亀山早苗の恋愛コラム

不倫夫が妻に放ったありえない一言。「本当にショックなら、もっと痩せてもいいんじゃない?」

夫に不倫をされたとき、その事実以上に「心がズタズタになる」のは妻の“尊厳”が傷つけられたから。「夫は夫で勝手にすればいい」と突き放せる妻は少ない。むしろ「自分が至らないから」「自分の魅力がないから」と卑屈になる妻が大多数なのだ。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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やり直そうと思ったけれど、その気を削いだ夫の一言

夫の不倫

夫に不倫をされたとき、その事実以上に「心がズタズタになる」のは妻の“尊厳”が傷つけられたから。「夫は夫で勝手にすればいい」と突き放せる妻は少ない。むしろ「自分が至らないから」「自分の魅力がないから」と卑屈になる妻が大多数なのだ。夫が不倫するかどうかは、妻の「女として、人としての魅力」や「尽くすタイプかどうか」とは関係ない。どういう妻であれ、不倫する夫はするのだ。

ふだんから夫婦のコミュニケーションがとれていて、「理想的」と思われても、裏で夫婦どちらかが婚外恋愛しているケースも多々ある。そういう配偶者と、その後も生活していけるかどうかを考えなければいけないのだ。

 

夫と別れたくないと思った

2年前に夫の不倫が発覚したとき、真っ先に思ったのは「夫とは別れたくないということだった」とミチコさん(42歳)は言う。当時、結婚して11年、10歳のひとり娘を夫は非常にかわいがっていた。

「娘のためなら自分の命をいつでも差し出す。夫はそう公言していました。それなのに不倫をするなんて私には信じられなかったけど、不倫は事実だった」

5歳年上の夫は、社内の20代の女性と不倫をしていたが、ミチコさんが探りを入れるとすぐに正直に認めて謝った。

「もちろんすぐに別れると言って。そのとき、ずいぶんあっさりしたものなんだなと思いました。そんな簡単にやめられるくらいならしなければいいのにと思いましたし、相手も“遊び”と割り切っているのだとしたら、虚しい関係だなと」

もちろん、深間にはまって抜けられなくなっているのは妻として困る。だが、あまりにあっさり「別れる」と言われると、この人は女性とどういう気持ちで接しているのだろうと疑問をもってしまうとミチコさんは言った。

「ミチコには申し訳ないことをしたと平謝りした夫を見て、今回だけは水に流そうと思いました。いろいろ感じた疑問も、ここは娘のためにも目をつぶろうと。私にも悪いところがあったかもしれないと思って、夫に『あなたはどういう奥さんが理想なの?』と尋ねたりもしました。あまりはっきりした答えは返ってこなかったけど、それまで以上に家の中を片付けて居心地よくしたり、手をかけて料理をしたりしたんです」

週に5日、パートで仕事をしていたが、3日に減らしてその分、家の中のことに時間を費やすようになった。

「夫は何ごともなかったかのように生活していましたが、私はなかなか夫の不倫から立ち直れなかった。それでも毎日、やるべきことを決めてきちんと暮らすよう心がけたんです。夫から誘われれば、ちゃんとベッドでも義理を果たした。本当は受けつけられないとも思ったんですが、これも夫婦関係をよりよくするためには避けられないと思ったから」

日々、ミチコさんは努力を重ねた。

 

些細なことから口げんかになって

1年ほどたち、ショックも少し癒えてきたころ、些細なことから夫と口げんかになった。

「夫の親戚にお祝い事があって、そのお祝いをどうするかという話からでした。夫が提示した金額が多すぎると思ったのでそう言ったら、夫が気分を害したみたいで。そこからどんどん悪口合戦になっていった。当然、私は夫の不倫のことを持ち出したわけです。私の中では解決していない、つらいできごとだったから。そうしたら夫は『おまえは一生、そうやって責めるんだろうな、切り札を手にしたと思うなよ』って。自分で私を傷つけておきながらひどいですよね」

ひどい言いようだ、こちらはショックを受けているのにとミチコさんは涙ながらに抗議した。すると夫から信じられない一言があった。

「本当にショックを受けていたら、もっと痩せてもいいんじゃないの?」

この一言がミチコさんの心をズタズタにした。体型をとやかく言うこと自体が問題だが、さらに言えば、彼女は決して太っているわけではない。20代からの体重をずっと保っているのだという。

「ただ、夫がつきあっていた若い女性はとてもスタイルのいい人だったんです。人物が特定できたとき写真を見たので覚えています。比べられていると思いました。それにショックを受けたら痩せるはず、という夫の思い込みもひどすぎると思った」

さらに夫は、「離婚したら路頭に迷うから必死なんだろ」とも言い放った。ミチコさんは夫が自分をそういう目で見ていたのかと、不倫のとき以上の衝撃を受けたという。

「私は家庭が大事だったし、夫も娘も心から愛していた。でも夫はそういう人ではなかったんだと、結婚して初めて痛感しました。夫にとって家庭は“大事な人間関係”ではない。単なる居場所であって、娘はかわいいけど、妻は娘に付随してくるだけ。家事をやるから置いてやってるだけ。そう思っているかどうかはわからないけど、私にはそう受け取れた。私との関係なんて、実はどうでもいいんじゃないかと……」

私はあなたにとってどういう存在なのかと問い詰めると、「妻でしょ」と夫は言った。その「妻をどう思っているのか」と聞いたら、「妻は妻。婚姻関係にある人」と言われた。決して「大事な人」という言葉は出てこなかったのだ。

そのときミチコさんは離婚を決めた。自分の人間としての尊厳を完全に損なわれてまで結婚生活を続ける意味が見いだせなかったのだ。

「確かに離婚したら路頭に迷います。だけどどうしても許せなかった。娘を連れて家を出ました」

従姉妹を頼って小さなアパートを借りたミチコさんは、現在、離婚調停中だ。夫は今も、何が原因で妻が出て行ったのかわからないと言っている。
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