同族嫌悪とは(近親憎悪とは)……「似た者同士」の複雑な感情
「自分に似ているあの人のことが嫌い」この感情が同族嫌悪、近親憎悪
「同族」とは、家族や友人、性格や趣味が似ている人、同じ出身地の人など、自分と共通点の多い人を指します。このような「同族」に対して、嫌な気持ちを感じてしまうことがあるのは、なぜでしょうか? ここには2つの原因があります。
同族嫌悪はなぜ起こる?原因1:自分の嫌な面を見せつけられる
同族嫌悪を引き起こす心理として知られるのが、「投影」です。「投影」とは、自分が否定したい自分自身の嫌な面が、相手の姿や行動を通して見えてしまうことです。「同族」の相手には、相手の言葉や態度を通して、自分自身の嫌な一面が透けて見えてしまうことが多いものです。たとえば、自分と似たような仲間と以前はとても楽しく付き合っていたのに、数年たつと、その仲間とかかわりを断ちたくなってしまうことがあります。その理由の一つに、自分と似た仲間とかかわりつづけることで、仲間の言動から自分が隠したい恥ずかしい一面が投影され、つらくなることがあげられます。
同族嫌悪はなぜ起こる?原因2:共感しすぎるあまり、つらくなってしまう
同族嫌悪には、「共感」も大きく作用しています。自分と共通する文化や生活を共にしてきた人とは、考え方や行動が似ているため、共感できる部分が多いものです。たとえば親戚や同郷の人たちは、同じ地域のなまりや風習を受け継ぐ、共感性の高い関係といえます。そうした文化や慣習から逃れて新しい人生を築いてきた人が、再び法事などでめぐりあうと、彼らの言動から自分の忘れたい過去を思い出さざるを得ず、つらくなってしまいます。
つまり、自分が乗り越えたい過去をよく知っている人たちとは、共感できる部分が多いだけに、付き合うとつらくもなってしまうのです。この感情が同族嫌悪につながっていると考えることもできます。
同族嫌悪の感情と上手に付き合う3つのポイント
同族嫌悪は不快な感情ですが、自分に似た人に不快な気持ちを覚えたときには、自分を見つめ、自分を磨くよいチャンスだと捉えてみるといいでしょう。次に、同族嫌悪と上手に付き合うポイントを3つお伝えします。1. 相手を否定する前に、自分にも似た面がないかを振り返る
相手の行動に嫌な思いがしたときには、「相手の行動のなかに自分に似た部分があるのかもしれない」と考えてみましょう。たとえば、ある特徴的な言葉づかいをする人を不快に感じる場合、自分にも似たような言葉を使いがちになっており、そうした自分を改善したいと心のどこかで思っているのかもしれません。
2. 相手を不快に感じることから、自分の成長のポイントを見つける
1.のように、他人の言動を不快に感じる自分に気付いたら、自分が成長するために何をするべきかを考えてみましょう。たとえば、相手の行動のなかに「自分にも似たような面がある」と感じたときには、その似ている部分を修正していくとよいでしょう。
3. 適度な距離を保つことで、学びあう関係になる
同族嫌悪を感じる相手は、自分の「鏡」となる存在です。相手との距離が近すぎると、いつも自分の姿を見せられているようで、つらくなってしまいます。できるだけ、適度な距離を保って付き合っていきましょう。
「同族嫌悪」をおぼえると、たしかに嫌な気持ちになります。でも、だからこそ、相手の行動から気づけること、学べることが多いのです。相手のことを否定するのではなく、相手が自分に何を見せてくれるのか、気づかせてくれるのかを考え、自分の成長につなげていくようにすることが大切です。