亀山早苗の恋愛コラム

家事分担は「オレと同じだけ稼いできたら」と、40代の夫に言われて

女性蔑視、女性差別という言葉が毎日のようにあちこちで飛び出してくる。男性の中には、無意識に女性蔑視を植えつけられてきた人もいるのではないか。女性たち自身も、刷り込みがあるのではないだろうか。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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“男女差別”は、無意識のうちに人の心にはびこっている

女性蔑視

女性蔑視、女性差別という言葉が毎日のようにあちこちで飛び出してくるが、今、改めて男女差別について考えてみる、いいチャンスなのかもしれない。「高齢者だからやむを得ない」という意見があるが、はたして本当に年齢の問題なのだろうか。戦前ならいざ知らず、戦後すぐの民主教育を受けた世代が80代なのだから、日本の民主主義の質を問うべきではないかという気もする。

男性の中には、意図的な人もいるかもしれないが、無意識に女性蔑視を植えつけられてきた人もいるのではないか。そして女性たち自身も、それとは気づかずに視点を変えれば自らを差別される側に置きがちな刷り込みがあるのではないだろうか。

 

女性自らがかかっている「男は立てるもの」という呪い

知らないうちに親世代の男女感覚を踏襲していたことを、夫から指摘されたというのはユリさん(43歳)だ。結婚して14年、12歳のひとり息子がいる。

「自分でも気づかなかったんだけど、結婚してから私、何かというと『あなたが世帯主なんだから』と言っていたそうです。今住んでいるマンションを購入したとき、『あなたは一家の大黒柱なんだから、これからもがんばってね』と言ったんですよ。そうしたら夫が『オレ、そういう考え方が嫌なんだよね。共働きなんだし、どうして一緒にがんばろうって言ってくれないのかな』と。私としては夫を立てたつもりだったんですが、夫は『妻が夫にプレッシャーをかける典型的な例だよ』って。考えてみたら、そうやって一歩引いてみせることで、圧力をかけていたのかもしれませんね」

ユリさん夫婦は、ときどき仲のいい友だち夫婦と食事をすることがある。もともと夫同士が友人だったのだが、何度か会っているうちに妻同士も親しくなった。

「最初にその夫婦と食事をしたとき、びっくりしたのは、奥さんが自分の食べたいものをばんばん言うんですよ。うちだって夫婦ふたりだけで食事に行けば別だけど、他人がいるところではやはり夫に主導権を握らせたほうがいいと思ったんです、私は。だけどうちの夫は、その友だち夫婦みたいにいつどこでも妻が積極的にものを言ったり行動したりするほうがいい、と」

だが、そういうモデルケースを見てこなかったユリさんは、かなり戸惑ったそう。

「うちの母なんて、よく『女はでしゃばっちゃいけない。だんなさんの言うとおりにしていればいい』と言ってましたしね。でも最近、会社の若い人たちを見ていると、男だから女だからは関係ないと本当に思っているようですね。だから私たちも意識を変えなければいけない。ただ、職場では意識を変えられても、夫婦間ではむずかしいなと思います。せめて息子には『男なんだから』とは言わないようにしていますが」

ユリさん自身の本心としてはどうなのだろうか。自分の意見を押し通したほうがいいと思うことはないのだろうか。

「仕事上はありますが、家庭生活の中ではやはり夫の意見をまず聞いてみることが多いですね。先日、高校時代のクラス会があったんです。久しぶりに出席したかったので、『クラス会があるんだって』と夫に言ったら、『いつも思うんだけどさ』と夫に言われたんですよ。『きみは必ず、あるんだってと言いながら、行きたいのと聞かれるのを待っている。クラス会に行きたいんだけど、この日、なんか予定ある?行っても大丈夫かなというほうがずっといいと思うんだよ』と。結局、夫に対してストレートにものを言っていないということが自分でもよくわかりました」

習い性というのはなかなか変わらない。だが、夫に言われながら、少しずつ、ユリさんは自分の欲求を前面に出していこうと考えている。

 

夫の捨て台詞のような“上から目線”にイラッ

夫の「上から目線」に、いつもイライラさせられている女性もいる。シズカさん(39歳)は結婚8年、3歳年上の夫との間に7歳と5歳の女の子がいる。第一子が産まれたときに退職し、現在はパートで働く。もう少ししたら元の職場に復帰できないか探っている状態だ。

「うちの夫って捨て台詞を言うところがあって。先日も娘たちとクッキーを作ったとき、夫が食べないのはわかってるけど、ふたりが『パパにあげる』というからきれいな袋に入れて、娘たちが渡したんです。そうしたら娘たちには、『ありがとう』と言ったけど、リビングを出ていきながら私にだけ聞こえるように『暇でいいよなー』って。言い返そうとしたときはいないわけです。外で働かないと一人前とみなさない人なんです。以前、手伝ってと家事を頼んだら拒否された。『オレと同じだけ稼いできたら、家事を分担しよう』と言われました」

それ以来、夫には何も頼らなくなったとシズカさんは言う。実父が倒れたと報せを受けて夫に電話をすると、「オレのメシだけ用意しておいて」と言われたこともある。

「近所の奥さんと少し立ち話をしているのを夫に見られて、『女ってくだらないことに時間を使って、あとで忙しがるんだね』とさらっと言われたときもムッとしましたね。一度、夫にそういう言葉を投げつけられると、こっちは本当に傷つくんだよと言ったんです。そうしたら夫は『思ったことを言っちゃいけないの?』って。本人としては悪気がないのかもしれません。だから過剰に傷つく必要はないんだろうけど、でも言っていいことと悪いことがある」

40代の男性の中にもこうした人はいる。

日本は上下関係が厳しい。社会に出ると、上の人を肩書きで呼ぶことも多い。スポーツの世界でも、プロ野球などは選手が監督を名前で呼ばずに「監督」と呼ぶ。だが以前、アメリカのNBA(バスケットボール)の試合後、バスケの神様といわれたマイケル・ジョーダンは監督を「フィル」と愛称で呼んでいた。彼に言わせれば「監督と選手、立場は違うけど同等の人間だ」ということになる。

目上の人を愛称で呼ぶのがいいか悪いかは別として、少なくとも日本では「立場は違っても相手も人間、同等である」という意識が低いのではないだろうか。立場より、人として相手に最低限の敬意をもてるかどうか。そこがいちばん肝心なのではないだろうか。
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