亀山早苗の恋愛コラム

誰からも絶賛される「完璧な男」が、結婚3ヶ月でむき出しにした本性

誰からも「おもしろい人」「親切な人」と称される人が、家庭では陰湿で暗いタイプだった、という話をときどき聞く。恋人がそういう男性だった場合、結婚前に気づかないこともある。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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結婚してから彼の外面のよさに気づいて

モラ夫

誰からも「おもしろい人」「親切な人」と称される人が、家庭では陰湿で暗いタイプだった、という話をときどき聞く。恋人がそういう男性だった場合、結婚前に気づかないこともある。

 

いつでも誰にでも親切な彼

30歳を前に、「どうしても結婚したい」と一念発起して婚活を始めたユリさん(35歳)。32歳のときマッチングアプリで知り合った2歳年上の彼と気が合い、2年つきあって結婚したのが昨年はじめ。

「どうしてこの人が今まで結婚していなかったのと思うくらい、親切でやさしい人だと思いました。つきあって半年くらいで私の親友3人に会わせたんですが、みんな『話題も豊富だし、適度にくだけているし、なによりいい人だね』と絶賛してくれました。気軽なイタリアンレストランで会ったんですが、店も手配してくれて、みんなの好きなもの嫌いなものを聞いてバランスを考えながら手早くオーダーしてくれて。飲み物があるかないか、料理が残っていないかどうか気にかけ、みんなに気を遣わせないようさりげなく全部調えてくれる。大勢で会ったのは初めてだったんですが、この人ならどこへ出しても恥ずかしくないと思いました」

その後、実家に連れていったときも親や弟から大絶賛。いつでも明るく社交的な彼に、ユリさんもどんどん惹かれていった。

「彼のひとり暮らしのマンションに行ったとき、たまたま近所の年配の女性に会ったんですよ。そうしたら彼、『〇〇さん、最近、膝は痛くない? 大丈夫?』と声をかけていて。女性も『いつもありがとうね』って。彼の人への接し方がとてもいい感じだなあと思いました」

会社員の彼は、営業部に所属。「宴会部長なんだよ」と本人は笑っていたが、結婚を決めてから同僚に会わせてもらうと、みんな「こう見えて、意外と仕事ができるんですよ、コイツは」といじられながらも愛され、慕われていることが感じられた。

「完璧でしょ、と感じていました。お互いに結婚式はどうでもいいよねというタイプだったので、両家の親きょうだいだけで食事会をし、あとは彼の知り合いがやっているレストランでパーティーをするという簡易式。お互いに仕事が忙しい時期だったので、新婚旅行は後回しにしました」

やっと引っ越して新居に落ち着いたのは1ヶ月後だった。平日は仕事優先にしようと話し合いもした。

「最初は楽しかったんです。週末はふたりで食事を作って一緒に食べて。近場の温泉に1泊旅行をしたこともありました」

彼の様子が少しおかしくなってきたのは3ヶ月ほどたったころだった。

 

家の中が荒れていて

あるとき、彼女が残業で遅くに帰宅すると彼はすでに自室にこもっていた。

「お互いに睡眠が大事だから、うちは最初から部屋を別々にしていたんです。彼が先に寝るときは、いつもリビングのテーブルにメモがありました。でもその日はなかった。しかも部屋が荒れていたんですよね。テーブルの上にはビールの空き缶が3本くらい置かれている。彼、家でひとりで飲むことはあまりないんです。一緒に食事をする週末に飲むくらいで。テレビの位置も若干、おかしかったので直そうとしたら後ろの壁がへこんでいる。これはヘンだと彼の部屋をノックしたんです」

返事はなかった。そうっと開けてみると、彼がこちらを睨んでいた。

「どうしたのと尋ねても何も言わない。なんだか怖くなってドアを閉めてしまいました」

翌朝、顔を合わせた彼に「おはよう」と言ったが彼は彼女を無視した。何があったのと聞いても返事はなかった。

「その晩、彼にどうしたのと聞いたら、『どいつもこいつも頭に来るんだよ』って。そんな言い方をする人じゃなかったのに……。それから彼は会社に対しても私に対しても、悪口雑言を口にするようになりました。私が片づけが苦手なことは彼も知っていて、自分がやるからいいと言ってくれていたのに、『片づけができないってことは頭が悪いってことなんだよ』と言ったり、『親のしつけが悪いんじゃねえの』と親のことまで持ち出したり」

ある日を境に彼の本性が出てきたと思うしかなかった。突然怒り出すので、彼女はビクビクしながら暮らすようになっていく。

「あるとき困り果てて、一度しか会ったことがないけど彼の妹に連絡を取ってみたんです。義妹は快く会ってくれて、『長年一緒に暮らしていないからわからないけど、確かに昔から外面はよかった。でも私はよくいじめられた』と。彼を理解するためにもっと教えてほしいと頼んだら、両親が彼に対して非常に厳しかったのでその反動からか、弟のことを自分よりもっとひどくいじめていた、と。抑圧されて育ってきてつらかったんでしょうね」

彼を理解しようとユリさんは努力した。外ではとても評判がいいのに、どうしてあなたは家ではこんなに荒れるのか、心に思うことがあったら話そうよと問いかけたこともある。私はあなたの味方だからと何度も告げた。

「それでも一度、私には本音をさらしてしまったせいか、家では自分を律することができないみたいで、何かあるとモノに当たったり私に暴言を吐いたりする。聞き流せばいいんですが、私だって仕事や人間関係でストレスがたまらないわけじゃない。一度、ふたりで食事をしながらワインを飲んでいたら、私の言葉に彼が過剰反応してワインをかけたんですよ。さすがに私も腹が立ってワインの瓶を彼に投げつけて応戦。そこからテーブルはひっくり返す、窓ガラスは割るで近所の人が警察を呼んで大変なことになりました」

それをきっかけに彼女はウィークリーマンションに避難。数日後に彼が謝りにきて自宅に戻ったが、結局は同じことの繰り返しになった。

「カウンセリングにかかってほしかったけど、それを言うと夫の機嫌が悪くなる。あげく洗濯物の干し方が悪いとか、皿の収納の仕方がいつもと違うとか、難癖つけられて。あげくいつも、『本当にしつけの悪い家だったんだね』と言うんですよね。それが耐えられなかった」

ある日、彼女は会社から近い場所にアパートを借り、彼が出社している間に引っ越しをすませた。もう戻らないと置き手紙を残して。

「彼からは電話やメッセージが頻繁に来ましたけど、無視していたら3日でやみました。その程度の執着だったんだなと思った。会社に離婚届を送ったら、署名捺印して会社に送り返されてきました。それで結婚生活は終わりです」

報告がてら会った義妹からは謝られたそう。

「ただ、義妹といえどもきょうだいではわからないこともあります。私だって結婚するまで彼にそんな二面性があるなんてまったくわからなかった。不運だったと思うしかないですよね」

昨年末には離婚したのだが、このコロナ禍を考えればそれが唯一の幸運だったかもしれないと彼女は言う。もしふたりとも在宅ワークになっていたら、もっとすさまじいことになっていたに違いない。

「次に結婚するときは、もっとよく見極めないと。でも彼みたいな人の本音を見極めるのは本当にむずかしいと思います」
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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