半数近くが長期化する中高年のひきこもり……仕事のストレスなども影響

膝を抱えてうずくまる男性

「8050問題」の背景にあるひきこもりの長期化。当事者が抱えている思いとは?

80代の親が50代の子の生活を支える問題を「8050問題」と呼び、近年話題になっています。多くの場合、子どもがひきこもった状態になっており、老親が年金と貯蓄で中年期の子どもの生活を支えているという実情があります。
 
背景にあるのは、ひきこもりの長期化です。20代、30代のころからひきこもり続けているうちに解決の糸口を見失い、年齢を重ねるごとに社会参加が難しくなっている。このようなケースが少なくないようです。平成30年度の内閣府の調査によると、40歳から64歳までのひきこもりの状態にある人のうち、7年以上のひきこもりを続けている人は5割近くを占めていることがわかりました。
 
また、ひきこもりのきっかけ(複数回答)としていちばん多いのが「退職」。「人間関係がうまくいかなかった」「病気」「職場になじめなかった」「就職活動がうまくいかなかった」という理由が続いています。
 

ひきこもり長期化の背景……社会とのかかわり方への苦手意識やストレスも

上のデータからも見えるように、ひきこもりの長期化の背景には、当事者が「働いて社会に参加し、自立した生活を送ることのむずかしさ」を抱えていることが少なくありません。
 
  • そもそも他人や社会とのかかわりに自信がなく、働く意欲を持てる仕事に出会えなかった
  • 就職後に仕事のストレスから健康を壊して退職し、長い療養生活の中で社会復帰の機会を失ってしまった
  • 退職などで一度社会のレールから外れた後、非正規やブラック化した仕事しか見つからなくなり、働く自信をさらに失ってしまった
  • ひきこもりが長期化するなかで、就職口を見つけることそのものが難しくなってしまった
私がカウンセリングで聞くなかでも、上のような事情でひきこもり状態からの出口を見失い、結果としてひきこもりが長期化していくケースが少なくありません。
 

親のサポートがひきこもり長期化の一因になることも

子どものひきこもりが長期化する原因として、「親」の側の要因も無関係ではありません。
 
年老いた親に子どもの生活をサポートできるだけの経済力があり、子どもが密室にこもれる環境を用意できる場合、子どもは長期にわたって親を頼りにすることができます。

そして、親の子どもへのかかわり方も、ひきこもりの長期化に影響してしまうことがあります。

とてもむずかしいのですが、親が子どもの様子を遠巻きに見るだけで何もせずにいたところ、子どもは実家の居心地の良さに甘え、「自立しなければ」という思いを失ってしまったというケース。逆に働かないことを厳しく叱咤しつづけたことで、子どもの心は頑なになり、ますます部屋から出てこなくなってしまったというケースもあります。
 

いちばんつらいのは本人? ひきこもる中で抱える焦りと苦悩

いずれにしても、ひきこもりを長期化させている子の多くは、現状のままではいけない、何とかしてこの状況を脱したいと願っています。

しかし、一度ひきこもると、世間の風当たりはとても強く感じられ、社会復帰へのハードルも非常に高く感じられてしまいます。そして、「今さら働くことは無理かもしれない……」と自信を失ってしまうのです。
 
やはりひきこもりが長期化する前に、親や周囲にいる大人が、子どもが社会とかかわる自信をもてるようなかかわりをしていくことが大切といえるでしょう。
 
では子どものひきこもりの長期化を防ぐために、親はどうかかわっていくべきなのでしょうか? かかわり方の基本を3つお伝えします。
 

子のひきこもりの長期化を防ぐ親のかかわり方3ポイント

1. 子どもの気持ちを否定しない。どんな考えも最後まで聞き、寄り添う
 ひきこもり始めた子どもには、「現状のままではいけない。でもどうしたらいい?」という不安や葛藤があります。その気持ちを理解し、労わりの気持ちで接することです。
 
「周りの子はみんな就職してるのに、なんでうちの子だけひきこもってるの?」「働くのは当然のこと。どうしてそれができないの?」といった冷たい目線を子どもに向けないことです。
 
「本人がいちばん現状に失望し、悩んでいる。どうにかしたいと思っている」と理解しましょう。親が自分の気持ちを理解してくれることが分かれば、子どもは心を開き、少しずつ気持ちを打ち明けようとしてくれるかもしれません。

口を開いてくれたときには子どもの気持ちに寄り添って、最後まで話を聞くようにしましょう。
 
2. 働くことの「楽しさ」、社会とかかわることの「メリット」を伝える
 ひきこもる子どもは、社会とかかわること、働くことに対してとても強い不安を感じています。「一歩外に出たら競争社会。弱いものは切り捨てられる」「職場は戦場。弱者は強者に都合よく利用されるだけ」、こういった情報ばかりが目につき、怯えているのです。
 
親が畳みかけるように同じことを言ってプレッシャーをかけ、「だから、弱音を吐かずにがんばれ」「歯を食いしばって働かなければ」などと発破をかけると、子どもは「自分には無理だ……」と白旗をあげてしまいます。
 
親はむしろ、働くことの「楽しさ」や社会とかかわることの「メリット」をさりげなく伝えていきましょう。「働くことはつらいことじゃない。むしろ愉快なこと」「働いてお金をもらって、好きなことにお金を使う。そんなサイクルは快適で楽しい」、そんな思いを親自身が持っていると、言葉の端々から自然に楽しさやメリットを伝えることができます。
 
3. 子どもが気づいていない、その子自身の「長所」を伝える
ひきこもる子どもは、自分自身に対してネガティブな印象をもっています。「自分は”陰キャ“だから、面白い話ひとつできない」「頭も悪いし見た目も悪い。なんの取り柄もない」、そんな風に自分を卑下し、自信を見失っているものです。
 
どの子にも、必ず「長所」はあります。本人が「陰キャ」と捉える性格も、裏を返せば「落ち着きがあり、まじめで誠実」といった長所になります。「なんの取り柄もない」と自分を卑下する性格には、「自分に厳しい目を向けられる」といった長所が潜んでいます。
 
このように、子どもが気づいていない「長所」をぜひ掘り起こして、伝えてあげましょう。続けていくと視点が変わり、社会に参加する自信を持ってくれるかもしれません。
 

親自身がかかわり方を変えると子どもの気持ちに変化が表れる

上でお伝えしたように、まずは親自身が、子どもが抱える苦しみを理解して、気持ちに寄り添うこと。働くことの楽しさや社会とかかわることのメリットを実感すること。子どもが気づかない長所を見出し、それを伝えていくこと。
 
こうしたことを、徐々に意識して行ってみてください。働くことに不安を募らせ、固く閉ざしていた子どもの心が和らぎ、気持ちが外へと向かっていくかもしれません。

■参考資料
令和元年版 子供・若者白書(全体版)(内閣府)
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