withコロナの時代にPTAができること
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、学校の見直しが進む今だからこそ、PTAは、新しく生まれ変わるチャンス。withコロナの時代にPTAができることについて、考えました。withコロナ時代の今、PTA活動を見直す絶好の時期
3月から4月といえば、卒業、入学、進級の時期。“PTA繁忙期”シーズンです。しかし、新型コロナウルス感染拡大に伴う突然の休校要請に伴い、多くの学校で、PTA活動の休止が余儀なくされました。“強制感を可能な限り排除するPTA活動”に積極的な自治体として知られる八王子市。市内の小学校PTAをとりまとめる八王子市立小学校PTA連合会が、市内44の小学校PTAに対して行った「現状調査」によると、旧役員から新役員への引き継ぎが完了しているのは16%(7校)のみ。
役員会議の開催は、「休校終了後」もしくは「時期未定」と答えた学校が89%(39校)。2020年度のPTA活動は、「休校終了後に検討する予定」と答えた学校は84%(37校)でした。(2020年4月12日現在/出典:単位PTAの2020年度運営に向けた現状調査)
私が運営しているFBグループ「PTA・卒対の今を楽しく知る会」でも、今年度のPTA活動について聞くと、「新役員がまだ決まっていない」「引き継ぎは終了しているが、何をすべきか模索中」などの声が寄せられました。
コロナ禍により、企業は働き方、学校は学び方の見直しを迫られています。PTAも同じです。今だからこそ、本来果たすべき活動を見直す必要があるのではないでしょうか。
オンライン化の推進で、PTA活動をスリム化
withコロナ時代にPTAがすべきことは、「オンライン化の推進」です。以下の3ステップで進めることが望ましいのではないでしょうか。⚫️STEP1:PTA執行部が、オンライン会議の体制を整える
対面による会議が困難なときでも活動が止まらないよう、執行部役員の間でオンライン会議ができる体制を整える。
⚫️STEP2:校長先生、副校長先生を上記体制に誘う
学校とPTAの情報共有が迅速にできるよう、執行部のオンライン会議グループに校長先生、副校長先生を誘い、必要に応じて情報共有を行える体制を作る。
⚫️STEP3:会員(保護者)への連絡ツールを「紙」から「電子」に
配布、回収に加え、総会の議決等もすべてweb上で行えるようにすることで、人的、時間的リソースが限られるなかで、無駄な会議等がおのずと排除。業務の大幅なスリム化を図る。
これまで多くのPTAでは、会員(保護者)への連絡は、「紙」と、学校や地域が導入しているメール配信システムによる「メール」で行ってきました。PTA総会の議決や委員希望アンケートは紙で配布、回収が一般的でしたが、役員が集まってアンケートを集計したり、PTA総会や選出会の開催は困難です。
各家庭のインターネット環境、保護者一人ひとりのITリテラシーは千差万別ゆえ、これらを実現させるのは難しい、と思う人がいるかもしれません。しかし、こんなときこそ、人と人とがつながるチャンス。
まわりを見渡せば、ITに詳しい保護者が1人や2人はいます。その保護者をキーパーソンに、オンライン化に向け「まず、できることからやってみる」ことが大切だと思います。
PTA主導で「新1年生ZOOM交流会」を開催
緊急事態宣言発令により、外出自粛が続いた4月。神奈川県の小学校でPTA副会長をつとめる増島佐和子さんが、子どもたちの休校期間中の不安解消を目的に、PTA主催で「新1年生ZOOM交流会」を発案、開催しました。実現までの流れは、以下です。
・企画案を役員にオンラインで提案し、承認。
・校長先生に提案し快諾、実施決定。
・校長先生と役員で、実施内容についてZOOMで打ち合わせ。
・学校配信メールでZOOM交流会開催告知、PTAのHPに交流会詳細とZOOMアクセスマニュアルをアップ。
・学校配信メールで各クラスのZOOM招待URLを配信。
・アクセス確認日を経て、当日をむかえる。
「子どもと保護者が一緒に参加」をルールに、開催は、多くの参加者が見込まれる日曜日に。当日は、PTA役員をファシリテーターに、
①校長先生の挨拶
②子ども達の自己紹介に加え、「おうちで何をしているか」を順番に話す
③質疑応答
この流れで行い、無事に終了したそうです。
初めての試みだったにもかかわらず、参加率は51%、参加した保護者の9割が、交流会開催を「とてもよかった」と評価。ZOOMの使用についても、アクセス確認日やマニュアルがあったため、「難しかった」と答えた保護者は6.9%とほんのわずかでした。
そして、交流会実施後。校長先生から「PTAのようにスピード感をもつことが、とても大切だと思います」と連絡があり、なんと、学校主体で全学年クラスごとのオンライン活動が導入されたそうです。
オンラインを「学校と家庭のコミュニケーションツール」としてとらえ、PTAから働きかけることで、新たな価値が生まれたのです。
学校、家庭、PTAがオンラインを軸に新しい関係を構築する
文部科学省が掲げたGIGAスクール構想(〈GIGA = Global and Innovation Gateway for All.〉の略。変化の激しい時代に合わせ、教育現場でICT〈Information and Communication Technology/情報通信技術〉を活用し、2023年までに、すべての小・中・高等学校、特別支援学校で1人1台の学習用PCの導入をめざす計画)が、このコロナ禍で、突然前倒しとなりました。しかし、東京23区を例にあげると「パソコン1台あたりの児童生徒数は、23区内1位の渋谷区は1人/台、最下位の練馬区は16.5人/台」(出典:文部科学省『平成30年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果』)。その環境は、自治体によりかなりの格差があるのが現状であり、学校、先生によってはオンラインに抵抗感を示しているケースも少なくありません。
学校現場が揺れ動く今、PTAを「オンラインを軸に学校、保護者と連携し、コミュニケーションの場、学びの場、レクリエーションの場として提供、提案する保護者のコミュニティ」としてとらえ、活動していくことはできないでしょうか。
フローの一例は、以下です。
・PTA執行部から学校に働きかけ、オンライン学習やコミュニケーション、学校活動において保護者に協力してほしいことをヒアリングする。
・保護者に「子どもたちの学びや、学校、子ども同士のつながりをやめないためにしてほしいこと」「そのために、自分ができること」についてアンケート。学校とPTAで共有する。
・ヒアリング、アンケートをもとに、学校と保護者(PTA)が、オンラインを軸に何ができるかを検討し、実践に向け準備を進める。
今後しばらくは、前代未聞の非常時が続くでしょう。そんななか、「学校は何もしてくれない」などとクレームをいうだけでは、何も変わりません。
コロナ禍を機に、PTAは、これまでの活動を見直し、ムダを省いていく。そのぶん、「大切なこと」「必要なこと」を見極め、力を注ぐ。主体性をもって活動することで、「参加しやすいコミュニティ」へと進化をとげることができるのではないでしょうか。