株価急落の影響を大きく受けた家計の金融資産
日本銀行が四半期毎に公表する資金循環統計によれば、2020年3月末時点で家計が保有する金融資産は1845兆円となりました。過去最高だった2019年12月末と比較すると金額で62兆円、割合でいえば3.2%減少しました。減少額が大きいのでピンとこないかもしれませんが、62兆円といえば2018年度の1年間の日本国の税収と概ね同じ金額。その金額がわずか3カ月の間に消えてしまったのです。コロナショックによる株価急落の影響を受けて家計の金融資産は減少
1年前の2019年3月末の1855兆円と比較すると0.5%の減、金額でいえば10兆円の減少です。年度末ベースで家計の金融資産が減少するのは、リーマンショックの2008年度以来実に11年ぶりのことです。
近年、家計の金融資産は世界的な株価の上昇を背景に増加傾向が続いていましたが、コロナショックによる株価急落の影響をモロに受けた形になってしまいました。ただ、株価は2020年3月中旬に底入れ後急反発していることから、6月末の金融資産はかなり回復していると推測されます。
現金・預金を1000兆円貯めている
では、家計が保有する金融資産の中身を見てみましょう。金融資産が大幅に減少した要因はコロナショックによる世界的な株価の急落です。このため大きく残高を減らしたのは「株式等」と「投資信託」です。株式等の残高は178兆円で、保有する金融資産全体の9.6%です。昨年12月末は212兆円ありましたから、3ヵ月で約16%の減少、金額にすれば34兆円もの減少です。
投資信託も昨年12月末の74兆円が63兆円となり、3ヵ月で約15%、金額で11兆円の減少となりました。金融資産全体に占める投資信託の割合は3.4%、株式と合わせても13%しかありません。老後資金2000万円問題が昨年話題になりましたが、家計の金融資産から判断すると貯蓄から資産形成に依然として動いていないと思われます。
株式等と投資信託を合わせると減少額は45兆円となり、年間の減少額の約73%は株価急落が原因であることがわかります。2020年3月末の日経平均株価は昨年末と比較して2割ほど下落していることから、その影響が出たことになりますが、分散投資などが行われていると推測される分、株価指数よりも減少率は小さかったようです。
保険・年金・定型保証のうちの保険も昨年末の375兆円から、3月末は371兆円と4兆円、率にして0.8%減少しています。長きにわたり増加が続いていた保険ですが、3ヵ月前、1年前と比較して共に減少したのは久しぶりです。一過性なのか、それとも減少が続くのか注目したいです。減少が続くとすれば、コロナショックで収入減となり保険を継続するのが難しくなっているのかもしれません。それでも、保険が金融資産全体に占める割合は2割以上をキープしています。
家計の金融資産の過半を占める現金・預金は、昨年末の1008兆円からやや減少となりましたが、1000兆円の大台をキープしています。コロナショックによる収入減などを背景に預金の取り崩しがあったことが減少の要因と推測されます。昨年末から残高は減少となりましたが、1年前(対前年比)の2019年3月末と比較すると2.1%も増加しています。対前年比の増加は約12年近くも続いています。現金・預金が金融資産の過半を占めるという状況は当面続くと思われます。
ちなみに企業が持つ現金・預金の2020年3月末の残高は、前年比で4.5%増加して283兆円と過去最高となりました。
コロナショックで家計にとって厳しい状況が続くと予測されますが、家計管理の舵を上手に切って家計の財務状況を強固にしましょう。同時に第2波、第3波が予測されていることから、現金・預金を厚めに確保して備えておく必要もあるでしょう。
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