大人の発達障害と診断されて

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今年、筆者は51歳にして「大人の発達障害ADHD」と診断されました。

「発達障害」という言葉との出会いは、20年ほど前。先生の話が聞けない長女の様子を見ていろいろ調べて知ったのです。大人の発達障害については、2011年に依頼された発達障害当事者の書籍に携わったことがきっかけでした。そして、この数年、私の周囲に驚くほど大人の発達障害の方が一気に増えてきたことから彼女たちの悩みを聞いていると、自分とそっくりだということに気づいたのです。

診断を受けたことを自己開示すると、さまざまな相談を受けるようになりました。そこで、精神科医や臨床心理士といったプロではなく当事者として、グレーゾーンの方に向けてお話ししたいと思います。

 

人口の1割にも及ぶ、発達障害の人たち

そんなにたくさんいるの? そうなんです。放送大学のテキスト『精神疾患とその治療』によれば、発達障害の人は人口の1割にも及ぶそうです。

発達障害という概念は、諸分野からの影響によって異なり、また時代とともに変化し続けているようですが、自閉症スペクトラム症(ASD)その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、知的障害、運動発達遅滞などの総称です。

例えば、ADHDは注意力・集中力、自閉症スペクトラム症(ASD)や広汎性発達障害はコミュニケーション能力において発達が遅れているが、ほかの領域では、逆にずば抜けていたりするので、発達障害は「発達凸凹」ともいわれます。ADHDの多くはASDの特性を併せ持つともいわれ、私自身も、小さいころASD傾向がありました。

文科省のホームページによれば、

ADHDとは、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。また、7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される

とのこと。推定される……つまり、原因はまだ特定されていないのです。

 

どうやって発達障害かどうかわかるの?

発達障害かどうかの診断は心療内科で受診することでわかります。精神科医の問診による診断が主軸ですが、臨床心理士による知能検査などを加えて参考にする場合も多いようです。診断方法も見解も処方も、精神科医によってさまざまです。なぜでしょうか。

発達障害は医療モデルでは対応しきれない。根本の医学的な原因は明らかでないため、検査で原因を見つけて治すという作戦は採れない

と前出のテキスト『精神疾患とその治療』にもあります。

医学全般における診断については、『ICD-10 国際疾病分類第10版』(※WHOが分類した死因や疾病の国際的な統計基準)など診断基準があるそうですが、それでもやはり医師によって診断名が違っていたりしますよね。精神医学領域の場合、さらに分類は難しく、患者への問診により分類をしていくしかないのが現状なのだとか。医師によって診断が異なって当然なのです。

2001年に出版された『わかっているのにできない脳』で、著者のエイメン博士は脳のMRI画像による発達障害の診断について記していました。当時、これを読んで、娘のために日本で脳のMRI診断による発達障害の診断ができる医師を探しましたが見つかりませんでした。いまはそんな医院もあるようですが、高額でまだ一般的ではないようです。

参考までに、精神疾患の分類については『DSM-5』(※米国精神医学会による分類および診断基準)という精神疾患の診断・統計マニュアルが、精神科医のガイドラインとして一般的のようです。

もうひとつの基準として、発達支援法にも書かれているように日常生活や社会生活など社会的障壁による制限があるかどうか、つまり「困っているかどうか」が重要です。仕事や生活に支障があるからこその「障害」なのです。

 

グレーゾーンを自認。診断は受けたほうがいい?

仕事面はさておき、恋愛コラムでの記事ですので、やはりここでは、夫婦間、恋人間での困りごとに注目してみましょう。例えば、片づけられないADHDグレーゾーンを自認している女性がいたとします。

「じゃあ、僕が片づけるから」と協力してくれる夫の場合、それは「困りごと」にはなっていませんよね。でも、「どうして片づけられないんだ!」「お前は人としておかしい!」などと夫に責められる……というのであれば、これは大きな問題です。

前者の場合は診断を受ける必要はないでしょう。でも、後者の場合、夫婦関係に支障が出ています。こんな上から目線の夫さん、そもそも問題ありそうですが、「片づけられない」ことがきっかけであれば、やはり診断を受けて、「やろうとしてもできないのだ」ということを夫に伝えて、話し合いをしたり、なんらかの支援を受けたりする必要があります。

また、子育てをしているお母さんなら、子どもの給食費の支払いが遅れる、書類の提出が遅れる、書類そのものをなくしてしまう……などのトラブルも出てくるでしょう。担任の先生も人間ですから、どうしても「あのお母さんはいい加減な母親だ」「問題家庭だ」と捉えられてしまうことになりかねません。お子さんも困るでしょうし、夫婦関係に影響する可能性も。

私の場合、診断を受けたことは予想以上に安堵しました。シングルマザーとして3人の子を育ててきたこと、パニック障害も独学で克服したことも含めて、先生に「がんばってきましたね」とおっしゃっていただいて、涙が溢れてきました。一番よかったのは自分を褒めてあげられたことかもしれません。そして、今の夫にも特性を説明しやすくなりました。

診断を受けることでのマイナス点についても書いておきます。残念ながら「欠陥のある人間」「言い訳にしている甘えた人間」などのレッテルを貼ってくる人も少なからずいらっしゃいます。「発達障害の診断を受けて障害者手帳をもらってラクしようとしている人が増えている」と精神科医がブログに書いているのを見てしまったこともあります。受け止め方はさまざまなのです。

 

診断を受けるのは何のため?

発達障害は「病気」ではありません。発達障害について、心療内科・精神科のホームページを検索していると、「病状」として書いている医院もあれば、きっぱりと「病気ではない」と書いている医院もあります。

筆者は、後者の意見を伝えたい。

長時間の読書が苦手な私は、だからこそ「読みやすい文章」を書くための工夫を重ねてきて、長年、ライターの仕事をしています。長所は短所で、短所は長所。ダメだと感じる部分が、長所に繋がっていたりするものです。まずは自分がその特性を受け入れてあげることが大切だと思います。

そんな私も、どこかで「欠陥人間」だという自覚がありました。母親に「頭の中をかち割って配線を繋ぎ直したい」という強烈なコメントをもらったこともあり、自分の「凹んだ部分」にフォーカスする癖がありました。

でも、短所の克服はどう工夫するか、どうサポートしてもらうか、周囲との協力関係があって、ちゃんと長所が活かせたなら、逆に「すごいね!」と言われることにもつながるはずです。

もしも発達障害と診断されたなら、

1)これまでの自分のがんばりを労う
2)これからどうするか考える・工夫する
3)一番身近な家族(パートナー)に解説して理解してもらい可能なら協力を得る


という良い方向へ持っていきましょう。悲観するために診断を受けるのは違うのではないでしょうか。私のメンターのひとりは「発達障害は勲章だよ」と言ってくれました。

なによりまず、自分が自分を労ってあげて、自分を責めてきた人は特に、しっかり自分を抱きしめてあげてください。これからのことはアイデア次第です。実際の工夫も別の記事に書きたいと思います。

最後に、「発達性トラウマ障害」について少し触れておきます。

簡単にいうと虐待やいじめなどの心的外傷による発達障害の特性のような状態が見て取れるけれども厳密に言うと発達障害とは別物という分類で、とはいえこれらは複雑に絡み合っているのだそうです。私自身、これも絡んでいるように思います。気になる方は調べてみるといいかもしれません。いずれにせよ、こういった障害は、人からはもちろん、自分でも意外に見えにくいものです。でも、唯一無二の自分という存在、自己理解を深め、短所だけじゃなく長所もしっかり認めて、それを活かせる人生を創造していきましょう。

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