亀山早苗の恋愛コラム

私の手料理に“だけ”執着する不思議な彼と…結婚直前に「婚約解消」を決断した理由

結婚式直前に婚約を解消するのは勇気がいるもの。ただ、結婚直前に、それまでの些細な疑問の正体がわかったとなれば、思い切って解消するのもひとつの手だ。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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結婚直前に婚約解消、思い切ってよかった

婚約解消

結婚式直前に婚約を解消するのは勇気がいるもの。ただ、結婚直前に、それまでの些細な疑問の正体がわかったとなれば、思い切って解消するのもひとつの手だ。

 

知り合ってすぐ一緒に住み始めて

「私のもともとの理想は、お互いに自立していて支え合う関係でした。だけど彼に会って、彼の言いなりになることが心地よくなってしまった。それが恋というものなのかもしれませんが」

ミホさん(36歳)は苦笑しながらそう言った。彼女は半年の交際を経て30歳のとき、同い年の男性と結婚するはずだった。

「私、イタリアンレストランで修行をしたあと、とあるカフェで料理を作っていたんです。彼はそこの常連さんだった。少しずつ話をするようになり、ある日、デートに誘われてそこから一気に恋が燃え上がったんです」

1カ月もたたないうち一緒に住み始めた。彼は彼女の作る料理をおいしいと食べ、それ以外の家事はすべて担ってくれた。

「ミホの料理は世界一おいしい、というのが口癖で。私もそう言われるとうれしいので、カフェで遅番になるときは夕飯の仕込みをしてから仕事に出かけていました」

ところが3カ月ほど同棲しているうちに、彼はまったくスキンシップをとらなくなっていった。

「朝は行ってらっしゃいの軽いキスをするのが日課だったんですが、いつのまにかなくなった。ちょうど夏になってきて、彼はエアコンをすごく低い温度にするので一緒に寝られなくなり、私はリビングのソファで寝ることにしました。秋になって冷房がいらなくなり、一緒に寝ようとしたら彼が、『今度はオレがリビングで寝る』って。だからといって会話がなくなったとか、彼の帰宅が遅くなったとかいうわけではないんです」

相変わらず彼はミホさんの作る料理を好み、仕事でどんなに遅くなっても夕食は家でとった。

「週末は念入りに掃除をしてくれるし、洗濯物もたまっていればやってくれる。その頃、彼の両親がけじめとして結婚式くらいしなさいと言ってきていました。私は結婚式も婚姻届もどっちでもいいやと思っていたけど、彼は近くの神社で式を挙げ、親ときょうだいだけ集めようと話を進めていたんです」

同棲して3カ月、知り合って4カ月たったころのことだ。

 

結婚直前に「なにか違う」と

結婚式まで1週間となった日、彼女の働くカフェでは数日後の予約客の対応に追われていた。若いカップルの結婚式の二次会があるのだ。新婦がミホさんのファンで、二次会とはいえ、ちゃんとした料理をみんなで食べたいという要望があった。

「下準備に時間がかかるので、数日間は家でご飯を作れないと彼には話していました。彼は『そうなんだ』とちょっと不機嫌そうな顔をしていたので気にはなっていたんです」

その日、ミホさん自身、夕食をとる暇もないままに帰宅すると、すでに帰宅していた彼が「やっぱりミホの料理が食べたい。これから何か作って」と言い出した。

「私はもう何も食べなくてもいいから眠りたいというくらい疲れていました。悪いけど無理と言ったんです。彼はどこかで軽く食べて来たみたいですが、それでもまだ食べたい、と。そしてこう言いました。『料理作ることだけがミホの取り柄じゃん』と。冗談めかしていましたが、この言葉は疲れた私の体にグサグサ刺さりました」

自分には他に取り柄がないのかと思うと同時に、彼が結婚したがったのは自分の料理が食べたいだけだったのかもしれないと感じたという。

「セックスもしない、キスもしない。私とするのはテレビを見ながらの軽い会話だけ。あとはただただ料理をさせられている。これで結婚していいのかと思ったんです」

あなたは私の料理だけが目的なのかと聞くと、「料理がうまいってすごいことだよ」とはぐらかされた。

「私自身には興味がなくて、料理だけに興味があるわけねと言ったら、『だってミホが作る料理でしょ』と。そこで『ミホの全部が好きだよ』とでも言ってくれれば違ったんでしょうけど、なんだか的外れな答えばかり返してくる彼に幻滅してしまって……。多忙な数日間を乗り越えたあと、彼に『結婚はしない』と宣言しました」

担当した若いカップルの結婚二次会はうまくいき、料理もみんなに褒められた。だがそのときのカップルにミホさんが感じたのは、「ふたりできちんと話し合っている姿がまぶしい」ということだった。彼女の話を彼が真剣に聞いているのを見て、「私はこんなふうに彼に耳を傾けてもらったことがあるのか」と振り返った。

「2日ほど休みをとり、新しいアパートを契約して彼に結婚しないと宣言、翌日には友人に手伝ってもらって引っ越しました」

彼には責められたが、自分をそのまま受け止めてもらえない相手と結婚する気はないと冷静に答えた。彼の両親にも自分から電話してすべてを話したという。

「あれから6年、今年の春にひとりの男性と知り合いました。彼はバツイチですし、この先どうなるかわかりませんが、この人となら何でも話し合っていけるかもと思っています。ゆっくりでいいからいい関係を築きたいですね」

自分を必要としてくれる人と結婚するのはいいことだという考え方もあるだろう。だが、「必要とする」内容にもよるのではないだろうか。料理という技術を評価されても、「作る人間の心」をないがしろにされたら、人生をともに歩むのはむずかしい。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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