だらだらと腐れ縁? 断ち切りたいけど断ち切れない彼との関係
形としては友だちでもなく恋人でもなく、ただ、心の中では友だちでもあり恋人でもあるような「腐れ縁」的な彼との関係。すっきりしたいのは山々だけど、他に誰かいるわけでもない。そんな悶々としている女性の心中とは?
告白してはフラれ続けて
「年に1度、彼に告白するのが行事みたいになっているんです」
苦笑しながらそう言うのは、会社員のマヤさん(32歳)だ。大学時代からの友人であるタクトさんのことが本当に好きだと気づいたのが7年前。
「当時つきあっていた人に浮気され、我慢できずに別れたときタクトを呼び出して飲んだんです。酔ってタクトにもたれかかり、あ、実は私、この人のことが好きなんだと気づいた。だから『私が好きなのはタクトだよ。つきあってよ』と言いました。そのときは軽く流されましたね」
そのころタクトさんにもつきあっている彼女がいたのだが、1年ほどたったころ彼に呼び出され、別れたと聞いた。そのときも、マヤさんは「じゃあ、私とつきあおうよ」と言ってみた。
「それでもタクトは適当に話をはぐらかした。それ以来、毎年、同じような時期に私がつきあってと言って、彼がニヤニヤしながら話をそらすことが続いているんです。3年目からはもう、ふたりにとっての行事みたいになっていて、まともには受け止めてないと思います」
マヤさんも気持ちは真剣なのに、なぜか冗談交じりに言ってしまうのだという。
ところが3年前、事態は変わった。
「週に2回くらい会うこともあれば、月に1回みたいなこともある、本当にただの仲良しの友だち状態だったんですが、3年前にホテルに行ってしまったんです。実はうち、私が中学生のころ両親が離婚していて、私はそれきり父に会ったことがなかった。本当は母とは折り合いが悪く、私は父が好きだったんですけどね……。社会人になってから、父がある場所で施設に入っていることがわかり、迷ったけど再会したんです。それからたまに会いに行くようになりました。その父が死んだと連絡が来たのが3年前でした」
すでに再婚している母には告げず、彼女はひとりで父を荼毘に付した。ただ、どうにも気持ちのやり場がなくなり、タクトさんにすべてを話した。
「いつものように居酒屋でグダグダと話して外に出たとき、彼がぎゅっと抱きしめてくれたんです。それで一気に力が抜けて涙が止まらなくなりました。彼はそのままラブホに私を連れて行ったんです」
朝まで泣きながら彼女は心の内を吐露した。母への複雑な思い、父との思い出。彼は何も言わず聞いてくれた。
そして話し終わったとき、彼女は彼に抱きついてしまった。彼は拒否しなかった。
つきあいは変わらず
だが、それを機会に恋人関係になったわけではなかった。「私のほうは彼への思いが強くなっていったんですが、彼は変わらない。年に1度くらい、つきあおうよと言う行事も続いています。あれからの3年間で数回、セックスもしているんです。会おうという誘いはありますが、彼からセックスをほのめかすことはない。そちらは全部、私から誘っていますね」
タクトさんの言動が「ずるい」と受け止められる向きもあるだろうが、彼女自身は彼に「都合のいい女」と扱われている実感はない。むしろ、彼女自身が感じているように、彼自身も「恋人関係」となると終わりが見えることを畏れているのではないかと思っている。
今はどちらにも恋人もいない。それでもふたりがちゃんとつきあう関係にはならない。
「彼に私をどう思っているのか聞きたいけど、私自身、今の関係を壊したくない。とはいえ、こんなふうにずるずるだらだらと関係をもっているのもよくないとわかっているんです。このままだと私はずっと恋ができない」
友だちのような恋人のような、どちらでもないような。人は関係に名前をつけないと不安になるものだ。だが、この関係がいつまで続くか、チャレンジしてみてもいいのかもしれない。
「本当にこのままでいいのかと思いつめたら、きっと揺さぶりをかける時期がくる。私もそう思ってはいるんですが、なかなかその時期が来ないみたい(笑)」
気持ちを決めきれないのは、それだけ迷いが生じているということなのかもしれない。