1. JR留萌本線「北一已」駅【北海道深川市】
北海道にはアイヌ語から転じて漢字をあてた難読駅が数多くある。長万部(おしゃまんべ)駅(JR函館本線&室蘭本線)や音威子府(おといねっぷ)駅(JR宗谷本線)は特急停車駅でもあるので、旅好きの人には良く知られている。しかし、函館本線の深川駅から分岐する留萌本線は普通列車しか走らないマイナーな路線であるし、廃止が検討されているほどの過疎路線であるので、線内の駅も多くの人には知られていない。 深川駅を発車し、広々とした田園地帯を4分ほどひた走ると最初に停車するのが北一已(きたいちやん)駅だ。まず降りる人がいない駅で、ホームも駅舎も寂れている。JR北海道の公式サイトによると駅利用者は1日平均1名以下とのこと。
北一已の「いちやん」とは鮭の産卵場を意味する「いちゃん」から転じたものとされる。
2. JR宗谷本線「雄信内」駅【北海道幌延町】
稚内行きの特急停車駅である幌延の2つ手前にある小さな駅。列車の行き違いができる駅なので木造駅舎が残ったといわれている。駅のある幌延町は全国で最多となる秘境駅6つを抱える自治体として秘境駅を観光資源にしている。しかし、2021年3月に2駅が廃止となり現在は4駅のみ。そのうちの1つが雄信内駅だ。かつては集落があったものの、幌延町の公式サイトによると「ゴーストタウン」化している。1.で取り上げた北一已駅同様、1日の利用者は平均1名以下だ。 「おのっぷない」とはアイヌ語の「オヌプウンナイ」(川尻に原野のある川)が転化したものとされる。駅の近くを流れる天塩川の眺めがおススメとのことだ。3. JR仙山線「愛子駅」【宮城県仙台市青葉区】
仙台と山形を結ぶJR仙山線の駅。仙台駅から30分足らずで到着できるとともに、この駅で折り返す列車が多数ある。仙台~愛子間は快速を含めて1時間に3本走っているので仙台近郊区間として機能している。愛子といえば女性の名前、とくに天皇陛下の令嬢が愛子さまなので、それにあやかって入場券が多数売れたこともあったという。 ただし、駅名は「あいこ」ではなく「あやし」と読む。愛子という地名は、下愛子にある子愛(こあやし)観音(子安観音)に由来するとの説が有力である。読み方が不思議で、あやしい響きのある地名であり駅名だ。
4. 東葉高速鉄道「飯山満」駅【千葉県船橋市】
東京メトロ東西線の東の終点西船橋駅から延びる東葉高速鉄道線にある駅。電車はほとんどすべて東西線からの直通運転だ。駅名は、どこかに住んでいそうな「いいやま・みつる」さんという人名に由来するものではなく「はさま」と読む。 谷あいの場所、谷と谷のはざま(はさまれた場所)に由来するのではないかとの説がある。地元では「はざま」と言う人もいるので、有力な説であろう。農村から住宅地へと変わりつつあり、開業は1996年と比較的新しいので、まだまだ開発が進みそうだ。5. 関東鉄道常総線「騰波ノ江」駅【茨城県下妻市】
JR常磐線の取手駅とJR水戸線の下館駅を結ぶ関東鉄道常総線の駅。首都圏では珍しい非電化路線であり、列車はすべてディーゼルカーだ。古い木造駅舎が有名で、映画やドラマのロケ地として利用されてきた。残念ながら老朽化のため2008年に取り壊され、今の駅舎は再建された2代目。木造駅舎の伝統を受け継いでいる。 騰波ノ江(とばのえ)の駅舎を利用したイベントもしばしば開かれ、町おこしに一役買っている。駅名の由来は万葉集の「鳥羽の淡海(おうみ)」と記された付近の旧村名が駅名として残ったものだ。「栄華盛衰を物語る駅」として関東の駅百選にも選ばれている。6. 富山地方鉄道立山線・上滝線「岩峅寺駅」【富山県中新川郡立山町】
