「もう1人欲しい」が8割、「日本は育てにくい」が7割……どうすべき?

産みやすい、育てやすい社会に必要なこととは

産みやすい、育てやすい社会に必要なこととは

人口動態統計によると、出生数は調査開始以来最少となったとのこと。コロナによる産み控えも影響しているとは思いますが、子育てに関する問題が山積みゆえ、子どもが欲しくても持てないご家庭が多いと考えられます。
 
今回は、日本の子育てに関する意識調査をもとに、日本の育てにくさの根源について見ていきたいと思います。
 

「たまひよ妊娠・出産白書2021」から見えること

ベネッセコーポレーションの妊娠・出産・育児事業を展開する「たまひよ」が、2020年の秋に全国の乳幼児をもつ母親約2,000人を対象に「生活・意識調査」を実施しました。その調査結果から見えてくるママたちの出産・育児・仕事に関するデータからは、子どもは欲しいけれど、産み育てることが大変という実態がうかがえます。
 
「あと何人、子どもがほしいとお考えですか?」の問いに対し、76.1%の人が、「あと1人以上」と回答しているにもかかわらず、「日本の社会は、子どもを産み育てやすい社会だと思いますか?」の問いには否定的な意見が7割近く。「あまりそう思わない」「まったくそう思わない」と回答した人が68.0%で、これは年齢、世帯年収等に関係なく同様の傾向だったそうです。
 
子どもは欲しいが、育てにくい現状をすでに知っているゆえの躊躇(ちゅうちょ)、これが出生数の低下の一因になっているのは間違いないでしょう。
 

母親に冷たい日本

この調査で、子どもはもう今のままでいい、これ以上はほしくないと回答した人は、その理由として、経済的不安を第一に挙げています。一方で、経済的な理由のほかに、2位:職場の育児への理解、支援不足、3位:社会(周囲)の育児への理解不足も挙げられており、私はこれも同様に深刻だと感じています。

私が育児相談やお母さま向けの心理カウンセリングをしていて感じるのは、「日本はとくに社会が母親に対して冷たい」ということです。

この調査の回答でも、
  • 子どもが泣いていると嫌な顔して見られることがある
  • 小さな子どもを連れていると見知らぬ人に育て方について小言を言われる
  • (子育ては)子どもと寝てるだけと思われている
という声がありましたが、私がいつも育児相談で実感している「世間の冷たい目」はまさにこういうところです。世の中からのアウェーな感じが、ママたちを苦しめているのです。
 

いまだに強い3歳児神話の影響力

そもそもなぜこれほどまでに、「子育ては母親がすべきもの」という刷り込みが日本は強いのか。それはかつての「3歳児神話」の影響が大きいように思います。3歳児神話とは、「子どもが3歳になるまでは、母親が子育てに専念した方がよい」という考え方のことです。実際には、1998年に厚生白書が「合理的な根拠は認められない」としているのですが、今だに根強く残っています。
 
そもそも3歳児神話は、イギリスの精神科医・ボルビー博士が唱えた「アタッチメント理論」が、湾曲しながら発展したものともいわれています。この理論でボルビー博士が主張しているのは、「子どもが社会的にも精神的にも正常に発達するためには、少なくとも1人の養育者との親密な絆を維持しなければならない」ということであって、母親だけがそれを担うべきだとは言っていません。
 
もちろん、3歳までというのは、子どもの発達において、非常に大事な期間です。もともと、大学院で非行や問題行動の心理について学んでいた私が、今、0歳からの育児支援をしているのも、「小さい時期ほど大事」ということを痛感したからです。

非行が起こってから、問題行動に至ってから、“何らかの対処”をするよりも、そうならないように0歳から心がける方が、ずっと簡単で効果的であることに途中で気づき、今の活動へとシフトしたのです。ですので、3歳児神話を否定しているわけではなく、ボルビー博士の言う“1人の養育者”を、“母親”と限定し解釈を狭めてしまっていることが問題だと感じています。
 
子どもたちは愛情に対し、とってもとっても欲ばりです。ママだけでなく、パパ、おじいちゃんやおばあちゃん、ご近所の人、保育園や幼稚園の先生など、さまざまなところから愛情を受け取ることができるのです。

ですので、母親限定の3歳児神話ではなく、もっと広い意味での3歳児神話が今の日本には必要だといえます。
 

"父親"のあり方がカギになる

この調査では、「職場の理解不足」に関して、多く意見が挙げられていましたが、もとを正せば、「父親」のあり方が今の日本の育児環境を改善するカギになると考えています。なぜなら、職場で働いている上司や同僚も父親である確率は高いわけで、自分が親として上手に関われていないのであれば、会社の一員としても女性に理解を示すのは難しくなります。子育ての大変さを身をもって知っていることで防げるハラスメントは多いと思うのです。

今回のこの調査の回答でも
  • 旦那が子どもを積極的に見てくれず、旦那はよく休日に趣味に遊びに出かけるのに、私は育児からの休みはなく、自分の時間もなく日々育児と家事におわれている
という回答がありましたが、これは、まさに私が育児相談でよく聞くシチュエーションです。共働きの場合でもそうでなくても、パパは夜に飲みに行ったり、週末は趣味仲間と集まったりしているのに、自分にはそういう時間がないという訴えです。

今回の調査では、ほとんどのパパが、ママが働くことを望む回答をしており、「配偶者は、あなたの出産後の仕事のしかたについて、どのように望んでいますか?(いましたか?)」の問いに対しても、「産後は仕事はせず、育児や家事に専念する」と専業ママを望むパパはわずか13.4%。

9割近いパパが、ママが何らかの形で働くことを望む回答をしているのであれば、同じく9割近いパパが育児や家事を担っていていいはず。でも現実はそうではないように思います。夫婦の同意のもとで共働きをしているのに、なぜ育児と家事のバランスは従来の日本のままなのか……。

もちろん、上手に分担し協力的に行っているご夫婦もたくさんいらっしゃるので、これが日本の実体としてしまうのは語弊があると思います。ただ、全体を見ると、やはりアンバランスになっていることの方が多いように感じています。

私は海外生活が長く、これまでいくつもの国々の子育てを見てきました。どこの国も、ママとパパ、どちらが育児を担っているかといったら、ママが多いです。公園などで子どもが泣くと、だいたいママのところに駆け寄るのでおおよその関わり方が感じ取れます。しかし、パパの関わりが弱いのかというと、まったくそうではありません。

子どもと遊ぶのはもちろんのこと、お世話、そして料理、洗濯、掃除、色々なことを担っています。「頼んだのに忘れちゃうことはあるけどね」と愚痴をこぼすママもいますが、関わろうとする中でたまに抜けていることがあるというだけで、やっているかいないかといったら、確実に家庭のことを担っています。

ただ、今は「産みやすい、育てやすい」といわれるフランスであっても、昔は、男は仕事、女は育児という社会だったのだそう。それが時代とともに変わってきて、今のように、夫婦で働き、夫婦で育児や家事をすることが当たり前になったのだそうです。

もし今の日本の状態がその移り変わりの時期に当たるのなら、先は明るく見えますが、それにしても声はしっかり上げていくべきと考えます。物理的にも精神的にも背負いきれないほど抱え込んでいる母親への理解がなければ、産み育てやすいという回答は導けないと強く思うからです。

 

参照資料

「たまひよ妊娠・出産白書2021 PART2「出産・育児・仕事をめぐる母親の意識」
  

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。