生命保険

保険業界の不都合な真実

保険に明るい、業界の人が本当に入る保険とは?一般の人にはわかりづらい賢い保険の使い方を、自身も元営業マンとして保険会社で働いていた専門家が解説します。

執筆者:後田 亨

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私事ですが、ある企業の方から「保険業界の不都合な真実」というテーマで講演依頼を受けたことがあります。すぐに浮かんだのは、保険会社の人たちが、一般個人向けの保険にあまり入らない事実です。
 

たとえば、一般の人が、保険会社の営業担当者に新規加入や見直しの相談をすると、医療保障・死亡保障・老後資金準備など、様々な目的に応じた保険加入を勧められると思います。

独身の人であれば、「医療保険」や「がん保険」で保障を持ちながら、「個人年金保険」などで資産形成も行うといった提案がなされるわけです。資産形成目的では、「外貨建て保険」の利用が推奨されることも多いはずです。

配偶者や子供がいる人の場合、これらの保険に加え、世帯主の死亡保障のための保険が提案されるでしょう。

しかし、私が知る限り、保険会社の内勤部門に勤務していて保険に明るい人であれば、多様な保険を利用するようなことはしていません。彼らの保険の利用法には3点特徴があります。

 

1.「終身保障」の保険に入らない

 
まず、一生涯の保障がある終身型の「医療保険」や「がん保険」への加入には消極的です。

一般の人が終身保障にこだわるのは、老後も保障が切れないことを評価しているからです。しかし、老後は各種の給付金支払いに該当する事態が発生しやすいため、安価な保険料で手厚い保障を持つのは難しくなります。
 
そこで、老後の医療費などは「健康保険と自己資金での対応が合理的」と考えているのです。健康保険には「高額療養費制度」があり、医療費の自己負担に上限があるからです。
 
自己負担限度額を自分の口座から出す場合、費用はほぼゼロですが、保険会社から相当額の給付を受けるには、保険会社の経費と利益も負担する必要があります。
 
したがって、終身保障のような長期に渡る保険の利用は避けることにしているのです。安心感などより「お金を用意する手段」として諸費用が高くつくことを問題視しているわけです。

 

2. 保険商品を利用した貯蓄や運用は考えない

 

2番目に、保険での貯蓄や運用にも否定的です。「お金の流れ」を知っているからです。たとえば、保険料を長期の債券で運用する商品では「保険会社に手数料を払って債券投資するような仕組みだから、直接、個人向けの国債でも買うほうが良い」と認識しています。
 
投資信託で運用する商品でも「保険会社に手数料を払って投資信託を利用するようなものなので、直接、投資信託に自己資金を投入するほうが有利」と考えているのです。わかりやすい論法でしょう。
 
円の金利が低迷し続ける中、推奨されている「外貨建て保険」での貯蓄・運用についても「為替リスクがあるので、外貨ベースでのお金の増え方はあてにならないし、営業担当者や代理店の手数料も高いので検討に値しない」と冷めた目で見ています。
 
外貨建て以外の貯蓄商品についても言えることですが、手数料が高いほど積み立てや運用に回るお金が減るのだから敬遠すべきだ、と見ているのです。
 
「保障と貯蓄を兼ねる」と案内される「終身保険」や「養老保険」に関しても同様です。これらの保険では、死亡保障にかかる費用が、積み立てや運用に回るお金を減らすので、貯蓄目的では利用しないのです。

 

3. 加入するのは「掛け捨て」の保険

 
3番目に、保険会社の内勤部門の人たちが愛用しているのは、社内で案内されている「団体保険」です。保障の対象は、死亡・入院・長期休業補償くらいで、特約はほとんどありません。また、1年更新で70代くらいまでの期間限定の保障となっています。

年齢別の料金表が掲載されたパンフレットを見て、各自が申し込むため、契約募集にかかる費用が少ないせいか、保険料も個人向け商品より安くなっています。さらに、各年度の決算で余ったお金の相当部分が払い戻しされるので、実質的な保険料はさらに安くなります。
 
まとめると、健康保険などの公的保障を土台に、一生涯ではなく期間限定で、わかりやすく安価な、いわゆる「掛け捨て」の保険だけを利用しているのです。保険料負担は年間でも数万円です。

彼らの選択に倣うと、「団体保険」を利用できない一般の人は、一定期間のわかりやすい保障内容、(掛け捨ての)安い掛け金など、団体保険と共通点が多い「都道府県民共済」を視野に入れると良いかと思います。
 
「都道府県民共済」の場合、年度毎の決算で余ったお金の90%超が「割戻金」として加入者に払い戻しされている事実もあります。
 
ある保険数理の専門家が「安い掛け金でよくやっていると思います」と評価していたことも付記しておきます。私も同感です。

※この記事は、掲載当初協賛を受けて制作したものです。
 
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