よかれと思ってかけた言葉が、家族を追い詰めることも……
「五月病」のときには、家族の「やさしい配慮」が必要です
無理をせず、目の前のやるべきことにだけ取り組んでいけば、自然に軽快することが多いもの。でも、家族が疲れた様子で憂うつそうな顔をしていると、心配になってしまうものです。そして、よかれと思って励ましの言葉をかけたり、相手のためを思って「あれをしたら?」「これをしたら?」と色んなことを勧めてみたり……。そうしたことが家族を追い詰め、状態を悪化させてしまうこともあります。
押さえておくべき基本! 「五月病」の5つの対策ポイント
「五月病」は正式な病名ではありませんが、無気力や意欲の低下、だるさや疲れやすさといった症状を覚える心身の不調を指します。基本的な対処法として心がけたいのは次の5つです。- 「五月病」は自然によくなる、とおおらかに考える
- 今は、目の前の「やるべきこと」ができれば十分と考える
- 睡眠と食事のリズムをできるかぎり崩さない
- 弱音を吐きたくなるのは自然なこと。誰かに聞いてもらう
- 目標は必ず見えてくる。あせらない、嘆かない
このように、無理せずあせらず、エネルギーをかけすぎずに日常生活を送っていくこと。すると、多くは自然に軽快していきます。さらに詳しいポイントや「五月病」によくある悩み、症状については、「「五月病」をこじらせないために…注意すべき5つのポイント」でも解説していますので、あわせてご覧ください。
とはいえ、本人が自然の流れに任せて回復していこうと思っていても、家族などの身近な人たちが無理に元気づけたり、プレッシャーを与えたりすることで、本人の不安が高まって五月病が長引いてしまうことがあります。
心身の状態が不調なときに無理をして頑張ろうとすると、どれも空回りに終わり、伸びきったゴムのように疲弊してしまうかもしれません。これが自信を喪失するもとになるかもしれませんので、注意したいものです。
五月病の家族を追い込むNGワードは? 何気ない「失言」の具体例
私はカウンセリングにおいても、本人が「五月病」に悩んでいた時期に周囲から下のような言動をかけられて、あせったり、傷ついたり、不安が強くなってしまったことがある、という声を少なからず聞いてきました。- 「しっかりしてよ!」「はつらつとしなさい!」と発破をかけられた
- 「先月はあんなにやる気があったのに」と元気なころの自分と比べられた
- 弱音を吐くと「自分で選んだ学校(会社)なんだから、頑張りなさいよ」と言われた
- 「あれをやるといい、これをやるといい」とチャレンジすることを勧められた
- 「周りに置いていかれるよ?」「一家の大黒柱なんだから」などとプレッシャーをかけられた
「早く良くなってもらいたい」という一心で、そう言っているのだと思います。「五月病」の実態をよく知らないために、上のような言葉がふと口をついてしまうのでしょう。
「五月病」の不安をやわらげる言葉・家族の「やさしい配慮」とは?
上記とは反対に、「五月病」に悩んでいた時期にこう言われてうれしかった、こうしてもらえて助かったという言動もあります。- あれこれ詮索せず、いつもどおりのリズムで生活を続けてくれた
- 話をじっくり聞き、「そういう気持ちになることもあるよね」と共感してくれた
- 「4月に頑張ったから、疲れが出てるんだね」と今の状態を認めてくれた
- 家事を率先してやってくれて、ゆっくり休める時間をつくってくれた
- テレビや音楽、子どもの声などで、うるさくならないように配慮してくれた
- 無理に団らんや外食、レジャーに誘わず、一人にさせてくれた
- 「つらい時期は必ず抜けるから、大丈夫」と安心させてくれた
いつもどおりに生活し、どんな状態でも否定せずに受け止めてくれること。心身を休める時間と環境をつくってくれること。そして、必ず良くなると希望をもたせてくれること。
このようなやさしさが、「五月病」に悩む人の安心につながり、回復を後押ししてくれます。
「五月病」が長引きそうなときには、早めに次の手段を考えよう
しかし、「五月病」が5月で終わらず、翌月まで長引いてしまいそうな場合、早めに次の手段を検討するとよいでしょう。学校や会社に行きたくない気持ちが続くなら、学業や仕事がつらすぎて耐え切れなくなっているのかもしれません。じっくり話を聞きながら、解決策を考えてみるといいでしょう。
学校であれば、担任の教師やカウンセラーに相談をするように伝えるか、家族が代わりに相談をする。会社であれば、上司や先輩、人事担当者などに相談することを勧める。外部の相談機関を探しておくのもよい方法です。
眠れない、食事が進まない、憂うつや不安やあせりが一日中続く、といった場合には、心の専門医の受診の検討も必要になるでしょう。近くの医療機関を調べ、初診に付き添うことをお勧めします。
「五月病」は多くが自然に軽快しますが、本格的な心の病に移行することもあります。見守りながらも、必要に応じて次の対処を考えていきましょう。