コロナも影響……未成年者の体重減少性無月経・妊娠相談の増加
妊娠相談や子どもの性犯罪被害の増加……周りの大人ができることは?
この時期には、10代の方からの性に関する相談件数が例年より増加したという報告も複数挙げられています。NPO法人が運営する妊娠相談窓口「にんしんSOS東京」には、3~5月の10代からの相談件数が前年の1.8倍寄せられたそうですし、赤ちゃんポストで知られる熊本市の慈恵病院も、今年4月に中高生から寄せられた妊娠相談窓口への相談が、過去最多の75件となったことを発表しています。実際に妊娠してしまったという相談もですが、「妊娠したかもしれない」という不安を抱えての相談が増えたのではないかと推察されます。
大人の目線からすると、学校が休校になることと性的トラブルは結びつきにくいかもしれませんが、家庭環境によっては、子どもたちにとって必ずしも家庭内が「安全で安心な場所」とはいえないケースもあります。学校という「逃げ場」が失われたことによって、例えばパートナーの自宅に身を寄せるしかなくなるなど、性的トラブルの面ではリスクが高くなる場合もあるのです。
増加傾向にある子どもに対する性犯罪……犯罪抑制・対策のためにできること
また、近年増加傾向にある子どもに対する性犯罪も深刻な問題です。休校やリモート学習などの変化も含め、子どもが一人で過ごす時間が長くなるような場合、性犯罪などから子どもをどう守っていくかも、できる限りの対策をしておくべきでしょう。最近では、シッター派遣会社の登録シッターによるわいせつ行為も、記憶に新しい事件だと思います。性犯罪によって子どもが受ける心身のダメージを考えると、犯罪の予防が何よりも重要であることは言うまでもありません。性犯罪はまだそれが犯罪であると理解できない年齢の子も被害を受ける可能性があるため、早い時期からプライベートゾーンについて教育することも有効と考えられています。子ども本人が何をされているかに気付ければ、性犯罪の抑制につながることがあるためです。性知識については、教育の現場だけでなく、親から子どもへ正しい知識や自分の身を守るために必要な行動を日ごろから伝えておくことは必要不可欠です。そのためにも、まず、親が正しい性知識を持っておく必要があります。
また、診療の現場で伺う過去の性的被害の事例からは、顔見知りや家族からの性被害を除くと、自宅以外のトイレやエレベーターは被害の現場となりうる可能性が高いと感じます。性犯罪は加害者に全面的に非があるのはもちろんのことですが、子どもが一人で公園の公衆トイレを使用したり、一人でエレベーターに乗ったりする機会を作らないといった配慮も、周りの大人にできる性犯罪対策の一つかと思います。
万が一性被害に遭ってしまった子へは、適切な心身のケアとサポートを
万が一子どもが性犯罪の被害に遭ってしまった場合、子ども自身が被害に遭ってしまった事実に気づいていなかったり、気づいていても加害者から口止めされていたりするケースもあり、家族であれ発見が困難なことも少なくありません。子どもの様子や言動が普段と異なっていたり、特定の場所や特定の人を急に怖がるようになったり、暗闇や体が接触することを極端に嫌がるようになったなどの「サイン」を見逃さないようにすることも重要です。また、日ごろから信頼関係を築けているかどうかが、いざという時に親に話してくれるかどうかのカギになりますから、常日頃から「あなたのことを気にかけていますよ」「あなたは大切な存在ですよ」というメッセージをしっかりと伝え続けておくのがよいでしょう。
性被害はあってはならないことです。しかしもし万が一その事実が発覚した場合は、各種相談窓口があります。ある程度若年の場合は、子どもの性被害に関する相談先として、子どもの人権110番やチャイルドラインなどが挙げられます。婦人科的診察も必要と考えられる場合は、性被害のワンストップセンターに相談することも有効です。万が一の場合はこれらの窓口も頼り、被害に遭ってしまった子どもの心身を適切にケアしていくことが大切です。
■参考
- チャイルドライン18さいまでのこどもがかけるでんわ(チャイルドライン)
- 子どもの人権110番(法務省)
- 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター一覧(男女共同参画局・内閣府)