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アルツハイマー病新薬、従来の薬との違いは? リスクや高額な薬価問題を解説

アルツハイマー病の新薬としてアメリカのFDA(食品医薬品局)に承認された「アデュカヌマブ」。「治せない病気」とされていたのが、「治療できる病気」になる世界初の薬だと注目されています。反面、喜ぶのはまだ早いと考える専門家も多いです。アルツハイマー病新薬について、従来の薬との違い、リスクや薬価をわかりやすく解説します。

西村 創

執筆者:西村 創

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アルツハイマー病の新薬、「アデュカヌマブ」が話題になっています。日本の大手製薬会社「エーザイ」がアメリカの製薬会社「バイオジェン」と開発したアルツハイマー薬が、アメリカFDA(食品医薬品局)で2021年6月7日に承認されたからです。この新薬は日本でも審査中です。これまで「治せない病気」とされていたのが、「治療できる病気」になる世界初の薬だと注目されています。

反面、喜ぶのはまだ早いと考える専門家も多いようです。アルツハイマー病新薬について、従来の薬との違い、リスクや高額な薬価問題などをわかりやすく解説します。
アルツハイマー新薬である「アデュカヌマブ」は「治せない病気」とされていたのが「治療できる病気」になる世界初の薬だと注目されています。

アルツハイマー病新薬である「アデュカヌマブ」は「治せない病気」とされていたのが「治療できる病気」になる世界初の薬だと注目されています。

 

アルツハイマー病とはどんな病気?

そもそもアルツハイマー病とはどんな病気なのでしょう。アルツハイマー病の症状と進行、原因について解説していきましょう。

■アルツハイマー病とは、老化とは異なる認知症の一種
アルツハイマー病とは、「認知症」といわれる症状や状態の一種である病気です。病気なので、老化とは異なります。

たとえば、歳をとると、体力や筋力が低下しますよね。同じように、もの覚えが悪くなったり、名前をなかなか思い出せなくなったりします。これがいわゆる老化というものです。老化によるもの忘れは、ヒントを得られれば思い出せます。症状の進行はさほど早くありません。自身の状態を自覚することもできます。生活にいきなり大きな支障をきたすこともありません。

一方、アルツハイマー病を含む認知症は「老化によるもの忘れ」とは異なります。認知症は、病気によって脳の神経細胞が壊れて起こる症状や状態のことです。症状は老化より早く進行します。自覚症状がなく、理解力や判断力が乏しくなっていきます。生活に支障が出てくる可能性が高いのです。これが老化と認知症の違いです。

■アルツハイマー病の症状と進行
認知症は病名ではなく、いくつもの症状や状態をまとめた言い方です。認知症のいくつかの症状、病気のなかで半数以上の割合を占めるのがアルツハイマー病です。アルツハイマー病は、もの忘れが多くなったことから気づくことが多いようです。忘れるだけでなく、症状が進んでいくと、時間や場所がわからなくなる、自分の物を盗られたという妄想、徘徊などを起こすこともあります。

■アルツハイマー病の原因
アルツハイマー病の原因は、脳の中にたまっていく異常なたんぱく質だと考えられています。このたんぱく質が脳の神経細胞を壊して、脳が縮んでいくというのが今のところ示されている見解です。脳に「海馬」という記憶を保管して整理する倉庫のような役割がある箇所があります。アルツハイマー病患者は、この海馬から縮んでいき、やがて脳全体が縮んでいきます。
 

アルツハイマー病新薬の効能

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アルツハイマー病新薬は脳内のたんぱく質に作用する

実はアルツハイマー病の薬は以前から存在しています。では、新薬である「アデュカヌマブ」は従来のアルツハイマー病の薬とはどう違うのでしょうか。従来の薬と新薬の違いについて解説します。

■これまでのアルツハイマー薬の効能
従来のアルツハイマー病の薬は、残っている脳の神経細胞を活性化させる働きがあります。ただし、一時的に理解力や判断力が戻るものの、病気の進行を緩やかにする効果はありません。脳の神経細胞自体が縮んでいくからです。

たとえば、家も長年住んでいると、ところどころ不具合が出てきます。でも、応急処置をしながら生活すれば、ある程度は快適に過ごすことはできますよね。従来の治療薬もそのような感じといったらよいかもしれません。

■アルツハイマー病新薬「アデュカヌマブ」の効能
2021年6月、アメリカで承認された新薬「アデュカヌマブ」も、これまでのアルツハイマー病の治療薬と同じように、病気の進行を止めることはできません。

では、なぜ新薬が世界的な話題となっているのでしょうか。それは、アルツハイマー病の原因と考えられている脳内のたんぱく質に作用する新しいタイプの薬だからです。家にたとえると、リフォームをしながら住み続けるイメージといえばよいでしょうか。新薬は、病気の進行を止めることはできないものの、悪化のスピードを緩やかにするとされている点で、従来の薬と一線を画すわけです。

■アルツハイマー病新薬「アデュカヌマブ」のリスクと課題
アルツハイマー病新薬は、医学の大きな一歩だといえることは間違いありません。でも、手放しで喜べるような夢の治療薬というには課題が多いようです。「十分な有効性があるといえる根拠がなく、副作用のリスクもある」と考える医師も少なくありません。

経済的課題もあります。新薬の開発には莫大な費用がかかります。認知症領域でアメリカで承認された薬は2003年以降、ひとつもありませんでした。この期間の開発費を回収するための費用、そして新たに開発を進めるための費用が新薬に乗っかってくるのです。

薬は長期的に投与し続ける必要があります。アメリカでの薬価は、1カ月に1回の投与で年間600万円ほどになると試算されているそうです。日本ではまだ承認審査中で薬価も決まっていないものの、医療保険の財政悪化が考えられます。
 

期待しながら今できることを

アルツハイマー病新薬のニュースは、日本国内にいるとされる約600万人とそのご家族、周囲の人々に希望をもたらせてくれました。ただ、この新薬は多くの人たちがイメージする「夢の治療薬」とはまだギャップがありそうです。

アルツハイマー病の原因特定がまだ確実ではないこと、約600万人が年間600万円の費用をかけると36兆円という日本の国家予算の3分の1にあたる巨額になるなど、リスクと課題が大きいからです。

アルツハイマー病の治療は、薬物療法以外に非薬物療法があります。アルツハイマー病の患者さんは最近のできごとは忘れても、昔のできごとはよく覚えているそうです。ご本人の昔の道具、写真などをきっかけにして、なつかしく楽しい思い出を引き出せると、気持ちの安定がはかれるようです。このような回想法や運動療法、音楽療法、趣味などのレクリエーションでも症状の緩和が報告されています。今できることをしながら、新薬に期待しましょう。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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