亀山早苗の恋愛コラム

50歳未婚 vs 49歳バツイチ…「ひとりぼっち」で生きる意味

人生いろいろであり、生き方もいろいろであるはず。だが、実際には結婚して家庭をもって子どもがいる。それがスタンダードとされがちだ。スタンダードからはずれた生き方には、それほど強い意志が必要なのだろうか。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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何ももてなかった私は「何ものでもない」のだろうか

アラフィフ

人生いろいろであり、生き方もいろいろであるはず。だが、実際には結婚して家庭をもって子どもがいる。それがスタンダードとされがちだ。子どもがいなかったり離婚したり未婚のままだったり。スタンダードからはずれた生き方には、それほど強い意志が必要なのだろうか。

 

未婚のまま50歳に

「ここ数年、気持ちが塞いでしかたがないんです」

エミさん(50歳)はそう言う。彼女は一度も結婚しないまま、先日、50歳を迎えた。

「ひとり暮らしのアパートで祝ってくれる人もいなくて。このまま生きていていいのだろうか。そう思いました」

短大を出て就職したころは、結婚して家庭をもつのだろうと漠然と思っていた。だが実際には30歳のとき父が急逝、それからは母とふたり暮らしで縁が遠のいていった。

「私はひとりっ子なので親のめんどうはみたいと思っていました。だけど母とふたりの暮らしはつらかった。母にとっては、それまで頼っていた父の代わりが私。真綿でじわじわ首を絞められるような束縛がありましたね」

40代に入ったころ、母が倒れ、それから介護生活が始まった。母を殺して自分も死にたいと思うような日々の中、彼女は仕事を続けられなくなった。

「貯金を切り崩しながら、家の中で、母とふたりで息がつまるような生活を送りました。5年後に母を見送ったときは、申し訳ないけどホッとした。そしてホッとした自分を責めました」

それからは非正規で働きながら、自分の生活を維持するだけの生活だという。経済的にも精神的にも余裕がない。

「いつしか友だちもいなくなっていたし、親戚もいない。この世でたったひとりぼっちなんだなと思うようになって。コロナ禍で一時期、仕事もなくなってどうやって暮らしていこうと途方に暮れたこともあります。夏になってやっと仕事が見つかり、また細々と暮らしていますが、こういう生活に意味があるのかなと思って」

更年期も重なり、鬱々としながら仕事と家と時折、心療内科に通う日々が続いている。ささやかでいいから希望をもちたいという気持ちはあるが、実際には希望がもてない。状況や環境は異なっても、今、同じように思っている人たちは少なくないのではないだろうか。

「過去ばかり見てもしかたがないとわかってはいるんですが」

彼女は少しだけ笑顔を見せた。日々の楽しみを見つけられるかどうか、それが生きるよすがになるかどうか、人はどうやって孤独を飼い慣らしていくのか。さまざまな問題を彼女は提起してくれている。

 

離婚してひとり

「離婚しなければよかった。ずっとそう思いながら生きています」

ルリコさん(49歳)はそう言ってため息をついた。30歳で結婚した相手との間には、なかなか子どもができなかった。そうこうしているうちに、夫から離婚を言い出された。

「しかも浮気相手に子どもができたって。あのときは絶望しましたね。夫から300万円をもらって離婚しました。夫は新しい生活に向かって新しい人とともに羽ばたいていく。私は取り残された。そんな思いがつよかった」

それが37歳のとき。専業主婦だったので、そこから仕事を探し、ひとりで必死に働いてきた。気づけば10年以上がたち、今も自分はひとりきりだ。

「一応、正社員になれたけど、給料は安いしゆとりはありません。実家は遠方で、もう両親もいないし兄夫婦とは疎遠だし。最近になって、私の人生、何だったんだろうと思うことがありますね」

自分の人生にはハイライトがなかったとルリコさんは言う。友だち感覚でつきあっていた彼と結婚したものの、大恋愛というわけではない。離婚も「理由がしょぼかった」と。

「普通でよかったんです。子どもができていれば離婚もしなかったし、普通の生活が送れていたはず。もっと積極的に不妊治療をすればよかったとか、でもあのときは経済的に無理だったとか、今になっていろいろ考えてしまうんです」

過去を振り向いても若さは取り戻せない。わかっていても振り向いてしまうから苦しい。

「ひとりで老いていくことを考えると、いてもたってもいられなくなることがあります。周りにひとりぼっちの人があまりいないんです。この年になると親友と呼べる人もいない。私からすると、文句を言いながらも親の介護をしている人さえ羨ましいくらい」

50歳で友だちを見つけるのはむずかしいだろうか。ネットもあるこの時代、自分から何かを発信することはできないだろうか。あるいは発信している人とつながることは不可能なのだろうか。

見方を変えれば、家庭に縛りつけられることなく、彼女は自由を謳歌できる立場だ。隣の芝生は青いが、自分の芝生もよく見れば青いのかもしれない。
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