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「SIMロック原則禁止」で何が変わる? 注意点やメリット/デメリットを整理

2021年10月1日より、端末を購入したキャリア以外のSIMを挿すと通信ができなくなる「SIMロック」が原則禁止となりました。SIMロックが原則禁止となることで、消費者にはどのような影響がもたらされるのでしょうか。

佐野 正弘

執筆者:佐野 正弘

携帯電話・スマートフォンガイド

2021年10月1日より、端末を購入したキャリア以外のSIMを挿すと通信ができなくなる「SIMロック」が原則禁止となりました。SIMロックが原則禁止となることで、消費者にはどのような影響がもたらされるのでしょうか。
 

なぜSIMロックが原則禁止になったのか

契約するキャリアを変えたらスマートフォンも買い替えなければならない、というのがかつての常識でしたが、今後その常識は大きく変わることとなりそうです。なぜなら携帯電話会社に対して、今後発売する端末にSIMロックをかけることを原則禁止することが決まったからです。

SIMロックとは、要はスマートフォンを購入したキャリアとは違う会社のSIMを挿入すると、通信できないようにする仕組み。例えばauで購入したスマートフォンにSIMロックがかかっていた場合、ソフトバンクのSIMを挿入しても使えないこととなります。
SIMロック禁止

キャリアから購入したスマートフォンに、他キャリアのSIMを挿入しても通信をできなくするのがSIMロックだ

そして以前は、キャリアから販売されるスマートフォンにSIMロックがかかっていることが当たり前で、外すことができなかったことから、キャリアを変えると端末を変える必要があった訳です。ですがそのSIMロックをキャリア間の乗り換えを阻む存在として長年問題視していたのが総務省です。

総務省は内閣総理大臣である菅義偉氏が総務大臣だった2007年から、約14年にわたってSIMロック解除をキャリアに求めてきました。そのため現在販売されているスマートフォンの多くは、SIMロックがかかっていても何らかの手段で後から外すことができるようになっています。
SIMロック禁止

総務省「スイッチング円滑化タスクフォース」第1回会合資料より。総務省は長年にわたってSIMロックの存在を問題視しており、2014年にはSIMロックの解除を義務化するなど、キャリアにSIMロック解除を強く求めてきた

総務省は、総理となった菅氏が政権公約として打ち出した携帯電話料金引き下げ実現に向けた取り組みの一環として、キャリア間の乗り換えハードルを一層引き下げて料金競争を促進するべく、SIMロックをかける事自体を原則禁止することにまで踏み切った訳です。
SIMロック禁止

総務省「スイッチング円滑化タスクフォース報告書(概要)」より。2020年から2021年にかけて実施されていた同タスクフォースでの議論の結果、SIMロックの原則禁止が決められた

 

SIMロック原則禁止のメリットは?

総務省が2021年8月10日に改正した「移動端末設備の円滑な流通・利用の確保に関するガイドライン」を見ますと、2021年10月1日以降に発売された端末は原則SIMロックをかけることを禁止するとしています。10月以降に発売されたスマートフォンは全て、原則SIMロックがかかっていない状態で販売されると考えていいでしょう。

SIMロックがかかっていない端末は、家電量販店やECサイトなどで「SIMロックフリー」あるいは「SIMフリー」として販売されているスマートフォンと同様に、どのキャリアのSIMを挿入しても通信ができるようになります。それゆえ、例えばNTTドコモで購入したスマートフォンに、auやソフトバンク、楽天モバイル、さらにはMVNOのSIMを挿入しても通信ができ、端末を買い替えることなくキャリアを変えられるのです。
SIMロック禁止

NTTドコモで購入した「AQUOS R5G」をSIMロック解除し、ソフトバンクの「LINEMO」のSIMを挿入して利用しているところ。2021年10月1日以降に発売される端末は原則、SIMロック解除をする必要なくこうした使い方が可能になる

ただ、SIMロックの禁止はあくまで“原則”ですので、端末販売時にSIMロックがかけられるケースも存在します。分割払いで端末を購入する際、不払いのリスクがあると判断された場合は、総務省への確認の上でSIMロックがかかった状態で販売されることがあるようですが、その場合も支払いや信用が確認できた場合は速やかに、無料で、手続きなしでSIMロックを外すこととされています。

