自律神経の不調……コロナ禍で増え、漢方の需要も増加

自律神経を整える漢方薬……特徴・効果・副作用

自律神経不調の症状が増加している

コロナ禍の影響で、西洋医学の先生方から「自律神経の不調を抱える患者さんが増えてるんだけど、漢方で何かいい処方ある?」と、相談されることが増えました。
 
患者さんの具体的な症状をお伺いすると、
  • 鬱々とした気持ち
  • 朝起きることができない
  • めまい
  • イライラが抑えられない 
などの症状が多く見られるようです。同じ患者さんからの症状の訴えがよく変わるので、自律神経の不調であろうと考えられるものの、なかなか改善が見られなかったようです。

先日はいくつかの漢方薬をご提案させていただき、「患者さんの症状が改善し、助かりました」と先生からお話を頂け、漢方を役立てて下さったことを嬉しく思いました。
 

自律神経を整える方法は? 西洋医学・東洋医学で異なる治療法・対処法

自律神経の不調を改善する方法は、西洋医学の見地と東洋医学の見地でそれぞれ異なります。

西洋医学のお薬では、血流の改善や交感及び副交感神経の異常反応の改善、緊張の不均衡の改善を期待される処方や、脳に働きかけることで不安・緊張などの情動異常を改善する抗不安薬が処方されることがあります。
 
東洋医学の漢方処方では、身体の「気・血・水」のバランスを整えていくことによって、体調ひいては自律神経の不調を整えていきます。過剰になっている部分は減らし、不足している部分は足すことによって、身体のバランスを取っていくイメージです。また、血流の改善やホルモンバランスの調整は東洋医学の得意分野です。
 
自律神経の不調として、例えばイライラや落ち込みといった気持ちの変動が大きいことを訴える方の場合、気が滞っている状態と捉え、気の巡りを良くしてあげる処方を用います。東洋医学の考え方では一人ひとりの体質をしっかりと判別し、適した漢方を用いることが、不調の改善に何より大切なことになります。
 

自律神経を整える漢方薬……それぞれの特徴・効果・副作用

■気血両虚タイプ……十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
全身の気と血が減少すると、それにより脾胃(胃腸)の働きが悪くなったり、さらなる体力の低下や貧血、低血圧、皮膚の状態が悪くなったりします。また、血流も悪化し、倦怠感や手足の冷えも出てきます。このような気血両虚タイプの方には「十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)」を処方します。まれに、地黄という生薬によって、食欲不振や下痢を起こすことがあります。そのため、胃腸がかなり弱っている方には、次の補中益気湯を選択する必要があります。
 
■気虚タイプの方……補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
気の低下が著しく、胃腸の不調が強い場合には、まずは気の回復を目指すことがあります。子宮や内臓下垂がある時には、升麻という生薬の含まれる補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」を処方します。長期服用する場合には、甘草の副作用(むくみ、高血圧、低カリウム血症など)に注意する必要があります。
 
■肝気鬱結タイプ……加味逍遙散(かみしょうようさん)
情緒不安があり、少し怒りっぽくイライラして、胸の張りや頭痛なども多く、不定愁訴の訴えが多い肝気鬱結タイプの方には「加味逍遙散(かみしょうようさん)」を処方します。まれに、山梔子という生薬によって、下痢や吐き気を起こすことがあります。
 
■肝鬱化風タイプ……抑肝散(よくかんさん)
ストレスを受けると、怒りやすくイライラが強くなり、コントロールができなくなる、また、睡眠を取ろうとしてもなかなか寝付けないなど、不眠や神経症が産後うつの症状として強く現れている肝鬱化風タイプの方には「抑肝散(よくかんさん)」を処方します。まれに、当帰という生薬によって、胃の不快感を訴えることがあります。
 
■心脾両虚タイプ……帰脾湯(きひとう)
疲労やストレスによる脾気の低下によって胃の働きが低下し、体力の低下・貧血などの症状がある。さらに心血の不足によって精神活動が不安定になり、健忘や不安、不眠などの症状がある心脾両虚タイプの方には「帰脾湯(きひとう)」を処方します。まれに、遠志という生薬によって、1,5-AG(糖尿病の指標の数値)が高くなることがあります。
 
■気滞お血タイプ……芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)
胃腸が弱く、気が不足していている。さらに月経や出産時の出血などにより、血の不足があり巡りも悪くなっていることで、気血の流れが悪化している気滞お血タイプの方には「芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)」を処方します。冷えの訴えは強くないことが多いです。胃腸が弱い方の場合、当帰や地黄という生薬によって胃の不快感を訴えることがあります。
 
■気滞痰鬱タイプ……半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
喉や胸の詰まり呼吸が苦しいなど、ストレスなどを原因とした身体上部の不調が強い気滞痰鬱タイプの方には「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」を処方します。特に、喉のあたりに飲み込もうと思っても飲み込めない閉塞感を感じる、梅核気の訴えがあることが多いです。体力の有無に関係なく使用できますが、著しく体力が低下している方の場合には処方しないこともあります。
 
■心肝血虚タイプ……酸棗仁湯(さんそうにんとう)
疲れているのに眠れないというときに利用されます。ストレスや疲労があり、ふらつきや不眠・寝、動悸や不安感などのある心肝血虚タイプの方には「酸棗仁湯(さんそうにんとう)」を処方します。酸棗仁という生薬は緩下作用があるため、下痢時や下痢をしやすい方には注意して使用する必要があります。
 

自律神経を整えるためには自分時間も大切に。必要に応じ漢方薬の検討も

冒頭でもお伝えしたように、自律神経の不調を抱える方は、ここのところ増えてきていると実感しています。不調を抱えながら日常生活やお仕事を進めることで、さらに症状が悪化してしまう方もいらっしゃいます。そのため、まずはリラックスする時間や、自分の好きなことに取り組む時間を作っていただくのがおすすめです。
 
とはいえ、なかなか改善しない不調の解決策を見つけることはそう簡単なことではないですよね。解決策の一つに今回ご紹介したようなさまざまな漢方薬があることを知っていただき、試していただく機会があれば、大変嬉しく思います。
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