軽い気持ちでデートをしたら、お金をもらってしまった
前編でネットで知り合った男性とデートしたあと、バッグに3万円入りの封筒を見つけて自分のしたことへの心の整理がつかなくなってしまった女性について記した。対照的に、一度そういうことがあって、のめり込んでいった女性もいる。
これって、まさか……? 最初は嫌悪感が生じて
前編のエツコさん同様、SNSで知り合った男性と会ったのはカナコさん(40歳)。高校の同級生と25歳のときに結婚、15歳と12歳の子がいる。夫は父が経営する会社で仕事をしているが、経営は決して楽ではないという。
「夫とはもう四半世紀つきあっているんですよね。義父母ともつきあいが長いから、自分の生まれ育った家族と同じ感覚。そういう意味では家庭内に問題はないんですが、下の子が生まれてからは、夫とは男女ではなくなっています。気が楽でいいと思っていたけど、だんだん寂しいなと思うようになりました」
1年半ほど前、SNSで知り合ったのは、10歳年下の独身男性だった。年上女性が好きだという彼に、「20代のあなたが会ったら、私はただのオバサンにしか見えないよ」とメッセージをしてみた。
「じゃあ、僕がそう思うかどうか会ってみましょうと言われて、こちらも引くに引けなくなり、会いましょうと」
会ってみたら、いきなり口説かれた。20代の男性が10歳年上の自分をどう扱うのか、なぜか激しく興味をそそられ、彼女は誘われるままにホテルへ行ってしまう。
「あら、浮気ってこんなに簡単なんだと自分でも意外でした」
彼はカナコさんを大事に扱ってくれた。そして、彼女は「久々に体が軽くなった」という。
「マッサージなんかよりずっと私には効果がありました。身も心もほぐれた感じだったんです。きれいだと言われ、ことが終わったあと、彼は冷たい水やコーヒーをベッドまで持ってきてくれ、素敵な時間をありがとうと言ってくれた。なんだか久しぶりに気分がほっこりしました」
ホテルを出ると、彼は「タクシー代」と言って彼女の上着のポケットに何かをねじり込み、走り去っていった。彼女は彼とは反対の方向へと歩きながら、ポケットを探り、1万円札を2枚見つけた。
「その瞬間、急に気持ちが悪くなって、吐きそうになりました。“主婦売春”という言葉が頭に浮かんで、へなへなと崩れそうだった」
それなのに、いや、それだからこそか、彼女は帰りにデパートに寄って、いつもは買わない高価な肉を買った。
「大特売だったからねと家族に言ったとき、自分もそうだ、大特売で買ったんだ、家計費から買っただけだと事実をすり替えてしまいました。そう思い込んだんです。そうしたら、気持ち悪さや自己嫌悪が抜けていってしまった」
「家族のために」という言い訳
そのときの彼とは二度と会わなかったが、1カ月後、カナコさんはまた別の男性とSNSで知り合い、ホテルへ行った。
「事前に約束したわけではなかったけど、その人は3万円くれました。『あなたに何かプレゼントしたいけど、何がいいかわからないからこれで買って』と言われて、それはなんだかうれしかったですね」
カナコさんも自営業を手伝っているので、そう頻繁に家をあけるわけにはいかないが、実家に行くとか趣味の教室に行くとか言い訳をつけて、週に1回くらいは抜け出すことができる。夫は夜になると飲みに行ってしまうことが多いので、昼間、カナコさんが趣味のために出かけても、文句は言わないのだ。
「そのうち、月に8万円くらいあるとけっこう貯金ができるなと思うようになって。もちろん、子どものためです。同時に家業ももうちょっと進化させないといけないと思い、夫にもいろいろ進言するようになりました。夫は意外そうでしたが、SNSで出会ってホテルへ行った人たちから、けっこういろいろアイデアをもらったりして。夫も私の意見を取り入れてくれて、少し仕事の幅が広がりそうになってきたみたい。人と出会うと何かいいことがありますよね」
セックスそのものをしたいわけではなく、人と出会うことで家族のためになっているとカナコさんは強調する。そこに無理があることは、彼女自身がわかっているのだろう。
「もっと気持ちよくしてあげると首を絞められたりして、怖い目にあったこともあります。それからはアブナイ趣味の人とは会わない、陰からこっそり見て怪しい感じだったら逃げることにしています」
コロナ禍でも“仕事”を休まなかったカナコさん、1年で100万円以上をためた。同じ人とは2度までしか会わないと決めている。情が移るのが怖いのと、同じ人と連絡を取り合っていると家族にバレやすいのではないかと危惧しているからだ。
「誰にも言えない二重生活ですが、こういう生活を始めてから自分が生き生きしていることもわかっている。このままひっそりと続けていけたらと思っています」
お金が介在する関係を、どうとらえるかは人それぞれ。一日だけの恋にお金がついてくるだけと考えることもできるのかもしれない。否定も肯定もできないが、今後、彼女にどんな変化が起こっていくのだろうか。
【前編から読む】
とても素敵なひと時が、3万円になった瞬間…自分は何を売ったのか?