不倫関係を友人関係に変えたい……
コロナ禍においてもダブル不倫の関係は多々耳にする。もちろんそういった関係すべてがうまくいっているとは限らない。不倫関係がセックスを伴うからバレたときのリスクも大きいのなら、セックスしなくなった不倫関係は単なる「友だち」として継続できるのだろうか。
恋の情熱は衰える?
「恋だと信じて3年たちますが、最近、彼と私の関係って何なんだろうと思うことが多くなってきました」
そう言うのは、マコさん(40歳)だ。4歳年上の男性と結婚して12年、10歳と7歳の子がいる。夫はきまじめで厳格なタイプ。マコさんに対しても、結婚以来、スケジュールを把握しておかないと気が済まないようで、パート先がどういうところか細かい詮索をしてくるという。
「心配性なんですよね。結婚当初は愛されていると思ったこともあるけど、子育てしながらパートで働くのは本当に忙しい。さらに夫の“嫉妬や心配を消すための配慮”まで求められたらやっていけません」
そんな夫がいながら、いや、あるいはそんな夫がいるからこそなのか、マコさんは3年前に衝動的に元カレに連絡してしまった。そして元カレと再会、元カレが連れてきた友人であるトシオさんに心惹かれたのだ。
「一目見た瞬間、私はこの人と関係をもつだろうと思いました。トシオさんも同じように感じたそうです。ふたりとも家庭がある。それでも突然の情熱を止めることができなかったんです」
結婚生活や家庭が嫌になったわけではない。だが、新しい刺激がほしい、自分だけの時間がほしいと思うこともある。その発露がマコさんの場合、偶然訪れた「恋」だったのだ。
「忙しい合間を縫って彼に会う。自分が女であることを再確認できる時間です。彼とは音楽の趣味が一致、一緒にライブに行ったこともあります。夫は音楽に興味がないので、トシオさんといると楽しい。私が妻や母や社会人としてではなく、素の私でいられるのは、今のところトシオさんとの関係だけかもしれません」
不倫にはまる人たちの大半は男女問わず、「自分が自分でいられるのは恋人との関係においてだけだ」とよく口にする。それだけ日常生活においては「役割」に縛られているのかもしれない。
「恋人」という役割
ただ、考えてみれば不倫相手との関係においては、「恋人」という役割を担っているともいえる。トシオさんとの関係が3年たった今、マコさんは「恋人役割」に少し疲れを感じているようだ。「ここ半年くらい、前ほどの情熱がなくなっている自分を感じます。関係が安定してきたからだと思うんですが、彼とのセックスに刺激がなくなってきた。もちろん、体だけの関係ではないけれど、それだったら友だちとしてつきあっていってもいいのかもしれないと思うこともあって……」
“不倫”とレッテルを貼られない関係に戻ったほうが、リスクは少ない。彼とはライブに一緒に行く友だちだと誰に対しても胸を張って言える。
「セックスをともなう男女関係は、確かに最初は楽しいんだけど、だんだん飽きてくるんですよね。飽きるというと言葉が悪いけど。しかもトシオさんは、デートだけだと不機嫌になる。彼にとってはセックスすることが“恋”なんでしょう。でも私はもうそろそろ、そういう関係はなくてもいいかなと思ってる。会って話したりライブに行ったりするだけでも、じゅうぶん彼との関係性は築いていけるから」
3年たって彼との間に齟齬が起き始めているようだ。家庭という基盤でつながっている関係ではないだけに、恋は脆い。脆くて儚いから「恋」なのかもしれないが。
「彼との関係は続けたい、でもホテルに行くのはもうやめたい。つい先日、彼にそれとなくそんなことをほのめかしてみたのですが、ほとんど通じませんでした。彼にとっては、セックスそのものが恋で、セックスそのものがイコール私との関係だから」
最初から友だちでいればよかったとは思っていないとマコさんは言った。だが、相手との関係を軌道修正する時期が来ていると感じているのだろう。
だがお互い、大人である。せっかくの縁をスパッと断ち切るのはもったいない。だからこそマコさんは「友だち」というくくりでの関係性を模索しているのだという。
人間関係をカテゴライズする必要はないのかもしれない。たとえ恋であっても、性的関係を伴わない時期があってもいいだろうし、友情を育む感覚があってもいいだろう。時期によって柔軟につきあい方を変えていくのも、「大人の人間関係のありよう」なのではないだろうか。