亀山早苗の恋愛コラム

破綻した夫婦生活…それでも「離婚だけは絶対しない」妻たちの執念

夫婦生活の破綻を認めない妻は、いったい何を考えているのだろう。事実上、別居していてもなお、「離婚はしない」と頑なになっている女性から話を聞くことができた。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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頑なに「離婚だけはしない」とがんばる妻

離婚しない

夫婦生活の破綻を認めない妻は、いったい何を考えているのだろう。事実上、別居していてもなお、「離婚はしない」と頑なになっている女性から話を聞くことができた。

 

夫が幸せになるのが許せない

「うちの夫は女ができて出ていったんです。私は調停を申し立てたんですが、不調に終わって……。夫側が裁判を起こすかと思ったら、そのまま沈黙。別居してすでに4年になります」

そう話すのは、マイさん(39歳)。2歳年上の男性と結婚して10年、ひとり息子は8歳になっている。夫は息子が3歳になったころから外泊を繰り返し、半年後には少しずつ荷物を運び出して帰ってこなくなった。

「相手は夫より一回りも下の女性です。彼女が妊娠したため、夫は出て行ったようです。あちらの子ももう3歳になるんじゃないでしょうか。夫からは月々10万円が振り込まれています。私と息子が住んでいる自宅のローンもあるし、いつか生活が苦しくなったら帰ってくるんじゃないかと思っていたんですが……」

マイさんは実家が裕福なので、生活費にはこだわっていないそう。ただ、夫を懲らしめるためにも月々10万円は譲れないという。

「夫からはときどき連絡が来ます。離婚届を書いてほしい、と。私は完全に無視していますけどね。子どもの行事があると一応知らせていますし、書いてほしい書類があるときも呼び出して書いてもらっています。親子の縁を切るなんてできないんだからねとそのたびに言うんです。離婚はしないとも言ってあります」

たとえ離婚しても、父親としての責任はあるのだからそれは負わせればいいこと。だが、マイさんが離婚に応じない真の理由は、「夫が幸せになるのは許せないから」なのだ。

「私と息子を捨てて、自分だけ勝手に若い女と幸せになりたいなんて許されるはずがありませんよね。たとえ億というお金を積まれても離婚届を書くつもりはありません」

それでも別居が長くなれば、夫が裁判を起こした場合、夫婦関係が破綻していると認められる可能性は高い。

「夫は裁判を起こさないんじゃないかと思っています。めんどうなことは嫌う人だから。夫は家には来ませんが、それでも息子のことは気にして行事にも来ますし、ときおり息子とふたりで食事をしたりもしている。いずれ若い女に飽きて戻ってくるかもしれません」

それほどまでに夫を愛しているのかと尋ねると、彼女はふっと笑った。

「もし戻ってきたら、そのときに私は離婚を考えると思います」

どこまでも夫を困らせたい、幸せは感じさせない。そんな執念を感じさせられる。

 

「離婚した女」になりたくない

ユカリさん(44歳)も、半別居中の夫からの離婚に応じていない。結婚して15年、ひとり娘は中学生だ。半別居状態というのはなんだろうか。

「夫は自宅に戻ってきたり出て行ったり。この1年ほどは、月の半分くらいは自宅、半分くらいは彼女の家にいるみたいですね」

淡々と語るユカリさんだが、この夫婦関係は不思議なことになっている。夫が戻ってくると、ユカリさんは夫と夜も夫婦生活を平然と送っているのだ。

「最初は自宅と愛人宅を行ったり来たりしている夫を許せなかった。だけど戻ってこなくなったらどうしようという思いもあって。だから夫婦であることを思い出させるために。私から迫ると夫は断り切れない。彼女より私のほうがいいことをわからせてやるんです。夫は今、49歳。彼女は30歳になったばかり。そんな年の差がある女性と、もし再婚したってうまくいくはずがないでしょと“洗脳”しています」

彼女は怒りを押し殺して夫を迎えているのか、あるいは夫を愛しているから手放したくないのか。

「バツイチになりたくないんです。離婚した女、夫に捨てられた女になるのがイヤで。今どき古いと言われるかもしれませんが、夫ひとりつなぎとめておけなかった女って情けないじゃないですか」

世の中の離婚経験者を敵に回すようだが、これはあくまでも彼女の言い分。いまだにこう考える女性もいるのだ。

「私もフルタイムで仕事をしていますから、離婚したら会社でいろいろ言う人がいると思うんです。あんなふうに働いているから夫に逃げられるとかなんとか。実際、離婚した先輩がそう言われているのを聞いたことがあって。だから耐えられないんです」

娘は詳細を知らないが、いつかは知ることになるかもしれない。そのとき、母はどうせつめいするのだろうか。

「娘には私がお父さんを愛しているから離婚しなかったと言います。夫が全面的に帰ってくるとしたら? いったんは受け入れるでしょうね。ただ、私自身が定年になったとき、夫を見捨てるかもしれません。やはり復讐してやりたい気持ちはありますから」

20年もしたら、前述のマイさんもユカリさんも離婚しているかもしれない。だがそこに行き着くまでには今よりさらに紆余曲折があるだろう。夫婦関係というのはひと言では片づけられないものがある。
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