亀山早苗の恋愛コラム

家族なんて「鬱陶しいだけ」の存在だから。20代で迷いなく“ひとりで生きる”と決めた女性の現在

20代にして家族を求めず、「ひとりで生きる」ことを決意。家を購入して犬を飼った。最近では在宅勤務が増え、「リアルに人と会って話をすることが激減したけど、精神的には安定している」という女性がいる。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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早くからひとりで生きると決めていた

おひとりさま

20代にして家族を求めず、「ひとりで生きる」ことを決意。家を購入して犬を飼った。最近では在宅勤務が増え、「リアルに人と会って話をすることが激減したけど、精神的には安定している」という女性がいる。

 

家族はうっとうしいだけ

「私にとって、家族ってうっとうしいだけの存在なんですよね。家族がいてよかったなんて思ったこともないし」

苦笑しながらそう言ったのは、アキコさん(40歳)だ。両親と兄ふたり、末っ子の女の子ということもあって父親には溺愛されたが、一方で同居する父方の祖母が母にとげのある言葉を投げかけたり、そのことで両親がいがみあったりする光景も見てきた。

「長兄とは8歳、次兄とは6歳離れているので、私は兄たちとはあまり接点がありませんでした。ただ、ふたりはいつも反目しあっていたような気がします。きっと何かあって近所の人に話を聞いたら『仲のいい家族でしたよ』と言われるのかもしれませんが、家の中は常に誰かが誰かを憎んでいる。そんな雰囲気でした」

長兄は大学に行くために家を出たが、次兄は高校生のときに不登校になって中退、それ以来、あまり外に出ない生活を続けていた。

「私が高校生のときに祖母が亡くなり、それがきっかけだったのか父が不倫をしていることがバレ、母はうつ状態になっていました。ここにいても私自身のためにならない。そう思って私は東京の大学へと進学したんです」

学生生活は楽しかった。自由とはこういうことかと思ったそうだ。途中で両親が離婚することになり、仕送りは打ち切られたが、父は学費だけは払い続けてくれた。

「どういう条件で離婚したのか、ほとんどわかりません。ただ、ひきこもっていた次兄と母は一緒に暮らしているようです。大学4年生のころ、父から生前分与だといっていくばくかもらいました」

卒業後、就職すると彼女はそのお金を頭金に新築マンションを購入した。社会人になったとたん、「ずっとひとりで生きていく」と決めていたそうだ。

若くして家を購入する人はいるだろうが、「いつか結婚したら売ればいい」とか「人に貸してもいいし」とか、将来はわからないという前提がある。だが彼女の場合は、「買い換えは考えても、結婚したら……とはまったく思わなかった」という。

 

恋もしたけれど

とはいえ、彼女は一般的に見て「頑固でヘンな人」というわけではない。社内で仲のいい友人もいるし、学生時代の仲良しとは定期的に会っている。人づきあいが悪いわけではない。

「好きな人ができてつきあったこともありますが、結婚という発想が私の中にはないんですよね。20代後半になって、当時つきあっていた人が『そろそろ結婚を考えない?』と言ったとき、私、きょとんとしていたらしいです(笑)。婚姻届を出して一緒に住んで、子どもが生まれて家族を作る……みたいなことを彼が言い出したので、あ、ごめん、無理とあっさり言ってしまいました」

それでも彼女の価値観を変える男が出てきて……ということはドラマならありそうだが、アキコさんにはなかった。そもそも彼女の家族観が「家族はいらない」なので、変わりようもないのだろう。

「30歳になって少し仕事が落ち着いてきたので、犬を2匹飼いました。あのふたりが私の家族ですね。たまに人を好きになって、その人が犬好きなら少し関係は続きますが、結局は結婚云々という話になって別れるのがパターン。ここ5年くらいは、別に恋人もいらないやという感じです」

コロナ禍で在宅勤務が増えたことも、彼女はそれほど苦痛ではないという。友人と会って話ができないのは本当に寂しいが、画面越しでも人と話すことはできるし、知らない人とも知り合えるおもしろさもあると感じているそうだ。

「音声SNSなどでまったく知らない人と話して、コロナが終息したらみんなでオフ会しましょうなんて盛り上がっています。誰かとべったり深い関係になるより、このくらいの距離感のほうが私には合っているような気がしますね」

つい先日、長兄が亡くなったことを知った。仕事で行き詰まったあげくの急逝だった。それも親戚経由で、彼女が知ったのは亡くなってから1か月もたったころだ。

「家族は信用できない。今もそう思っています。母と次兄がどこにいるのか私は知らないし、知ってもしかたがないし……。父は再婚したもののまた離婚して、今はひとりだと親戚からメールで聞きました。私は父にはかわいがられた記憶はあるんですが、今さら一緒に暮らしたいとは思いません。家族に対して私は非常に冷たいと自分でも思います。きっと実は理解し合えている家族をうらやましいと思っているんですよね、内心。だけど一方で、理解なんてできるわけないのにと意地の悪い気持ちもある。だから結婚して幸せにやっていた友人が離婚すると、やっぱりなんて思っちゃう」

「家族は誰よりもわかりあえる関係」は幻想なのか現実なのか。その答えは人によって違うのだろう。家族を拒否しながら、アキコさんは「コロナは想定外でしたが、それ以外はけっこう充実した日々を送っていると自分では思っている」という。

自分でそう思えることこそが重要なのではないだろうか。他者との比較は意味がないのだから。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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