ポビドンヨードでコロナが消える?

ポビドンヨード・イソジンのコロナへの効果

ポビドンヨードのうがい薬使用で「感染拡大を防止」できる? 正しく理解することが大切です

2020年8月、大阪府の吉村知事が「ポビドンヨードを含むうがい薬を使用することで唾液中の新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)量が減少し、他人にうつしにくくなる可能性がある」と発表しました。
 
この発表があった時、私は調合し終えた漢方薬を患者さんにお渡ししている最中でした。この方がスマホを見ながら急にソワソワしだしたのです。どうかされましたかと伺うと「知人から早くイソジンを買ってきてと連絡が入った」「ドラッグストアがちょっとしたうがい薬パニックになっている」と教えて頂きました。
 
この話を伺ったときは詳しい内容が分からなかったこともあり、小規模な迷惑メールレベルの内容だと感じました。しかしながら、吉村知事がズラッとうがい薬を並べながら会見をしている動画を見て「あぁ、まずいことになるな……」と強く感じました。その理由については後述したいと思います。
 

ポビドンヨードとは……ウイルス、細菌、真菌に有効なヨウ素系消毒剤

まずは会見で挙げられたポビドンヨードについて簡単に解説します。ポビドンヨードは非常に有名なヨウ素系消毒剤であり、うがい薬だけではなく皮膚表面の消毒にも使用されます。一方で金属を傷めてしまう性質があるので器具への消毒には向きません。
 
透明なアルコール系消毒剤と違って独特な茶褐色の液体なので、塗布後に消毒済みの範囲が一目でわかるので手術の際などは便利です。
 
肝心の消毒剤としての実力ですがウイルス、細菌、真菌に幅広く有効です。芽胞(がほう)と呼ばれる一種のバリアを形成した細菌に対してはやや不向きですが、使い勝手の良い消毒剤といえます。
 
ちなみに私はアルコール系消毒剤が体質的に苦手なので、注射の際にそれを申し出ると、大体このポビドンヨードのものに切り替えてもらえます。
 

ポビドンヨードとイソジンの違い……成分名とよく知られたブランド名

凝り返し「ポビドンヨード」と書いてきましたが正直、この名前を聞いたことのある方は少ないのではないでしょうか。『イソジン』と聞けば多くの方がすぐに茶褐色の液体とうがいをしているカバを思い浮かべるでしょう。
 
広く知られている『イソジン』はあくまでも米国のムンディファーマが保持する「ブランド名」であり、成分名ではありません。したがって、イソジンブランドを冠していても有効成分としてポビドンヨードを含まない製品もあります。つまり、イソジン=ポビドンヨードではないのです(イソジン製品群につきましてはこちらのリンクを参照)。
 
なお、有名なうがいをしているカバのビジュアルについては訴訟と和解を経てその権利を明治が保持しています。結果としてムンディファーマの製品パッケージにはうがいするイヌが登場しています。
 

ポビドンヨードはウイルスに効果的? 予防・治療効果は期待できず

やや話が脱線してしまいましたが、ポビドンヨードは既出の通り、非常に広範囲のウイルスや細菌に有効な消毒剤です。したがって、もし口腔内に新型コロナがいた場合、ポビドンヨード含有のうがい薬でうがいをすることで、口腔内のウイルス量を低下させることは可能だと考えられます。
 
口腔内のウイルス量が低下すれば咳や発声時に飛沫と共に拡散されるウイルス量も低減できますので、そういった意味では、感染拡大の「防止」に貢献できるのかもしれません。
 
一方で「予防」や「治療」は期待できないと個人的には感じます。その理由としては、あくまでも口の中のうがいですので、鼻や目から侵入するウイルスには無力であり予防困難です。くわえて、消毒の有効範囲はあくまでもポビドンヨードが触れる皮膚や粘膜です。肺などに深く侵入したウイルスに有効とは考えにくいのです。
 
実際に吉村知事の会見でも「予防」や「治療」については否定しています。あくまでもポビドンヨードを用いたうがいで「すでに新型コロナに感染している方」の「口腔内にのみ存在する」新型コロナウイルス量を「減少させる可能性」があるというものです。
 

ポビドンヨードの副作用・リスク……特に甲状腺疾患のある方は注意

冒頭で「あぁ、まずいことになるな……」と感じた理由は2つあります。ひとつは甲状腺機能に対する副作用の懸念がある点。もうひとつは誤解による誤った使用です。
 
まず副作用についてですが、長期間にわたって使用すると血中のヨウ素濃度が上昇して甲状腺中毒症を起こす危険性があります。あくまでも長期連用の場合ですが、甲状腺に関連する基礎疾患(バセドウ病など)がある方はやや注意が必要です。
 
他にも妊婦の方の場合、膣内洗浄にポビドンヨードを用いることで、新生児に甲状腺機能低下症が起こる可能性もリスクとして挙げられます。
 

副作用よりも危険な間違った服用……ポビドンヨードの内服は非常に危険

また、個人的には適正使用でも起こってしまう副作用よりも、誤解により誤使用をより懸念しています。具体的には本来の使い方である「うがい」ではなく、故意的に飲み下してしまう方が出てくる可能性です。
 
今回のような情報に尾ひれがついて「ポビドンヨードで新型コロナが治る(または予防できる)」「身体の中の新型コロナを消毒できる」といった誤解が広まると、内服すれば口内だけでなく、体内のコロナウイルスにも効果があるのではないかという発想をする方も出てくるかもしれません。これは絶対に危険なので、飲み込んではいけません。

ポビドンヨードは刺激が強いものですので、飲用した場合は消化器、さらに誤嚥した場合は肺にダメージを与える可能性が高いです。そもそもウイルスや細菌を殺すほどのものなので当たり前ではあります。手術時に使用する際も皮膚炎を起こさないように長時間の接触は避けることになっています。

繰り返しになりますがポビドンヨードがそのまま全身に吸収されて、消毒作用を身体の内部で発揮することはあり得ません。絶対にポビドンヨードを含むうがい薬を飲んではいけません。
 

最後に……ドラッグストアの現状と医療現場の懸念に理解を

本記事を執筆している現段階(2020年8月7日)ではポビドンヨード含有のうがい薬が新型コロナに対してどのように有効なのかまだ判然としません。その意味でも誤解を招きかねないセンセーショナルな会見の仕方はとても、とても残念でした。
 
実際にドラッグストアの棚からはうがい薬が消え去っているのを目にしました(なぜかポビドンヨードを含まないものも「蒸発」していました……)。くわえて手術時の使用など、本当に必要な医療現場に供給できなくなる懸念もあります。
 
店内に殺到して3密を形成してしまうことの方が新型コロナ感染の危険性を高めることは言うまでもありません。まず私たちができることは抵抗力を落とさないための睡眠時間の確保、そして手洗いです。
 
ドラッグストアをはしごしたり、夜遅くまで通販サイトでうがい薬を検索するのは本末転倒です。あせらず、バタバタせずに泰然自若で参りましょう。


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