別れるときに揉めたくないけど、きれいな別れってある?
出会いがあれば別れもある。あんなに盛り上がった恋であっても、唐突に別れがくることもある。SNSで別れを告げられて激怒したり、自然消滅を狙って連絡をとらなくなった相手を恨んだりしているケースも耳にする。
別れに法則はないが、「最低限のマナー」はあるだろう。一時でも好きになった相手なのだから。
自分から別れの言葉を言い出せなくて
「私、フッたことがないんです」
そう言うのはショウコさん(32歳)だ。言い換えれば、自分から別れたいと思っても「別れたい」とは言ってこなかったということ。
「相手を怒らせるのが怖くて。それに、もう好きかどうかわからなくなっていても、別れたらひとりになるでしょう。それが嫌なんですよね」
結果的に、彼女の反応から「もうオレのこと好きじゃないんだね」と言われて去られるというパターンを繰り返しているのだとか。
「ただ、はっきりさせないと後追いされることもあるんだと最近、わかったんです」
いつものように「もうオレのこと好きじゃないんだね」と言われたものの、「そういうわけじゃなくて」と言ってしまったために、つきあって1年たつ彼にしつこくつきまとわれているという。
「つきまとわれているというと言い過ぎですね。ふだん通りに彼は『今度の週末、どうする?』と尋ねてくるので、『家にいる』と答えると、『じゃあ、行くよ』と言われてしまう。それを断れないんですよ。彼のほうは私が前ほど情熱的じゃなくなっているのをわかっているから、毎週末会おうとする。でも私は本当は会いたくないんです」
これを繰り返していると、彼が本物のストーカーになりそうだ。そもそも好きでもないなら、早く離れたほうがいいのではないだろうか。
「ダブルデートのときに連れていく相手としてはいいんですけどね……」
見た目も職場も「イケてる」彼なので、そういう意味で彼を手放したくないという思いもあるようだ。だが、この先、深いつながりをもってつきあって行く気がない相手に、あまりに失礼ではないだろうか。
「そう思って、友だちに別れたいみたいだと言ってもらったんです。でも彼は直に確認するからって連絡してきて。彼女の言っていることは本当です、とメッセージを送りました。『直接言えよ』とブチ切れたような留守電が入っていました」
それきり連絡は途絶えたが、ときどき彼が恋しくなることがあるとショウコさんは言う。それは「彼という個人」ではなく、「彼という存在がなくなったこと」への未練なのだろう。
悪者になりたくない
男も女も悪者にはなりたくない。だがつきあってきた時間や関係の深さを考えれば、「きちんと別れる」ことは最低限のマナーなのではないだろうか。「以前、2年つきあっていた彼が、『この本、あげる』とデート帰りに渡してくれたんです。電車の中でパラパラ見ていたら、あるページに付箋が貼ってあった。そこは恋人同士の別れのシーンで、『僕の心境』って書いてあった。めんどくさい男だなと思いました。すぐに『別れたいなら別れたいと自分の口ではっきり言うのがけじめというものではないか?』とメッセージしたんです。そうしたら『ごめんなさい』って。理由を聞きたかったけど、聞いても意味がないから、そのまま別れました。さっきまで楽しくデートしていたのは自分だけだったのかと思うと腹が立ちますね。私が聞き分けのない女だったら、とことん嫌がらせしたかもしれない(笑)」
別れたいと言い出すことで、どんな波紋が起こるのか、相手がどういう反応をするのか。それがわからないから、「別れ」が怖いのかもしれない。
「リスク回避なのかもしれませんが、私はつきあった人には『前の人とどうやって別れた?』と聞くことにしているんです。恨まれるのもしつこくされるのも嫌だから、そこから話を広げて、『今、こんなに好きだから別れることがあるなんて思わないけど、万が一、そういうことがあったらお互いにきちんと話そうね』と釘を刺しておきます。今の彼とは1年つきあっていて、いずれ結婚もと考えているけど、実際には何があるかわからない。でもきっと何かがあって別れるとしても、人間関係は続くんじゃないかと思っているんです。それは相手への敬意があるから」
サオリさん(34歳)は穏やかにそう言う。つきあっているときも別れるときも、相手への敬意をもって接する。うまくいっているときは簡単なのだが、別れを考えたときに「敬意をもつ」のはむずかしいかもしれない。
「他に好きな人ができて別れることもあると思う。そうなると、早く別れたい、今すぐ新しい人とつきあいたいと焦ってしまうけど、今までつきあってきた人にもちゃんと敬意はもちたい。私、かつてボロ雑巾みたいに捨てられたことがあるんです。3年つきあっていたのに、彼の部屋に行ったら別の女性がいて、『あ、サオリ。オレ、この人と結婚するわ』って言われて……。プライドなんてたいしてないけど、それでもズタズタになりました。だから私は他人への敬意を大事にしたいと思っています」
好きな人のことは好きではなくなっても、自分のことのように大事にする。その気持ちがあれば、別れは互いに「しかたのないこと」として受け止めることができるのかもしれない。