亀山早苗の恋愛コラム

在宅勤務への無理解は仕方ない? 業務時間を悪意なく奪う70歳義母

新型コロナウイルス感染問題により、家族とともに過ごす時間が増えて、それまで見ないですんできた問題が一気に噴きだしている家族も少なくない。70代の義母に「在宅勤務」の意味をわかってもらえず、四苦八苦している女性がいる。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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私が在宅勤務になったとたん、ワガママを言う義母

在宅勤務無理解

新型コロナウイルス感染問題はいまだ解決しない。帰省を控え、夏休みを漫喫できなかった人も多いだろう。家族とともに過ごす時間が増えて、それまで見ないですんできた問題が一気に噴きだしている家族も少なくない。70代の義母に「在宅勤務」の意味をわかってもらえず、四苦八苦している女性がいる。

 

昨年末から同居を始めて

「偶然なんですが、去年の終わりから義母と同居をすることになりまして」

そう言うのはキヨコさん(48歳)だ。徒歩5分ほどのところでひとり暮らしをしていた義母だが、昨年秋に転倒して骨折、これ以上、ひとりで暮らすのはむずかしいと判断して同居に踏み切った。

「夫は母ひとり子ひとりで育ったんです。夫も義母も私も、同居しないほうが平和だと思っていたので別居してきましたけど、いずれは同居も視野に入れていました」

ひとつ年上の夫とは結婚して20年、高校生と中学生の子どもがいる。現在、義母は75歳。同居するにあたっては、3LDKのマンションをリフォームしなければならなかった。夫婦が使っていた大きめの部屋を2つに分けて子どもたちに1室ずつ。子どもがそれぞれ使っていた部屋を、ひとつは夫婦が使い、もうひとつが義母の部屋となった。

「みんなそれぞれ部屋が狭くなったけど、しかたがない。私もずっと仕事をしてきているので、子どもたちは小さいころよく義母が預かってくれて慣れている。ただ、私も含めて同居となれば話は別。義母が来た日に、とにかく揉めずに仲良くやっていきましょうと話しました。義母も食費を払うし、自分でできることはやるからと言ってくれました」

正月を5人で迎え、同居も悪くないとキヨコさんは思っていたという。義母はリハビリもうまくいっていたし、義母にとって地域生活は変わりないので、友人知人との関係もそのまま維持することができた。

「私が残業のときは、前の日から夕飯の準備などをしていたのですが、義母が『そのくらい私がやるから、あなたは少し休みなさい』と言ってくれて。少し義母に甘えては感謝する。それでうまくいっていたんですよ」

事情が変わったのは3月半ばから。そう、新型コロナウイルスですべてが変わってしまったのだ。

 

家族それぞれがストレスを抱えて

3月半ばからキヨコさんは在宅勤務となった。夫はライフラインに関わる仕事をしているため、勤務状態は以前と変わりない。しかも多忙になって残業も増えているという。

「結局、夫が早朝に家を出ると、あとは義母と休校になった子どもたちと私、4人がずっと家にいるわけです。しかも私は今まで同様、9時頃から仕事を始めないといけない。まずはどこで仕事をするか。最初はリビングのテーブルにパソコンを置いてやっていたんです。そうすればランチの準備もしやすいし。だけど義母は以前と同様、昼間はリビングでテレビを観たいんですね。しかも外出できなくなって狭い自室にいるとうんざりするんでしょう。しかたがないので、私が狭い夫婦の寝室で仕事をするようになりました」

子どもたちの手前もあって、9時から昼まではそれぞれ仕事と勉強、午後も1時過ぎから子どもたちは4時頃、キヨコさんは5時過ぎまで仕事とスケジュールを決めた。

「子どもたちは学校からの指示もあって、それなりにスケジュールを組んでやっていたようですが、私はリモート会議があったり電話でのやりとりがあったり。しかも夕方になると突発的な仕事を頼まれたりと、会社にいるときより大変でした。当然ながら、在宅勤務でもそれなりに仕事の成果は求められるんです」

ところが2週に1度の出社以外、キヨコさんが家にいるので、義母にとっては在宅勤務がまったく理解できなかったようだ。11時くらいになるとノックもせずに義母がドアを開け、「今日のお昼は何にする?」と話しかけてくる。電話中のときはイライラした。

「何度言っても義母はノックしてくれないんです。だから仕事を始めるときは、ドアに『仕事中。緊急時以外、声をかけないで』と書いた紙を貼っておきました。子どもたちは何かあってもLINEで連絡してくるので助かりますが、義母はスマホももっていないし、彼女は彼女で『家にいるんだから声をかけたっていいじゃない』ということなんでしょうね」

家にいて仕事をするということが頭ではわかっていても、実際にキヨコさんが家にいるのを見ると、「お茶でも飲まない?」「今日の夕飯、何にする?」と日常的な会話を求めてしまうのだろう。

「しかも家にいるのに私が冷たいと夫に言いつけたみたいです。私も夫には、在宅勤務だから私の体は家にあるけど会社に行っているときと同じように仕事をしなければならないと説明したんです。でも夫も夫で、『まあ、それでも家にいるんだから、少しはおふくろの相手をしてやってくれよ』って。そんなことできるわけないでしょと言ってもわかってくれない」

6月に入ると週に1度の出社になったが、義母の態度はほとんど変わりがない。それどころか今まではひとりでいっていた病院も、ついてきてほしいと言い出す始末。

「7月から平日は出社にしてほしいと会社に頼んだんですが、うちの会社はなぜか非常に社員思いで(笑)、どこの部署も極力、出社を控える方針でいくらしい。だから私もいまだに週2日出社なんです」

義母とのささやかなバトルは現在も継続中で、ふいにドアを開ける義母に対して、キヨコさんのストレスは増すばかりだ。

「わかってくれない夫にいちばん腹が立ちますけどね。こうやって夫婦関係は壊れていくんだろうなと実感しています」

どこの家庭も、コロナ禍でストレスがたまっているのではないだろうか。「家族だから乗りこえられる」時期はとうに過ぎているのかもしれない。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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