義母と夫の元妻が仲良しすぎて……
個人と個人の意志がすべてとはいえ、相手の家族と無関係ではいられないのが結婚というものだ。相手が再婚の場合、義父母には複雑な思いもあるだろう。
「略奪婚」ではないのだけれど
「夫は再婚、私は初婚です。つきあい始めたとき夫は結婚していたので、不倫からの略奪婚と思われがちなんですが、夫の家庭はすでに破綻していたんです」
チフミさん(37歳)はそう言う。つきあって1年あまりで夫は離婚したのだが、チフミさん自身は、つきあい始めたときからすでに家庭内別居で離婚の話も出ていると聞いていた。
だから罪悪感はほとんどなかったという。
「夫の最初の結婚は27歳のときだそうです。学生時代からつきあっていた同い年の彼女と就職して5年目で結婚。ひとり娘はもうけたものの、結婚後の仕事や家庭のことで意見の相違が多く、ほどなく修復不可能になったらしい。ただ、子どもが高校に入るまではなんとか家庭という形を保っていくと決めていたようで」
チフミさんが彼と知り合ったのは2年前。8歳年上の彼は当時、43歳。ちょうど娘が高校に入学したころだった。離婚する、結婚しようと言われたのは半年ほどつきあったときだったが、彼女はそれほど期待はしていなかった。
「でもその半年後に本当にプロポーズされました。離婚も成立したから、と。慰謝料とか養育費とかがどうなっているのかはよくわかりません。とにかく彼は『心配しなくていい』と言うばかりで」
自宅は元妻と娘が住むことになり、チフミさんたちは夫の親戚が所有するマンションで新生活を始めることに。そのマンションが、夫の実家から歩いて10分ほど、もとの自宅からも近い。気にはなったが、新生活を始めるほうが大事だと彼女は自分に言い聞かせていた。
「びっくりしたのは新婚旅行から帰ってきて最初の週末に、義母と元妻がうちに遊びに来たことです。義母だけならまだしも、元妻が来るなんて。しかもふたり、すごく仲がいいんですよ。それにも驚かされました」
追い返すわけにもいかず、家に入れるとふたりは夫に向かって「いい家じゃない」と話しかけている。夫は困惑しながらも受け入れている様子。
「お茶をいれて出すと、義母が『私たち、紅茶が好きなのよ。紅茶もケーキも持ってきたからみんなで食べましょ』と。義母と元妻はふたりでキッチンで楽しそうにしゃべりながら紅茶をいれている。夫を見ると、ごめんと小声で謝っていました」
たびたびやってきて生活ペースを乱されて
それ以来、ふたりは時々やってくるようになった。いつもは週末、夫がいるときに限っていたが、あるとき夫がいないときに連絡もせずに来たことがあった。「その日は私、風邪気味で休んでいたかったんです。それなのにふたりで上がり込んで、あれこれやっているので、『ご自宅で紅茶をいれたらどうですか。私、具合が悪いんです』と素っ気なく言ったんですよ。そうしたらふたりは帰っていきました」
ただ、夕方になって義母がまたやってきた。おかゆや野菜の煮物をもってきたという。しかたがないので家に入れたが、義母はなかなか帰ろうとしない。
「そのうち、前妻のユウコさんのことを褒め始めて。『ユウちゃんは本当に優しい人なの。息子もあなたと出会わなければ、ユウちゃんとうまくやっていたはずなのにね』とまで言う。そもそも夫婦関係は破綻していたみたいですよ、離婚は私のせいじゃありませんと思い切って言いました。すると義母は、『そう思ってるのはあなただけよ』って。ショックでした」
夫が帰宅してから、義母の話を伝えた。すると夫は「母さんがそう思いたがっているだけなんだよ。ユウコは母さんのお気に入りだったから。気にしなくていいよ」とさらりと言う。
「気にするなと言われても気になりますし、いちいちふたりで来られたら、私の気が休まるときがない。監視されているみたいで嫌だと言ったら、考えすぎだよと夫は取り合ってくれないんです」
共働きなので、ふたりが一緒にいられるのは週末だけ。だが夫は週末のどちらかは仕事がらみでゴルフなどに出かけることが多い。残りの1日は義母と元妻に悩まされることがほとんどで、チフミさんは結婚して1年で5キロも痩せてしまった。ふたりがチフミさんの自宅に来たり、夫だけを呼び出したりもする。
「夫を呼び出すときは娘さんと会うときだと思うので、それをどうこう言うつもりはないんです。問題はふたりがうちに来ること。どういうつもりなのか聞いてほしいと夫に言っても、具体的に義母に何か言ってくれるわけではなくて……。私はただただ、不愉快な時間を過ごすしかない。それがなければ体を休めることもできるし、1週間の料理の献立を考えたり保存食を作ったりもできる。そういうことがしたいのと夫に仔細に言ってみたんですが、それでも夫はわかったと言うだけで」
ただ、結婚して1年たち、最近、さすがに頻度は減ってきたので、これならなんとか我慢できるかもと思っていると、3週続けてやってきたりもする。来られても対応に困って、黙って座っているしかないのが苦痛だとチフミさんは言う。
「意図がわからないので不気味なんですよね。夫は、『きみとも仲良くしたいだけみたいだよ』と言っていますが、私はそんなに義母と前妻と仲良くしたいとは思わない」
どんよりと曇った表情でチフミさんはつぶやいた。