ピルは太るから飲みたくない? 診療の場でも聞くピルの誤解
ピルは使ってみたいけど、太りそうで心配……。
実際に婦人科でも「ピルを服用したら体重が増えてしまって……」と相談される方もいます。これは医学的に本当のことなのでしょうか? 今回は「ピルは太る」説の真偽を解説します。
「ピルを飲むと太る」は誤解! 体重増加は500~1000g程度で頻度1%
まず最初に結論からですが、「ピルで太る」は誤解です。ピル服用による体重の増加は「500~1000g程度」というデータがあります。また、体重増加の頻度はわずか1%とされているため、報告されているデータからは、決してピルを飲んだからといって多くの人が目に見えて「太る」わけではないことがわかると思います。ピルの副作用として勝手に脂肪が蓄積されてしまうようなことはありません。一方で、ピルを服用することで女性ホルモンは増加します。そのため多少ですが、体内の保水力が高まるため、浮腫(いわゆる「むくみ」)を感じる方はいるようです。報告されているデータ以上に「太った」「体重が増えた」といった声を聞くことが多いように感じるのは、このためかもしれません。
体重が少し変化した場合も、脂肪の増加によるものではなく、体の保水力が上がった分の増加とも言えます。体の保水力は肌の艶やハリにも繋がるものですので、美容面で考えるとマイナスなことばかりではないのです。それでも余分に水分が溜まってしまい、浮腫を感じる場合は、塩分を取り過ぎないなど食生活の工夫をするといいでしょう。
また、ピルの服用開始時に食欲が増すことがあります。ピルが原因での体重増加ではないかもしれませんが、活動量が変わらずに食べる量が増えれば、もちろん体重が増えてしまうので、食欲の変化などが気になる場合は、体重測定を日課にし、積極的に体を動かすようにするのもよいかもしれません。
「太るピル(むくみやすい)」「太らないピル(むくみにくい)」はある?
「ピルで太ることはない」とわかっても、少しでもむくみにくいピルを選びたいという方もいるかもしれません。脂肪による体重増加が起こるのではなく、むくみやその他の原因だとしても、いわゆる「太るピル」「太らないピル」を知りたいという声はよく聞きます。一言でピルと言っても、低用量ピルである「ファボワール」「アンジュ」「トリキュラー」「ラベルフィーユ」「マーベロン」「ルナベル 」、超低用量ピルとも呼ばれている「ヤーズ」、中用量ピルである「プラノバール」など、種類は様々です。低用量ピルと中用量ピルでは、ホルモンの含有量に違いがありますし、また同等の容量でも配合されるホルモンの種類が異なります。
そして、これらの中の特定のピルで、多くの人がむくみの副作用が出やすいものはありません。「太るピル」「太りにくいピル」を分けることはできないということです。人によって「この種類のピルはむくみやすいが、こちらのピルはむくみにくい」というように、個人差があります。
そのため、いずれかのピルの副作用としてむくみを感じる場合は、他の種類のピルに変更することで、むくみが出にくくなることがあります。
それでも太りそうで不安? まずは「自分に合うピルを見つける」ことを目標に
ピルと体重増加の根拠は認められないという結論が出ていますので、基本的には心配は不要です。それでも漠然と心配な方や、万一、ピル服用で気になる浮腫や、食欲増進などの変化があった方は、まずは主治医に相談しましょう。対処法を聞いたり、別の種類のピルに変えたりと、前向きな工夫ができるはずです。大切なのは、一人で不安を抱えたままにせず、適切に医師に相談し、自分に合うピルを見つけていくことです。