人間関係

コロナ禍で夫と険悪に…妻から夫へのモラハラ事例・対処法

【公認心理師が解説】夫婦が一緒に過ごす時間が増えたコロナ禍、妻から夫へのモラハラにも注意が必要です。「子や老親が優先で、元気な夫は後回し」「夫の家事へのダメ出し」「家に夫の居場所がない」など、当てはまることはありませんか? 妻から夫へのモラハラ事例、予防のポイントについてお伝えします。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

ウィズコロナでお互いイライラ……モラハラも生じやすくなる

背を向け合う男女

互いを嫌いになったわけではないけど、一緒に過ごす時間が増えるといざこざが生じやすくなる

夫婦が一つ屋根の下で過ごす時間が長くなると、何気ない言葉や態度で互いを傷つけたり、悪気はないのに、嫌な気持ちにさせたりする機会が増えてしまうことがあります。

その結果、夫婦間の「モラルハラスメント」(モラハラ)が生じてしまうことも……。ストレスの多いウィズコロナの環境では、なおのことそうなりがちです。
 
今回は、夫が妻から受けるモラハラの例と対処法についてお伝えします。妻が夫から受けるモラハラについては、「コロナ禍で夫婦間モラハラが深刻化?夫からのモラハラ事例と対処法」をあわせてご覧ください。
 

妻からのモラハラ例1:子どもや親を優先し、夫の扱いが雑になる

忙しい妻は子育て中には子どものこと、介護中には親のことが頭の中心に置かれ、元気な夫のことは後回しになりやすくなるものです。「元気なんだから、自分のことは自分でやってほしい」というのが、忙しい妻の本音でしょう。

たしかにそれも道理。でも、その意識に寄りすぎると、どうしても夫への扱いが雑になってしまいます。
 
たとえば、食卓は子どもや親に合わせたメニューばかりで、夫の好物はまったく考慮されない。子どもや親の分だけ茶碗によそい、夫だけいつもセルフサービス……。もちろん、妻の心には「私の好きなものだって作ってない」「私だってセルフサービスなんだから」という気持ちがあるのでしょう。
 
でも、食事は毎日の疲れを癒し、心身を元気にしてくれるもの。自分のことを一切考慮されなくなると、夫の心には「僕は何のために頑張ってるのかな?」という思いが湧いてきてしまうでしょう。
 

妻からのモラハラ例2:夫の家事にダメ出しを繰り返す

夫婦は2人で家庭を切り盛りするからこそ、夫も家事を分担するのは当然のことです。

でも、妻の心に「(夫も家事をするのは)あたりまえ」という思いが強くなると、感謝や労いの言葉がなくなってしまいます。すると、夫には「家事をやりたい」という自発的な動機がわかなくなってしまいます。
 
さらに、家事の至らなさに対してダメ出しが繰り返しされると、夫の気持ちは陰鬱に……。たとえば、ごみを出した後に「なんでごみ箱にレジ袋のセッティングをしてくれないの?」、掃除機をかけた後に「なんで掃除機の中のごみを捨てないの?」。
 
「惜しい!」「もっとこうしてくれたら」と感じる妻の気持ちもわかります。でも、ダメ出しが繰り返されると、夫のやる気は失せてしまいます。
 

妻からのモラハラ例3:専用の居場所を認めない

コロナ前は、酒場やジムなどの「サードプレイス」(家、職場以外で過ごす“第三の居場所”)で時間をつぶし、家の中での自分の居場を考えずにすんでいた、という夫は少なくないかもしれません。そんな夫がウィズコロナでサードプレイスに通えなくなると、家の中に落ち着ける場所を見出せなくなってしまいます。
 
たとえば、リビングは子どもや親が占拠し、夫の座るスペースがない……。ソファでくつろいでいると「子どもがテレビを見る時間なんだから、どいてよ」、リビングに趣味の物を並べると「なにこれ? 勝手に置かないでよ」と言われる。

このような状況に置かれると、夫は身の置き場がなく、家の中で過ごす時間がつらくなってしまいます。
 
「サードプレイス」については、「つまらない人生を変える「サードプレイス」の探し方」記事でも詳しく解説しています。
 

「あたりまえ」の押し付け? 相手の気持ちを想像することも大切

妻の多くは「もっと夫を思いやらなければ……」と思っていると思います。でも忙しすぎて余裕がなくなり、無自覚のうちに上記の3つの行動が生じて、結果的に夫にモラハラだと受け止められてしまう……。このような例が少なくないのです。
 
モラハラ化を防ぐには、まず自分の「あたりまえ」をパートナーに押し付けないようにすることです。妻がメインで夫はサブという家庭の場合、妻にとっての家事の「あたりまえ」は、夫の「あたりまえ」より格段に多いのです。たとえば多くの妻にとって、「ごみ捨て」は「ごみ袋のセッティング」までが「あたりまえ」。でも、サブの立場の夫には、そこまで気が回らないことがあるかもしれません。このように、立場の違いによって気づくことは異なるので、メインの立場にいる妻はサブの立場の夫に多くを求めすぎないことです。
 
まずは、自発的にごみを捨ててくれたことに「ありがとう」を伝える。その上で、「次からでいいんだけど、ごみ袋をセッティングしてくれると助かるな」などとやさしく伝えておきましょう。

それでも、サブの立場にいると言われたことを忘れてしまいます。でも、繰り返し繰り返し、やさしい口調で伝えられると、やがては意識化され、自発的にやってくれる日も来るでしょう。

そのときには、「ありがとう。すごく助かったわ!」と心から喜びましょう。すると、夫にはそのほめ言葉が報酬になり、行動が促進されます。これは心理学では「正の強化」と呼ぶものです。
 

「パーソナルスペース」を尊重し、夫専用のコーナーをつくる

男性は女性に比べて、パーソナルスペースを広めにとらないとストレスがたまりやすいことが、複数の心理学実験で証明されています。(『人と人との快適距離』渋谷昌三 NHKブックス)
 
したがって、たとえ家が狭くても、夫がくつろぐ専用のコーナーをつくってあげることが大事。子どもの心の発育に「子ども部屋」が必要なように、夫の心の安定には「夫専用のスペース」が必要なのです。
 
たとえば、リビングの一角をパーテーションで区切って、夫の書斎にする。リビングに夫専用の椅子を設ける。夫婦で話し合い、負担のない範囲で夫の居場所をつくっていくといいでしょう。
 

――「モラハラ的な言動なんてまったくしていません!」という夫婦なんて、ほぼ存在しないと思います(かくいう私も、うっかりやってしまうことがあります)。本人も気づかず、悪気なくやったことが結果的にモラハラになってしまう……。そんな例が多いものです。
 
心に余裕を失うと、無自覚のうちにパートナーへの労わりが薄れ、モラハラが生じやすくなります。モラハラ的言動のタネに気づくことで、余裕を失いがちな自分の心に気づくことができます。

人一倍頑張っているご自身のストレスに気づくためにも、最近の夫に対する言動を振り返ってみませんか?
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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