そしてもう1つ、先のガイドラインは2021年10月1日より前に販売されている端末は適用されないので、それ以降もSIMロックがかかった状態で販売される場合があります。そうした端末を購入した場合は従来同様、SIMロック解除の手続きが必要になります。

ただNTTドコモは既に一括、あるいは分割でもクレジットカードで端末代を支払う場合はSIMロックがかかっていない状態で端末を渡すようになっていますし、ソフトバンクも2021年8月18日より順次、「ワイモバイル」「LINEMO」など自社ブランド間で乗り換えをした場合はSIMロック解除手続きを自動化するとしています。KDDIも一部の最新機種でSIMロックがかかっていない状態での販売を開始しているほか、楽天モバイルはサービス開始当初から販売する端末にSIMロックをかけていません。

そうしたことから既に、SIMロック解除しなくても他キャリアのSIMで利用できる端末が増えていることも知っておくといいかもしれません。
 

キャリアと端末の対応周波数に要注意

先に、SIMロックがかかっていないスマートフォンはどのキャリアのSIMを挿入しても通信ができると書きましたが。実は、他キャリアのSIMで利用すると必ずしも快適に通信ができるとは限らない場合があります。

それは使用するキャリアが免許を持つ電波の周波数帯と、端末側が対応する周波数帯が一致しない場合です。4キャリアに割り当てられている周波数帯(バンド)は一律ではなく、1.7GHz帯(バンド3)のように4社全てに割り当てられている帯域もあれば、4Gの900MHz帯(バンド8、ソフトバンクが使用)や5Gの4.5GHz帯(バンドn79、NTTドコモが使用)など、特定のキャリアにしか割り当てられていない帯域もあるのです。

しかもどの周波数帯を、どのような形で使っているかは携帯電話会社によって違いがあり、割り当てられている全ての周波数帯で、必ずしも全国津々浦々をカバーしているとは限りません。例えば5G向けに割り当てられた4.5GHz帯や3.7GHz帯(バンドn77/n78)などは、まだ整備が進んでおらず全国の一部のエリアでしか利用できません。

そうしたことから、契約するキャリアの主要な周波数帯に一通り対応しているスマートフォンを使わないと、性能をフルに発揮できない可能性が高いのです。中でも注意が必要なのが大手キャリアが販売するAndroidスマートフォンです。

iPhoneは元々4キャリアの主要な周波数帯をほぼカバーしていますが、大手キャリアが販売するAndoridスマートフォンは、そのキャリアの周波数帯だけをカバーし、他キャリアの周波数帯にあまり対応していないことが多いのです。SIMロックがかかっていないからといってそうした端末に他キャリアのSIMを挿入して使うと、通信速度が出なかったり、場所によっては通信ができなかったりする可能性があります。

各社に割り当てられている周波数帯は、総務省の「テレコム競争政策ポータルサイト」内にある「各携帯電話事業者の通信方式と周波数帯について」で確認ができます。またSIMロックのかかったスマートフォンを販売している3キャリアの場合、各社のSIMロック解除関連ページに端末の周波数帯対応表のリンクが用意されているので、そちらから確認できます。

 〇NTTドコモ
 〇KDDI
  ・au
  ・UQ mobile
 〇ソフトバンク
  ・ソフトバンク(「注意事項」にリンクあり)
  ・ワイモバイル(「注意事項」にリンクあり)

それらを見て今使っている端末が乗り換え先のキャリア、あるいはMVNOがネットワークを借りているキャリアの主要な周波数帯をカバーしているかどうかを確認した上で乗り換えないと、後悔することになりますので絶対に確認するようにしてください。

そしてもう1つ、端末に従来と異なるキャリアのSIMを挿入して利用する場合、通話や通信ができるようにするための設定を全て自分でやる必要があることにも注意が必要でしょう。キャリアショップも他キャリアが販売したスマートフォンのサポートはできないので、そうした使い方をする場合は従来以上にスマートフォンやモバイル通信に関する知識を身につける必要があることを、忘れないようにしてください。


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