不倫は先にバレたほうが負けなのか!?
夫婦それぞれが不倫をしているケースは少なからずある。どちらかがバレたとき、もう片方が「自分もしてる」とは言わないものだ。結局、バレたほうが経済的にも痛手を被ることになってしまう。男と女はどこまでも化かし合いなのだろうか。
夫から突然、離婚してほしいと言われて
「一昨年の秋のことでした。仕事が忙しくて夫の誕生日にプレゼントを買い損なってしまったんです。レストランは予約していたので、食事をしながら『プレゼント、改めて贈りたいんだけど何がいい?』と聞いたら、『離婚』と言われて。あのときは食べていた肉を飲み込むほどびっくりしました」
顔をしかめながらそう言うのは、キミカさん(40歳)だ。当時、結婚して6年たっていた。何がなんだか理解できずにいると、夫は「子どもができたんだ」とぽつり。
「実は私たち夫婦には子どもがいなかったんです。原因は不明でした。不妊治療も少ししましたけど、私は仕事を続けたかったし、ハードな治療は時間的にも精神的にも経済的にもむずかしかった。結局、自然にまかせようということになったのがその1年前。ちょうどそのころ知り合った女性と夫は恋に落ちたんだそう。それで子どもができちゃったんですね」
自分は妊娠できなかったのに、夫は他の女性との間に子どもを作った。その事実の前に、キミカさんは言葉が出なかった。
「何重にもきみを傷つけていると思うと、夫はひたすら低姿勢でした。子どもができないこと以外は、夫婦としてうまくいっていると思っていたから、夫はそうではなかったんだということも衝撃でしたね。ただ、衝撃を受けているだけではどうにもならないと、まるで仕事のように頭がフル回転しました」
そうですかと黙って離婚するわけにはいかない。そう感じていた。妻の気持ちを見通したように、夫は金銭的な話を始めたという。
「結局、気持ちをなだめるためにはお金しかないんですよね。夫が出した条件は、ふたりで買った自宅マンションはそのまま私が住む。ローンは折半だったので夫は自分の分は払い続ける。さらに慰謝料として500万円だす、と。子どももいないし私も働いているし、相場的にはいいほうなんだろうなとぼんやり思ったのを覚えています。だけど私の口から出たのは、『倍の1000万円ちょうだい』でした」
500万円で結婚を売り渡すのがシャクだったと彼女は言う。夫はしばらく考え込んでいたが、「ちょっと相談してみる」と言った。不倫の彼女に相談するのだろう。キミカさん、さらに頭に血が上ったそうだ。
自分にも恋人がいたのだけれど
だが驚かされたのは、その後のキミカさんの言葉だ。「私にもつきあっている人がいたんですよ、実は」
こちらの頭がこんがらがってしまう。夫の不倫に打ちひしがれていたように見えたのは、まやかしだったのか。
「私は離婚するつもりなんてまったくなかった。子どものこと以外、結婚生活には満足していましたから。ただ、恋愛は結婚とは違うので、私には刺激的な恋が必要だっただけ。夫が離婚なんて言い出さなければ、私は夫が不倫していることにも気づかなかったと思います」
自分も不倫しているのに、夫からの離婚申し出に1000万円を要求したのである。
「夫の不倫は結局、あちらとの結婚につながる不倫だったわけですよね。私のはあくまで恋愛。家庭を壊す気はない。罪の重さが違うと思ったんです」
慰謝料は結局、700万円で妥協した。夫は残りの住宅ローンを一括で払ったという。どうやら再婚する彼女の実家がかなり資産家だったようだ。
「なんだかモヤモヤしましたけどね……。彼女が本当に妊娠しているのか私は知らない。もしかしたら夫が彼女に惚れ込んで一緒になりたくてついたウソだったのかもしれないなんて思ったりもしました」
それでも、彼女も新しい人生を歩んでいかなければならない。その後、不倫していた彼に離婚したということだけは伝えた。慰謝料のことはもちろん伏せた。すると彼は、「じゃあ、オレも離婚しようかな」と言い出したという。
「それを聞いて、うわ、勘弁してと思って。私はやはり彼と結婚したいわけではなかったとはっきりしました。しかも結婚していたからこそ、彼との恋愛も成立していた。離婚したからには恋愛も終わりだったんです」
このあたり、結婚と恋愛を分けている心理、そして関係性や心のバランスを取るために両方が必要だったことがよくわかる。
離婚が成立したのが昨年の春、そして秋には不倫の彼とも別れた。
「ひとりになってスッキリしました。元夫がきちんと再婚したかどうかは知りません。冷静に考えると、自分も不倫していたのに夫のほうが先に言い出したから儲かってしまったことに今は悪かったという思いもあります。あのときはとにかく腹が立ったしショックだったし、お金にしか変えられないならたくさんもらってやるとしか思えなかったけど」
1年に渡る人生の転換期を経て、彼女は5キロ痩せ、それでも前を向いてしっかり生きていこうと思っていると少し笑みを見せた。