立山黒部アルペンルートの富山側アクセス鉄道にあたる立山線の駅。電鉄富山駅からこの駅で折り返す電車もあり行先表示にも出る駅名だが「峅」の字が珍しく読めない人が多い。「いわくらじ」と読み、不二越・上滝線とのジャンクションでもあるので、風情のある駅舎が建っている。 今では観光で有名な立山であるが、古くは霊山であり信仰の山だった。岩峅寺の「峅」は「神様の降り立つ場所」という意味で、信仰に関係した地名である。7. JR高山本線「坂祝」駅【岐阜県加茂郡坂祝町】
特急「ワイドビューひだ」の停車駅美濃太田の手前の駅。駅裏にあったセメント工場への貨物列車が多く発着し賑わっていたが、2007年に貨物列車の運行は取りやめとなり、静かな駅になった。 千年以上の歴史があるとされる坂祝(さかほぎ)神社に由来する地名だが、普通列車しか停車しないマイナーな駅なので、読み方を知る人は多くない。JR岐阜駅から普通列車に乗れば30分ほどで到着する。8. JR桜井線の3つの駅「京終」駅、「帯解」駅、「櫟本」駅【奈良県奈良市、天理市】
奈良県内を走るJR桜井線は「万葉まほろば線」の愛称のように歴史ある地を結ぶ路線だ。したがって沿線には由緒ある地名が点在する。とくに奈良駅の隣の京終(きょうばて)駅からは帯解(おびとけ)駅、櫟本(いちのもと)駅と難読駅が連続し、さすが「いにしえの地」を結ぶ路線にふさわしい。京終とは平城京の南端、ここで都が終わる(果てる)の意味だ。最近、古い木造駅舎をリニューアルして観光客にアピールしている。 帯解駅は、すぐ近くに安産祈願で知られた帯解寺があることにより命名された。この寺は雅子妃をはじめ皇族が安産祈願で訪れている。 さらに、櫟本駅は、天狗の住む巨大な櫟(イチイ)の木の根元があったという言い伝えに由来する。連続する3つの駅が、いずれも難読駅とは珍しい。
9. JR徳島線「府中」駅【徳島県徳島市】
府中駅と聞くと、首都圏の人であれば京王線府中駅を、広島の人であればJR福塩線の府中駅を、また大阪の人であればJR阪和線の和泉府中駅を思い浮かべるであろう。いずれも「ふちゅう」と読み、「難読駅ではないのでは?」と答えるであろう。 しかし、徳島にある府中駅は「こう」と読む。「こう」だと言われてもポカンとしてしまう人が大半であろう。したがってJR徳島線の府中駅は難読駅と言わざるを得ない。府中とは、奈良・平安時代に国府が置かれた地のことで各地に存在する。徳島の府中は阿波国府があった場所で、「ふちゅう」は「不忠」につながると考えた徳島藩は、国府を「こう」とも呼ぶので、それにかけて「こう」と呼ばせた。「こう」は「孝」にも通じるので良い読み方と考えたのであろう。
10. JR大村線「彼杵」駅【長崎県東彼杵郡】
長崎県内の2大都市である長崎市と佐世保市を結ぶJR大村線にある駅。快速「シーサイドライナー」の停車駅でもある。彼杵とは、空から大量の杵が降ってきたという不思議な伝説に由来するなど諸説あり詳しいことはわかっていない。「その杵(きね)」がいつしか変化して「そのき」転じて「そのぎ」になったのではといわれている。 長崎以外では読める人が少ない難読地名、駅名であろう。難読駅は、まだまだある。これを機に各地の駅名を調べてみてはいかがだろうか。身近な路線にも読み方が特殊な駅名は意外にあり、新たな発見があると思う。
【おすすめ記事】
・知ってた? 実は東京や首都圏にもある「無人駅」
・駅なのに降りられない、人より動物が多い!? 全国で見つけた「変な駅」10選
・バリアフリー設備が充実している駅を厳選! 知る人ぞ知る究極のバリアフリー駅はどこ?
・首都圏でノスタルジックな旅が楽しめる! 実はすごいローカル鉄道旅3選
・「観光列車」満足度ランキング! 一生に一度は乗りたいおすすめTOP10【2021年】
・「秘境駅」めぐり入門編!簡単に行ける秘境駅10選
・首都圏から日帰りで行ける、おすすめ鉄道旅5選
・子連れのお出かけにも!関東の鉄道ミュージアム10選