結婚15年、夫の不倫は18年?
事実は小説よりも奇なりという。この年末、今まで知らなかった事実を知ってしまったという女性がいる。そこには夫の姉も一枚噛んでいた。ショックのあまり、彼女はまだ冷静な判断を下せていない。
いきなり「不倫」が発覚して
「夫はとても忙しい人なんですよ。その“忙しい”の中に不倫の時間も入っていたのだと思うと、本当に驚くし腹立たしいし。ずっと騙されていたんですよ、私」
ミナさん(44歳)は力なくそう言った。泣き出しそうな表情ながら、眉間に寄せた皺からは怒りも感じられる。自分の気持ちが整理できないのだという。
3歳年上の夫と結婚したのは15年前。13歳と10歳、ふたりの子がいる。彼女は下の子が小学校に上がってからパートで仕事をして家計の足しにしているという。
「義母はばりばりのキャリアウーマンで、外資系企業で今も働いているんです。そんな母親をもった夫は逆に、家にいるお母さんに憧れていたみたい。結婚するとき子どもが大きくなるまでは家にいてほしいと言われて、私も納得ずくで一緒になりました」
夫は仕事優先、夕飯がいるかどうか早めに連絡してと言ってもなかなか守ってくれない。仕事に集中していると、そこまで頭が回らないというのが言い分だった。ミナさんはいつも夫の夕食を用意し、夫が食べないときは自分の昼食に回したり、最近ではパートに持っていくお弁当に応用している。
「まあ、昭和な夫ですね。うちの父がそういうタイプだったので、母は大変だっただろうなと思いながら生活してきました。ただ、休日は子どもたちと遊びに行ったりしますし、まれには休日の夕飯を作ってくれることもある。そこそこ不自由ない生活費ももらっていますし、それでよしとしようと思っていました」
夫は家では声を荒げたりはしない。だが、何かあると理屈で攻めてくるタイプだ。いつだったか夫の親戚に贈り物をしてほしいと言われてミナさんがうっかり忘れたときは、「どうしてメモしておかないの?」「どうして毎年していることを忘れるの?」と言われた。たまたま下の子のPTA関係で忙しかったのだが、それを言うと、「だったら最初からそう言えばいいじゃない。今言うと言い訳にしかならないよ」とぶった切られた。ぶった切られたというのは、ミナさんが抱いた印象だ。
「どこか怖いんですよ、夫は」
突然、発覚した夫の不倫
それでも家庭生活はうまくいっていた。少なくともミナさんはそう思っていた。ところが昨年11月末、思わぬことから夫の不倫が発覚した。「それがなんともお粗末なバレ方だったんですよ。夫の姉から私にメッセージが来たんです。『ヨウコさんが会社で倒れて入院したの。コロナの影響で面会はできないけど、病状は私のほうで把握するから心配しないで』って。最初はただの宛先ミスだと思ったんですよ。だけどヨウコさん、の文字におや、と思うところがあって。何年か前、夫が寝言でヨウコヨウコって言っていたことがあったんです。翌朝、尋ねたら夫が一瞬、ぎくっとした。見逃したらそれまでというくらいの小さな動きだったけど。それを思い出したんですよね」
義姉はバツイチで、友人と会社を立ち上げた仕事熱心な女性。もしかしたら義姉の会社にいるヨウコさんと夫に何か関係があるのではないかと疑い、ミナさんは夫宛ての年賀状をチェックした。
「すぐわかりました。ヨウコさんはやはり義姉の会社に勤めていた。さらに夫の机の中をあれこれ探ってみたら、若い夫が女性とベッタリしながら写っている写真がでてきました。さらに義姉のSNSをチェックしてみると、そこから友だちつながりでヨウコさんにたどりついた。今のヨウコさんの写真もありました。若いころの夫と写っていたのはヨウコさんだったんです」
義姉は間違ってミナさんにメッセージを送ったことに気づいていないようだ。その晩遅くに帰ってきた夫に、ミナさんは「ヨウコさん、大丈夫なの?」と声をかけた。
「夫の目が泳ぎましたね。『な、なにそれ。誰』と意味不明な言葉を発していたので、『もういいよ、わかったから。ヨウコさんとは何年つきあってるの』とカマをかけると、『いや、その……』とあわてふためいて。そのとき、夫の携帯に義姉からメッセージがきたんです。義姉はそのときも間違いに気づいてなかったみたい。夫の携帯を取り上げて見ると、『あんたたち、もう18年もつきあっているんだよね、見舞いにも行けないのはつらいね』と。夫にそれを突きつけました」
夫は結婚前、姉の大学時代の後輩だったヨウコさんと恋に落ちた。だがそのときすでにヨウコさんは結婚していた。夫は離婚を迫ったが、ヨウコさんはためらい、そうしているうちに彼女は妊娠。本当のところ、今もヨウコさんの夫の子なのか、ミナさんの夫の子なのかわかっていないという。
夫は重い口を開いて、ぽつりぽつりとそんな話をした。
「聞いているうちに気持ちが悪くなって、何度も吐きました」
防衛本能が働いたのか、ミナさんはそのまま眠ってしまったという。目覚めると夫が心配そうにのぞき込んでいた。
「夫の顔を見てまた吐き気がして。悪い夢じゃなくて、最悪な現実だったのだと悟りました」
年末になって、ミナさんはようやく少しずつ食事がとれるようになった。おせち料理を作ろうとしたら、夫がデパートで買ってきてくれた。義姉はあれからまったく姿を見せない。
「実家に戻りたくてもこのコロナ禍では帰れない。ショックが大きすぎて、私はまったく何をどうしたらいいかすらわからないんです。ただ、結婚前から裏切られていたのには驚いたし、それで私と結婚した夫をそら恐ろしい人だと思う。怒りや憎しみより、今はただ衝撃を受けている感じです」
夫と話したい気持ちはあるが、話したくないとも思う。夫は今のところ家の中のことを積極的にやって子どもたちともきちんと関わっている。だがミナさんの顔色をうかがって話しかけてはこない。
「いつか気持ちが落ち着いて話し合える状態になるのかどうか……。今は私の心が閉じてしまっていて、自分でもどうすることもできない」
言葉をひねり出すように、ミナさんはそう言った。