防災

溺れた人を助け死亡…なぜ救助死は起こるのか

夏休みの時期になると、必ず悲しい水難事故のニュースは流れてきます。そしてもっとも悲劇的な事故が、助けに入った人も溺れて亡くなってしまうケース。そんな「救助死」と呼ばれる事故は、なぜ起きてしまうのでしょうか。

和田 隆昌

執筆者:和田 隆昌

防災ガイド

「救助死」はなぜ起きるのか?

「救助死」はなぜ起きるのか?

「救助死」はなぜ起きるのか?

家族で水辺のレジャーを楽しもうと考えている方も増える夏休み。しかし残念なことにこの時期になると、必ず悲しい水難事故のニュースが流れてきます。

そしてもっとも悲劇的な事故が、助けに入った人も溺れて亡くなってしまうケース。そんな「救助死」と呼ばれる事故はなぜ起きてしまうのでしょうか。
 
<目次>
 

海で溺れる人を「浮力体なし」で救助するのは極めて危険

泳ぎが達者な人でも「救助死」はなぜ起きるのか?

泳ぎが達者な人でも「救助死」はなぜ起きるのか?

どんなに泳ぎが達者であっても、海水浴場で溺れた人を一般人が生身の身体ひとつで救助するのは極めて危険な行為です。

溺れかけた人は、本能的に必死に抱きついてきて、たとえ子どもであっても救助者をまきこんで自由を奪います。そして岸に向かってまともに泳ぐことはかなわず、二人とも溺れてしまう危険が非常に高くなります。

救助法を完全にマスターしているライフガードですら、浮力体を持たずに救助に向かうことはありません。ライフガードのいない場所での海水浴は絶対にしないことです。

また、堤防における釣りなどにおいても、転落事故例が多くなっています。残念なことにライフジャケットを着ていない姿を多く見かけますが、小さなお子さんから大人まで着用は必須です。
 

ライフガードのいない川や湖における「着衣」の危険性

海水浴場での救助はライフガードに任せるのがベストな対応なのですが、問題なのは、そのライフガードのいない川や湖などで水遊びをしていて事故が発生した場合。

着衣のまま落水したり、流されてしまうケースはさらに深刻です。淡水は海水よりも浮力が低い上に、衣類にまとわりついて水を吸うと、重くなってしまい想像しているよりもはるかに泳力を削いでしまいます。

大人がお子さんを助けようとするような場合、衣類を脱がずに慌ててそのまま飛び込み、満足に泳ぐこともかなわず、二人とも亡くなってしまうというようなケースが続発しています。

家族ぐるみで水辺のレジャーを計画するようなときには、主催者は万が一の救助に備えて、投げ込むための「浮力体(フタをしたペットボトルでも可)」や「頑丈なロープ」、「吊り竿」をすぐに使えるようにしておくなどすれば、より救助の可能性が高くなります。

また保護者は、「大げさだろう」などとは絶対に考えずに、必ず子どもにもライフジャケットを着用させた上、監視のもとで遊ばせることを考えるべきでしょう。

空前のアウトドアブームである現在、河辺でキャンプやバーベキューを楽しむ人も多くなっています。河川では、海水浴場のようにライフガードなどの管理者がいないため、流れのある川では、溺れた人はあっという間に下流に流されてしまい、見失って救助することはより困難になります。そして助けにいこうとした救助者の事故となる「救助死」の頻度も非常に多くなってしまいます。

保護者が「ほんの少し目をそらした」すきに子どもたちは危険なことをしたがるものです。水辺のレジャーを楽しむ方は、お子さんたちの行動に常に監視の目を絶やしてはいけません。また、ライフジャケットやマリンシューズなどの安全装備を常に着けさせることに、そして浮力体の用意を含めて、もしもの時に自分たちがすぐに救助に向かえるような準備をしておきましょう。ましてや保護者たちはアルコールなどの飲酒はしてはなりません。

お子さんたちの命は、これらの最低限のルール守るという保護者の危機意識にかかっていることを忘れてはいけません。
 

無理な救助行為は救助死を招く

もしも子どもが溺れかけているということを認識した時、親ならば我を忘れて着衣のままでも飛び込んで救助に向かうことでしょう。岸からほんのわずかな距離のところならば事なきを得るかもしれません。そしてそんなシーンは毎年、全国で無数に発生していることでしょう。

しかし不幸なことにそのうちの何件かが、救助に向かった人が力尽きて溺れて亡くなってしまった「救助死」となって報道されています。

水辺でのレジャーの際、ライフジャケットを着るのはもちろんですが、救助する方もライフジャケットや浮力体なしに向かうのは非常に危険です。溺れた人を助けに行くというのは、自らの命も危うくする行為だということを知っておかなければなりません。

また、ライフガードのいない海で事故が発生した場合は「118番」、川の事故の場合は「119番」に通報して救助を要請するということも覚えておきましょう。救助隊は通報後、すぐに現場に到着するわけではありません。少しでも遭難者の生存の確立を高めるためには、事故発生時にためらわずに通報すること、正確にその場所を伝えることが重要です。

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