浮気癖は治らない?
世の中には浮気をやめられない男性がいます。浮気癖は性格の一部と開き直るタイプが、その典型といえるでしょう。
今回ご紹介するのは、何度バレても懲りない夫に鉄槌を下したある妻の話。その凝った“仕掛け”に、私自身ノート3ページにわたって書き記すなど記憶に残るエピソードのひとつです。
止まらない、チャラ夫の浮気癖
結婚以来、夫の不倫に悩まされて続けてきたミチさん(31歳・仮名)。
「夫との出会いは、とある野外ライブでした。ナンパされて知り合い、好みのタイプだったこともあって週4デートを経て3カ月でスピード結婚。
もともと私は30歳までには結婚したいと思っていたし、父のことが苦手で、実家を早く出たい気持ちもあったので、『女好きでチャラいけど、まあいっか』と安易に決めてしまったんです。結婚イコール”家を卒業”という感覚の方が強かったから」
「チャラいけど……」というミチさんの不安は的中。
2歳年下だというイケメン夫の職業は美容師。ノリが良くて気が利いて、仕事柄女性にもやさしくて、挨拶やLINE対応がマメ。気づけば誰かとスマホでやりとりしているようなタイプ。人気ドラマやタレントのスクープもよく知ってて、トーク力抜群とくればモテないわけがありません。結婚後も彼のLINEには女性の名前がずらりと並んでいました。
「全員お客様だから、次回指名をもらえるように営業しているだけ」と夫は笑顔で釈明するのですが、ミチさんは「ホストの営業スタイルと一緒じゃない……」と言いたい気持ちをぐっと堪えていました。女性と腕を組んで歩く夫を目撃し、「美容院の客と腕は組まんよなあ」とキレて大暴れしたこともあったといいます。
「彼のお母さんに相談すると、『家族のために立ちっぱなしで頑張ってる息子がかわいそう。あなたも自分で稼ぎなさい』と言い返される始末。私だって小売りの立ち仕事で稼いでるのに。いつか絶対、この親子に制裁を加えてやるんだと思いました」
浮気の証拠をつかむため……
いよいよ離婚を決意したミチさんは、高校時代からの友人・理沙さん(仮名)の力を借りて夫の“次の浮気”の証拠をつかんで離婚慰謝料を請求しようと考えました。理沙さんはスタイル抜群のモテ女、夫がなびかないはずがありません。まずはミチさん夫婦+理沙さんでサッカー観戦を企画。サッカー好きな夫が一番ハイテンションになる場所で理沙さんを紹介すると、狙い通り、スタジアムの開放的な雰囲気に陽キャな理沙さんとチャラ夫は意気投合。ハイタッチし放題。ビール片手に話が弾み、別れ際にはミチさんの目の前でLINEを交換。
実際の理沙さんは長く付き合っていた彼と別れたばかりでしたが、「経営者の彼との結婚を控えたモテ女」として「独身最後のハメ外しで楽しい時間を過ごしたい」設定で夫への接近を試みました。理沙さんから夫の動きを聞くと、
「とにかくマメ! サッカー観戦の翌日からLINEの数が半端なくて、冗談に紛れて『君と会って、長い間忘れてた少年の頃の自分を見つけた』とかいうクサい決め台詞を投げ込む」。シナリオ通り、チャラ夫からのデートの誘いを受けた理沙さんは、チャラ夫との会話中にこっそりボイスレコーダーのスイッチを押しました。
「二人で食事なんて、ミチに悪いよね」という理沙さんに、
「別にいいよ。実は俺たち、もう破綻してるんだ。結婚に縛りつけられる人生なんてつまらない」とチャラ夫。
さらに理沙さんをマンションまで送ると、別れ際、当然の流れで理沙さんに抱きつきキスを迫って部屋に上がり込もうとして、「ちょっ! 何……、やめて」となったところで「ピンポーン」とドアフォンが鳴り、そこにミチさんの登場です。
「ミチ、ばっちり証拠取ったよ」
「ザマアミロ」
……こうして「夫の浮気の証拠」を手にしたミチさんは録音した浮気の一部始終を夫とその母親に送付して、度重なる夫の浮気による精神的苦痛に対する慰謝料をもらうことができたそうです。
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ミチさんのように、長期間にわたってやられっぱなしの妻が策を練って夫を懲らしめるケースはいくつかありますが、私が運営する夫婦仲相談所で聞いたものは全て離婚を伴うものでした。
つまり、徹底的に成敗するにはそれだけの覚悟が必要で、ドラマのようにはいかないのが現実です。また、ミチさん夫婦には子どもがおらず自分の収入もあり、計画に適した役回りを演じられる親友もいて結果的にうまくいったわけですが、場合によっては相手から「侮辱された」と訴えられる危険もあるのです。
私としては、信頼できる探偵と弁護士に依頼することを強く推奨します。プロの手を借りずに動くと大変なことに発展する可能性もあるのだと、気を引き締めてください。