マスク越しでは恋愛も始まらない……20代の憂鬱
「もともと恋愛相手がいた人はいいですよ。これから恋愛なんて始められるわけないじゃないっすか」
20代の女性は怒りを含んだ尖った声でそう言った。一方で、恋愛に興味がないという別の女性は、「むしろコロナ禍で恋愛の価値が下がってよかった」と微笑む。
このコロナ禍において、恋愛に対しての考え方、価値の見いだし方もさまざまである。
そろそろ誰か探したいと思っていたのに
大学を卒業して就職、学生時代につきあっていた彼とはいつしか自然消滅し、友だちの紹介でつきあい始めた彼にはふたまたをかけられていたことが発覚。ようやく気分が上昇して、誰かをもう一度好きになり、それが結婚に結びついたらいいなと思っていた。そう話してくれたのは、リナさん(29歳)だ。
「去年のお正月の決意が『彼を見つける』だったんですよ。ところがそこから一気にコロナ禍。リモートワークが続いて、現在も週2回出社です。こんな状況じゃ彼を見つけることさえできません。30歳までに結婚するのは絶対無理。人生設計が狂いましたね」
人と距離をとらなければ会えない、外では常にマスク生活。ワクチン接種が始まっても、インフルエンザ並に薬ができるのはまだまだ先の話。となれば、マスクを着けて人と会う日常はまだまだ続くと考えられる。
「マスクを着けて生活していると、他者と近距離で接するのが怖くなります。誰かとキスするとか、もっと濃厚な接触をするとか、今は考えられない。もともと彼のいる友人でも、最近はめったにセックスはしないと言っています。今、もし恋愛が始まったとしても、私も身体接触は避けるだろうなと思う」
だから、恋愛が始まることに意味がないと思い始めている。コロナがおさまるまでは恋愛からは目を背けることになりそうだとリナさんは苦笑した。
「すごく好きな人ができて、相手が求めてきたとしても、彼の日常がわからない限り、どこまで感染対策をしているかわかりませんしね。コロナは人を疑り深くさせますね」
いつどこで誰がかかってもおかしくない。どんなに対策をしていてもかかる可能性はある。理屈ではそうわかっていても、相手を疑いの眼で見てしまう“気持ち”は抑えようがない。
「誰かいないかなあ、でも今の状態では……とモヤモヤ迷い続けるより、ある程度、終息してから本腰を入れて婚活しようと気持ちを変えました。今は友だち主催のリモート飲み会を楽しんでいます」
恋愛せずにいられてホッとしている
つい先日、元AKB48の島崎遥香(26歳)が、テレビ番組で「恋愛のメリットって何かありますか」と発言、話題になった。「その話を知って、私もうんうんと彼女に同意していました」
そう言うのはヒロミさん(27歳)だ。彼女も恋愛にメリットなんてあるのか、それなら条件付けをしてさっさと結婚したほうがまだ効率的だと考えているそう。
「実際は今、まだ結婚は考えていませんが、結婚するメリットというのはあると思うんです。家族が増える、安心感がある、子どもができれば成長が楽しみ、親も喜ぶ、とかね。だけど恋愛って結婚するか別れるかのどちらかしか先の選択がない。結婚するとしても時間がかかる、別れたらすべてが台なし。そう考えると恋愛そのものにメリットはないですよね。時間もお金も労力もムダとしか思えない」
ましてこのコロナ禍で感染対策に気を遣いながら、ひとりの人と濃厚接触を繰り返すなんて、ムダにもほどがあるとヒロミさんは笑った。
「もともとそう思っていたので、このコロナ禍で恋愛控えみたいな風潮が出てきて、なんとなくホッとしています。恋愛を必要としていなかった私としては、いい言い訳ができた感じ。そう思っている人は周囲にも多いですよ」
確かに恋愛不要の立場にある人にとっては、声高に恋愛不要と叫ばなくてもいい時代ではある。感染を考えたら、恋愛なんてする気になれない人は多いのだから。
「コロナが終息して30歳くらいになったら、本気で婚活を始めます。マッチングアプリで条件を絞って会って、うまくやっていけそうならすぐ結婚したい。生理的にイヤだと思わなければ、あとはすべて話し合って妥協していけると思うんですよね」
結婚なんてそんなに甘くないと言う人もいるかもしれない。だが一方で、昔は顔も知らないまま結婚していき、添い遂げる男女も多かった。結婚が生活のためだった時代とは異なるが、「家庭を作るという共通目的」があれば、確かに恋愛感情は必要ないかもしれない。むしろ、目的に向かって一致団結できる可能性もある。
コロナ終息後の恋愛、結婚はますます多様化していくのではないだろうか。