亀山早苗の恋愛コラム

14歳で見た衝撃の光景、実母との壊れた関係。そして彼を奪われて…

親子関係、家族関係が揺れている。一方で「家族なんだから、一度壊れてもやり直せる」という家族絶対幻想も生き残っている。だが実際に、関係が壊れたら他人より厄介なのが“家族”なのではないだろうか。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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実母に彼を寝取られた私

母に男を寝取られた

親子関係、家族関係が揺れている。一方で「家族なんだから、一度壊れてもやり直せる」という家族絶対幻想も生き残っている。だが実際に、関係が壊れたら他人より厄介なのが“家族”なのではないだろうか。

 

母に支配されてきた人生

「信じられませんよ。娘の恋人を寝取る母がどこにいます?」

吐き捨てるようにそう言ったのは、リョウコさん(32歳)だ。3年つきあって結婚するつもりでいた同い年の彼と母が関係をもっていることを知ったのは2年前のこと。

「母は当時51歳。私は母が21歳のときの子なんです。客観的に見て若く見えるし、なにより男好きのするタイプ。それは昔からわかっていたけど、いくらなんでも私の恋人を誘惑するなんて……」

ある日、母から言われたのだという。

「彼は浮気者だから、結婚しないほうがいいわよ」

絶対に裏があると思って聞き出したところ、母自ら「あんたの恋人に誘惑された」と告白した。それを彼に問いただすと、彼は泣きながら土下座したという。

「誘惑したのは母から。娘のことで相談したいと言って彼を酔わせ、自宅まで送っていって彼の部屋に上がり込んでのしかかったんだそうです。彼は酒の力もあって抑制がきかなかったと」

リョウコさんは涙ぐむ。そんな彼を許せるはずもなく別れを告げた。同時に母親にも絶縁宣言をしたが、母は「私が悪いんじゃない」と言い張った。

「殺意すら覚えました。父が生きていれば告げ口したいところですが、父は5年前に急逝している。それまでも母は男癖の悪い人だったんですけどね」

父は母より18歳も年上で、父が母にべた惚れしていること、母はとても子どもっぽいことなどをリョウコさんは子どものころから感じていた。

「母は私を完全に支配したがっていました。それは彼女自身が幼稚だったからだと思う。母親として自信がないから、私を完全に支配下におきたかったんでしょう。一方で、父に対しては常に女王様のように接していました」

大人になってからわかったことだが、父は母と知り合った当時、結婚していた。にもかかわらず母に惚れ込んでしまったため、父は母のためにすべてを捨てた。

「母の実家はけっこうお金もちだったらしいんですが、父はそれに頼ることなく借金して事業を始めて、そこそこ成功した。私が生まれて10歳になったところで、ふたりはようやく婚姻届を出したんだそうです」

母はリョウコさんに、さまざまな習いごとをさせた。スイミング、英会話、バレエ、ピアノ、書道などなど。小学生のころから家庭教師もついていた。それらの費用はおそらく母の実家から出ていたのだろう。父は母にべた惚れしながらも、どこか心苦しい生活だったに違いない。

「母は父をないがしろにしながら依存している。父はそんな母を受け入れることで自分の存在を確認している。そんな感じでしたね。もちろん子どものころはそんな認識はないから、友だちの家と比べて、なんだかヘンな両親、なんだかヘンな家庭だと思うだけでしたが」

中学は母の指示で私立を受験、みごと合格したが、母はそれで満足はしなかった。部活動は文科系にしなさい、寄り道はしないようにと口うるさく、毎日のように学校近くまで迎えに来た。

「うっとうしかったですね。学校も厳しかったし、毎日ゆううつでした。週に2回は家庭教師が来ていたし」

ところがこのころ、彼女はとんでもない光景を目にしてしまう。ある日、風邪をひいたのか具合が悪くなって早退したことがある。母に連絡するのもめんどうだったから、何も言わずに帰宅した。

「うち、一軒家だったんですが、私は当時、鍵をもたされていなかった。玄関のチャイムを押したんですが母が出てこない。裏のほうの両親の寝室へ回ってみたら、カーテンは閉まっているんですが窓がほんの少し開いている。鍵がかかっていないということですよね。そうっと隙間に指をいれてカーテンをよけてみたら、なんとベッドで母が家庭教師と絡み合っていたんです。しばらくそのまま見つめてしまいました」

14歳でのできごとだった。母への信頼が一気に崩れた。それ以上に目の前で繰り広げられているできごと、そして母の嬌声が耳について離れなかった。

それでも彼女はその日のできごとを母にも言えなかったし、もちろん父にも告げなかった。見てはいけないものを見てしまった、妙な罪悪感が彼女を襲ったという。

 

母への反発

その後、彼女は母に静かに抵抗した。学校近くに母が車を止めているのを知りながら、別の門から出てひとりで電車に乗ったりもした。そのたびに母は「心配したのに」と泣きわめく。

「高校は中学からの持ち上がりでしたが、駅で私服に着替えて映画を観たりアルバイトをしたり。結局、高校は勝手に中退しました。母は嘆いて1週間くらい寝込んでいましたが、そのとき私、初めて言ったんです。『私の人生に口出す権利があなたにあるの?』って。母は驚いたような顔をしていました。何のことだかわからない、私はあなたのために生きてきたのにと号泣していたけど、きっとわかったはずだと思う」

その後、彼女は高卒認定試験をクリアして大学へも行った。父に直談判して支援してもらいながら、ひとりで暮らすようにもなった。

母には引っ越し先を告げていなかったが、大学から帰宅する彼女を尾行してアパートを特定し、待ち伏せされたこともある。

「でも私は母を避け続けました。一方で父とは少し近づいていきました。父はおそらく母の浮気も知っていたと思います。『かわいそうな女性なんだよ』と母のことを言っていました。ただ、20歳の女性を妻にした父にも、責任があると私は感じていましたね」

就職したときも、母には知らせていないのに母は会社にやってきた。リョウコさんの上司にお菓子などを差し入れて「娘をよろしく」と頭を下げて回ったらしい。

「そんなこともあるだろうと上司には母のことを伝えておいたので、おおごとにはならなかったけど私としては腹立たしかった。とにかく私の人生にかかわらないでほしいと絶縁状を送りました」

5年前に父が亡くなり、母は彼女に実家に帰ってくるよう懇願した。だが彼女は帰らなかった。そして結婚したいと思う人が現れ、穏やかに温かく恋愛を育んでいたのだ。

「それなのに……。もう誰も信用できない。2年たっても私の心は石のように固くなったままです。こんなこと人にも言えない。あれから母には一度も会っていません。父の七回忌も行きませんでした。この先も母とは関わりたくない。それ以前にどうしたら自分の気持ちが柔らかくなって人を信じることができるようになるのか……」

一時は休職したが、今は仕事に復帰し、仕事だけに全力を傾けているリョウコさん。家族だからこそ逃れられない闇がある。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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