会で第100代内閣総理大臣に就任しました。10月14日に衆議院が解散し、31日に投開票の予定となっています。勝敗ラインは自民党・公明党の与党で過半数の議席獲得としています。選挙後に、政権は本格的に動き出すことになります。岸田内閣の基本方針は、以下の5つです。
- 新型コロナウイルス対策
- 新しい資本主義の実現
- 国民を守り抜く、外交・安全保障
- 危機管理の徹底
- 東日本大震災からの復興、国土強靱化
この中で注目されるのは、新しい資本主義の実現です。成長戦略をピックアップすると、地方のデジタル化を推進するデジタル田園都市国家構想、人生100年時代の不安解消、子育て世代の教育費支援などが挙げられています。
新政権の政策を鑑みて市場にはどんな動きが?
こういった点を踏まえ、株式市場ではシニア人材派遣企業、保育関連、次世代高速通信の5Gに絡む企業などが物色されています。また、国土強靱化では、秋に数十兆円規模の経済対策を行うことを表明していることから、地盤改良、橋梁、道路などのインフラ関連の企業に注目が集まっているようです。
一方、「分配なくして成長なし」と中間・低所得層への分配を行う方針を明らかにしています。財源は富裕層への増税となる見込みです。当面は見直しを考えないという報道もありましたが、具体的には現在一律20%となっている金融所得課税について、1億円以上の層への増税を示唆していました。キャピタルゲイン課税の強化を連想させ、これが株価の下落要因になっている面もあるようです。
岸田ショック!? 8日連続株価下落の要因は?
ただ、株式市場では早くも岸田内閣への強気、弱気のそれぞれの見方が浮上し、株価は乱高下しています。日経平均は8月20日に2万6954円という今年の安値を付けました。その後は新型コロナ感染症の新規感染者減少などで戻りに転じました。しかし、9月3日に菅義偉首相(当時)が自民党総裁選に出馬しないと表明したことで上げが加速し、日経平均株価は9月14日に3万795円高値まで一気に上昇しました。これは1990年8月以来、約31年ぶりの高値水準となりました。支持率が低迷していた管内閣では、衆院選の動向が気がかりでしたが、交代となれば選挙で優位になるとの見方が広がったためです。
その後は一転して売りが優勢となり、9月27日からは8日連続の下落で、1カ月ぶりの安値に逆戻りしています。海外メディアは岸田内閣に期待できないことが株価下落の要因として、「キシダ・ショック」と伝えています。
上昇局面では外国人投資家の大量買いがけん引した一方、下落局面でも海外勢の売りが影響しました。ただ、内閣は発足したばかりであり、評価を下すのはあまりに拙速といえそうです。
衆院選の投開票は10月31日。仮に自民党と公明党で過半数の議席を獲得すれば、安定政権が発足します。岸田政権の本格的な評価は、その時点からスタートすることになるでしょう。政策に沿った銘柄の物色も、それ以降ということになるのではないでしょうか。