防災

避難所へ行かない、「分散避難」や「車中泊」という選択肢

もしも自宅が被災してしまったら、まず頼るのは地域の避難所です。しかし、コロナ禍の今、「三密」になりがちな避難所には行きたくないという人が多くいるでしょう。もし避難所に行かないという選択をとるとしたら、どうしたらよいのだろうか。

和田 隆昌

執筆者:和田 隆昌

防災ガイド

感染症が蔓延しやすい避難所は本当に安全な場所?

「三密」になりがちな避難所は本当に安全な場所?

「三密」になりがちな避難所は本当に安全な場所?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が終息していない今、「三密」になりがちな避難所には行きたくない、と考えている方は多いと思われます。

実際に過去の東日本大震災や熊本地震の避難所では、開設当初からインフルエンザやノロウイルスなどの発症者が続発している現場を見ています。

これまでの避難所では、体育館などの密閉された空間に、多くの人が詰め込まれ、わずか1畳程度のスペースを与えられ、密集した場所で雑魚寝しているような環境でした。その中に一人でも感染力の強いウイルスをもった患者がいれば、あっという間に周囲に感染させてしまうことでしょう。

政府はこれを防ぐために自治体への指針として、ホテルや旅館、親類・知人宅への「分散避難」を奨励しています。さらに人によっては「車中泊」を選ぶ人も多いでしょう。テントなどキャンプ道具を利用するのも一つの選択肢といえます。
 

まずは地域の避難所の場所や感染対策の確認を

まず、自宅が地震や水害が発生した際、避難所を頼る可能性があるかどうかを確認しましょう。また自分が入所するその避難所が、どのような感染対策を行っているかも確認しておきたいところです。

現実的には、入り口付近での体温計測や手指の消毒程度しか対策は出来ないと思いますが、避難所によっては、飛沫感染を防ぐために収容者同士をパーテーションでさえぎったり、室内にテントを設置して、家族ごとに部屋を作ったりするなどの対策が行われています。

自治体が、避難所の密度を下げるために、近隣のホテルや旅館などを借り上げてくれれば良いのですが、予算的にも設備的にも全ての地域で出来ることではありません。

かつて、熊本地震の発生した益城町に地震発生直後に現地入りした際、避難所として用意していた体育館が被災してしまいました。代わりに開設された避難所の人口密度が増し、入り口付近や建物の周囲にまで被災者が溢れるような状況でした。

さらに避難所の駐車場および建物の周辺には、車中泊をする車が大量に集まってきていました。車中泊は感染症対策に有効な部分もありますが、狭い車内での生活は「エコノミー症候群」と呼ばれる急変をもたらす血栓症の原因になる可能性があります。ストレッチなどの運動をまめに行い、十分に水分をとるなどの予防策が必要になります。
 

避難所以外に多くの選択肢を用意して安全を図ろう

車中泊をする場合、エコノミー症候群の予防策を

車中泊をする場合、エコノミー症候群の予防策を

そもそも、自宅が被災せず、安全を確保できれば避難所には行かないで済みます。しかし現実はそうはいかず、被災により倒壊してしまったり、水没してしまったりした場合、全てのインフラが止まってとても住んでいられない、二次災害の危険が身近に存在する、など避難せざるを得ないケースいくつも考えられます。

熊本地震の際には、メーカーの協力などもあって「テント村」による避難所施設も設定されていました。ただし避難生活が長期にわたるような状況では、屋外での生活は不便なことも多くなります。

安全な避難所や復興支援住宅など、自治体の示す支援策への情報収集は常に行っておくことも大切なことです。避難所が定員オーバーで入れなかったという例は、昨年の台風などでも報告がありました。

親類宅や友人宅など、一時的に身を寄せることのできる安全な場所を自宅以外に確保しておくことも大切です。避難所だけが避難する場所ではありません。家族の安全を図るためには、いくつかの選択肢を用意しておくとも必要でしょう。
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