人間関係

面倒だけど避けられない…PTA活動の同調圧力と上手なストレス対処法

【公認心理師が解説】多くの人が親の責任だと思いながらも、面倒で負担が多いと感じている「PTA活動」。明らかに不必要な活動が多いこと、そして保護者間の「同調圧力」が強いことがストレスにつながっていると思われます。PTA活動のストレスに上手に対処する方法とは? 「認知的評価モデル」をもとにした対処法をご紹介します。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

面倒だけど避けられない? PTA活動への言えない本音

考えごとをする女性二人

「この作業、本当に必要?」と思いながらPTA活動を続けるストレスの重さ

子どもを持つ親、特に小学生の子を持つ親にとって、素通りできないのが「PTA活動」。
 
保護者と教職員を対象に行われた宮城県内の調査によると、「PTA」に対するイメージは「親の責任」「面倒くさい・負担が大きい」がいずれも5割近くを占め、他の回答を大きく引き離しており、その一方で「楽しい・おもしろい」という回答は約1割という結果になりました(複数回答可)。

この調査からも、「PTAはやらないといけない活動だが、面倒で大変。楽しいものではない」、こんなPTA活動にかかわる親の本音が見えてくるように思います。(※2017年に宮城県PTA連合会が行ったアンケート調査。対象:宮城県内の保護者と教職員、有効回答:1,609)
 

PTA活動の意味は? 実体験で感じたストレスと意義

少し私自身の経験を申しますと、子どもが小学生時代、保護者は基本的に全員「PTA活動一人一役」でした。事情があっても、原則的には何らかのPTA活動に参加しなければならず、しかも「子どものために本当に必要なの?」と疑問になるような活動(保護者向けのお楽しみ講座の開催やPTA新聞の発行など)も多く、正直なところ後ろ向きな気持ちで参加していました。
 
もちろん、そんなPTA活動にも一定の意味はあると思います。PTA活動日に学校を訪問すれば、授業参観とはまた違った、学校の普段の様子がなんとなくわかります。先生方も保護者の目を意識することで、自然に気持ちに張りが出てくるものと思います。
 
PTA活動を通じて親が学校とのかかわりをもつことが、保護者が学校を身近に感じ、子どもたちの安心・安全を守ることにつながる。そうした意味も大きいでしょう。
 

面倒と感じても、PTA活動が続くのは「同調圧力」も原因?

とはいえ、やはりPTA活動は煩わしいと感じる人が少なくないものです。PTA活動が嫌ならPTAに加入しなければよい、という選択肢も最近はあるようですが、多くの人がそうせず、内心では不満を感じながらも活動に参加するのはなぜでしょう? そこには、保護者間で生じる「同調圧力」も影響しているように思われます。
 
「どう考えてもこれは不必要」と思うことがあっても、長年の慣習や影響力の強い人たちの意見に押されると、やりたくないこともやらざるを得ない。子どもが関わる集団の中で波風を立てるのは怖い。同調圧力に流されて活動するのは、とてもストレスが溜まります。
 
私たちは、そんなPTA活動のストレスに対して、どう対応していけばいいのでしょう? 心理学者ラザルスが唱えた「認知的評価モデル」でPTA活動のストレスへの対処法を考えてみましょう。
 

PTA活動のストレスを減らす! 「認知的評価モデル」を使った上手な対処法

「認知的評価モデル」では、ストレスを受けたとき、人は無自覚のうちに2段階で評価を行い、対処法を選択しているとされています。
 
1次評価では、ストレッサー(ストレスを与えるもの)の脅威がどの程度か、自分にとってストレスフルであるか否かを判断します。
 
2次評価では、1次評価で自分にとってストレスフルであると判断された場合、対処法を選択します。この対処法を「ストレス・コーピング」といいます。コーピングには、「問題焦点型」と「情動焦点型」の2種類があります。
 
■2種類のストレス・コーピング
1)問題焦点型
……仕組みを根本から変えようと試みたり、キーパーソンと直接話し合うなどして、問題を解決してストレスをなくす方法。
 
PTA活動における例
  • PTA活動の必要性についてアンケートをとり、評価の低い活動の見直しや撤廃を働きかける
  • キーパーソンと話し合い、同調圧力に従わざるを得ない雰囲気を変えていく
 
2)情動焦点型……ストレスが溜まらないように自分の気持ちをケアし、ストレスを軽減する方法。
 
PTA活動における例
  • 「今日だけのがまん」と考えて、気にしないようにする
  • 不満を抱える親同士で愚痴を言い合い、すっきりする
 

受け流しつつ、少しずつよい方向へ! PTA活動のストレス・コーピング

上述のように、私たちはストレスを受けたときに、無自覚のうちに1次評価(ストレスの脅威度を判定)と2次評価(コーピングの選定)を経て、対処法を実施しているわけです。
 
PTA活動の場合、煩わしくとも「子どもが卒業するまでの辛抱」と思い、情動焦点型コーピングをうまく取り入れながら、ストレスを受け流している人が多いと思います。子どもの数が少なければ、それで済んでしまうことが多いのはないでしょうか。
 
一方で問題焦点型コーピングは、根本的な解決には近づけるのですが、これに取り組むにはかなりのエネルギーを消耗します。その負担を抱えるより、今だけは慣習や同調圧力に従っておき、情動焦点型コーピングで自分の気持ちをケアしていく。少子化の時代には、結局はそんな方法がいちばん合理的なのかもしれません。

しかし、結局はそのためにPTA活動は同調圧力の嵐、時代錯誤な活動によるストレスがいつまでもなくならない。そんな悪循環にも陥ってしまうのですが……。
 
そんななかでも、近年ではPTA活動のアウトソーシング化(安全パトロールをシルバー人材センターに外注、運動会の準備を民間業者に委託など)を進める学校も出てきており、少しずつ問題焦点型コーピングを活用して、PTA活動の負担を減らす流れも出てきているようです。
 
長いようで短く、短いようで長いのがPTA活動。ぜひ、情動焦点型コーピングで受け流しつつも、できる範囲で問題焦点型コーピングで悪循環を変えていき、上手に対処していけるといいですね。
 
■参考文献
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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