Q:老後のお金がなく年金の繰上げ受給をしたいです
「夫58歳、私は59歳。会社勤めをしたことがなく、ずっと自由業だった夫婦です。今までいろいろなお金がかかり、収入も不安定で、コロナ禍もあり貯金はほとんどありません。年金を繰上げ受給できますか? 夫婦で同時にしたほうがいいのでしょうか? 収入は2人で月20万円ほどです」(東京都・フリーランス・59歳)A:繰上げ支給の減額率は一生変わりません。注意が必要です
相談者夫婦は、会社勤めをしたことがなく、ずっと自由業とのことですので、加入していたのは国民年金保険、つまり65歳から受け取れる老齢年金は、「老齢基礎年金」のみとなります。60歳から繰上げ支給の請求をすると、65歳から受け取った場合の年金額より24%減額された年金を受け取ることになります。その減額率は一生変わりません。60歳で受け取った場合ですが、老齢基礎年金の満額(20歳から60歳まで国民年金保険料を納めた人が受け取れる年金額のこと)が月約6万5000円だとすると、4万9400円程度の受け取りに減ってしまうということになります。請求の取り消しや変更をすることはできないので注意が必要です。
また、繰上げ支給の請求をすると、さまざまなことができなくなります。
例えば、国民年金に未納期間があり、老齢基礎年金を満額受け取れない場合、60歳以降に任意で国民年金に加入して、国民保険料を追納することで、満額に近づける制度があります。しかし、繰上げ支給の請求をすると、この制度を利用できなくなります。障害基礎年金を請求することもできません。また、老齢基礎年金を繰り上げて請求した後は、寡婦年金は支給されません。
相談者夫婦の老後の生活安定のために重要なことは、できるだけ年金の受け取りを繰り下げることで、多くの老齢年金を受け取ることです。
夫婦で自営業以外のバイトをしてみるなど、収入を増やすことはできないでしょうか? また節約できることはないのでしょうか? もし、どうしても老齢基礎年金の繰り上げ支給が必要であれば、夫婦どちらか一方の年金だけにすることも検討してみてください。老後の生活を安定させる柱である公的年金は、一生受け取ることができます。できるだけ長く、少しでも多くもらえるよう、日々の生活を見直すことをまずやってみましょう。
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監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)
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