30歳年上の彼ってやっぱり変ですか?
愛に年齢差は関係ないと思うが、実際に友人や身内が超年上とつきあっていたら誰もが心配するのではないだろうか。他人がどう言おうと愛を貫けたらすごい話ではあるが……。
超年上、さらに既婚……
「大批判されるのは覚悟の上なんですけど」
ミカコさん(33歳)は、最初からそう言った。
「それでも私は彼が好きだし、ずっと寄り添って生きたいんです」
今まで、“彼”とつきあうことで20年来の親友が去り、親からは「縁を切りたい」とまで言われた。それでも彼女は彼と一緒になれる日を待っている。
Wスコアに近いくらい年齢が離れた彼は、64歳。彼女の父親より3歳年上だ。知り合ったのは6年前、仕事がらみだった。上司が師と仰ぐ中小企業の経営者が彼だった。
「実はそのとき、私はその上司と不倫していたんです。帰り際、彼が『今度ゆっくり食事でもしましょう』と上司に声をかけた。そして数日後、本当に彼が一席もうけてくれたんです」
途中、上司は家から電話が入り、一次会で帰っていった。妻から帰ってこいコールがかかってきたのだ。上司は彼女とデートしているときでさえ、そうやって帰ることがあった。
その日、彼はとことんつきあってくれた。ミカコさんは気を許して、上司との関係を話してしまったという。
「好きになったらしかたがないよねって、彼がしみじみ言ってくれたんです。なんだかうれしくなってほろほろ泣いてしまいました」
ところがその数ヶ月後、上司は転勤で地方へ行くことに。遠距離恋愛になるのかと覚悟をしたが、彼はあっさり「家族と一緒だからさ」と言い放った。2年つきあっていたのに、うちは夫婦が破綻していると言っていたのに……。ミカコさんはどん底に突き落とされたような気分になった。
「彼はもう別れたかったんでしょうね。渡りに船みたいに元気に転勤していきました。取り残された私は、ひどく落ち込んで、年上の社長にすがってしまったんです」
彼なら的確に話を聞いて慰めてくれる。そう思ったのだ。
徐々に親しくなっていって
年上の彼の前で、ミカコさんは自分の感情の赴くままに泣いたり毒を吐いたりしながら上司の愚痴を言い続けた。彼は黙ってじっと聴いてくれたという。「しゃべり続けて2時間、ハッと気づいたんです。年上彼にはちっともおもしろくない話をしてしまった、と。ごめんなさい、ありがとうと言うと、彼はにっこり笑って『ミカコさんはおもしろい。魅力的な女性ですね』って。上司の性格分析が彼の興味をそそったようです。それからときどきふたりで会うようになりました」
だがもちろん、年上彼にも家庭があった。しかも父親より年上の人に恋愛感情をもつはずがないと思っていた。
「彼は毎週のように食事に誘ってくれ、仕事のことや人間関係の相談に乗ってくれました。半年くらいそんな関係が続いたとき、あれ、私、この人のこと好きかもしれないと思ったんです。その日、彼はいつもと違って少し元気がなかった。何でもないと言ったけど気になってたまらなくて。ここまで心配になるのは好きだからだと気づいたんですよね」
あとから知ったのは、その日、彼の妻が実父の急逝で実家に戻ってしまったということ。妻の母は認知症で、自身の夫が亡くなったこともわかっていなかったそうだ。それが不憫でね、と彼はのちに言ったそう。
妻が実家にいる間に他の女性と会っているなんて誠実ではないと感じる人も多いだろうが、ミカコさんは「それだけ寂しかったのだろう」と思ったそう。
「彼、26歳と早い時期に結婚しているんです。彼女が3歳年上だったからですって。私、彼の奥さんには敬意をもっています。それでも彼を好きな気持ちは止められなかった」
ふたりとも葛藤し、悩みながらもつきあおうと決めた。親友に話したとき、「また不倫? しかも30歳以上年上? 気持ち悪い」と言われ縁を切られた。
「いくら年の差があっても、私は気持ち悪いという表現はしない、したくない。彼女を失うのはつらかったけど、気持ち悪いはショックでしたね。たまたま彼と一緒にいるところを親戚に見られて親に告げ口され、親からも『何を考えているんだ。もう親でも子でもない』と叱られて。もう誰も味方がいません」
ミカコさんはつらそうに唇を噛みしめた。彼はミカコさんに「僕なんかとつきあっていて本当にいいの?」と聞いてきたことがある。それは彼女にとってせつない質問だった。
「年の差があるから本気じゃないと彼も思っていたみたいです、最初は。でも常に話し合って一緒に歩んできた感覚があります」
実は……と彼女は小さな声になる。
「彼の奥さん、1年前に倒れて今、リハビリ病院にいるんです。私、本気で奥さんの回復を願ってる。彼もそうだと思います。私だけがいい思いをしたいなんて思っていません」
彼の奥さんが元気でいる。だからこそ「この恋」が成立するという側面もあるのかもしれない。