なぜ酢豚にパイナップル?
「酢豚にパイナップル」入れる? 入れない?
<目次>
昔のパイナップルは高級品……要人をもてなすためのアレンジか
酢豚が生まれたのは約400年前の上海。1600年頃なので、日本では徳川家康が江戸幕府を開いたころのお話です。上海といえば、中国国内でも有数の海岸沿いの大都市。中国四大料理(諸説ありますが、一般には北京料理・広東料理・四川料理・上海料理といわれています)のひとつである「上海料理」の故郷ですね。上海は、海沿いにあるので交通の便がよく、古くからヨーロッパなどから珍しい品が届く場所でした。品物が届くということは、要人も上海に来るということ。
上海人たちは、このヨーロッパからの客人をもてなすために、「どうしたら高級感を出せるか」「ハイカラな印象を与えられるか」と苦心したようです。そこで上海人たちは、当時1個90万円程の高級品のパイナップルを料理に使えないかと考えたようです。そして、中国にあった「古老肉」という料理にパイナップル(糖醋)を入れ、「糖醋肉」という新しい料理を作って提供しました。この料理がのちに日本に伝わり、「古老肉」と「糖醋肉」の両方が「酢豚」と呼ばれるようになったようです。
そして高級感の演出だけでなく、「酢豚にパイナップル」には、実は栄養学的なメリットと調理学的なメリットもあると思われます。
「酢豚にパイナップル」の栄養学的な理由・メリット
酢豚にパイナップルを入れる栄養学的な理由は、大きく2つあります。- 肉を柔らかくする
- 肉を体内で消化しやすくなる
ただし缶詰のパイナップルではダメで、「生のパイナップル限定」です。生のパイナップルには「ブロメライン」というたんぱく質を分解する酵素が入っています。肉を加熱する前にパイナップルと豚肉が触れると、ブロメラインが豚肉のたんぱく質を分解するため、肉の組織が柔らかくなるといわれています。そして食べた後も、酵素が働いている間は肉の消化が進むので、体内でも肉の消化が進みやすくなります。「肉を食べても胃もたれしづらくなる」と考えるとわかりやすいかと思います。
「酢豚にパイナップル」の調理面からの理由・メリット
「酢豚にパイナップル」の調理面からの理由も大きく2つあります。1つは上とかぶりますが、- 肉を柔らかくする
- 酢の酸味にパイナップルの甘味が加わり、甘味と酸味のバランスがよくなる
1は栄養学的メリットと同じで生パイナップル限定の効果です。そして2は「酢豚」というくらいですから、酸っぱい味付けです。ここにパイナップルの甘味が加わることで甘さと酸味のバランスである「糖酸比」が良くなることを考えてのことでしょう(その点では「おかずは甘くないほうがいい」という人には、パイナップルなしの方がよいのでしょう)。
生のパイナップルと缶詰のパイナップルの違い・メリット・デメリット
生と缶詰のパイナップルは栄養面では違います。上述の通り、栄養面・調理面のメリットで考えると、生パイナップルの方がよいでしょう。しかし価格や簡単に食べられる手軽さでは缶詰の方が優れており、肉の硬さや消化云々を気にせずにただ味(糖酸比)だけを求めるなら、缶詰でも十分です。酢豚だけではないパイナップルをあわせる肉料理
これらのメリットがあるからか、パイナップルが入っている肉料理は意外と様々です。ハンバーグに乗せたり、豚肉、鶏肉と一緒に煮たりと、酢豚以外にもさまざまな料理が見つかります。パイナップルと肉をどちらも生の状態であわせることで肉は柔らかくなるのですから、その点では肉料理全般に合う、ともいえます。一方でパイナップルと肉を材料に使うと、どうしてもワイルドな印象の料理になってしまいます。日本人が昔から食べていた料理とは大分かけ離れた味わいのため、人によっては違和感がぬぐえないかもしれません。
酢豚のパイナップル、苦手な人はさりげなく避けるのが正解!
こう言っては身も蓋もありませんが、外で食べる中華料理はしばしば数人分が大皿で提供されます。良し悪しですが、量を調整するだけでなく、好きな具を選んで取ることもできます。酢豚の中のパイナップルは「何が何でも食べなければ栄養不足になる」というようなものではありません。自分の皿に取り分ける際にはさりげなく、パイナップルが入らないように気を付けていただけば大丈夫だと思います。酢豚のパイナップルが大好きな人もいますので、食事の席で文句や批判を口にして、論争にならないようご注意を(笑)。
■参考サイト
- なぜ酢豚にパイナップル!?中国4千年?の歴史とパイナップルのヒミツ(ヤマサ)
- 中華街の酢豚にパイナップルが入っている割合は!?(はまれぽ)
- なぜ?酢豚にパイナップルが入っている理由(クックパッド)
- アラカルト紹介(肉料理編)(菜香新館・神奈川)
- 酢豚の由来とレシピの紹介(福新楼・福岡)
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