それでも離婚を選択しないオンナたち
芸人の浮気三昧という話題が今でも盛り上がっているが、「離婚」の言葉は聞こえてこない。一般的に言っても、浮気夫を許している妻がいれば、「どうして離婚しないのだろう」と言われてしまうご時世だが、実際には何があっても離婚を選択しない女性がいるのだ。経済力か愛情なのか、はたまた圧倒的な魅力なのか。
浮気癖が直らない夫だけれど
結婚後、最初に夫の浮気が発覚したのは、5年前、結婚して8ヶ月後というのはジュンコさん(38歳)だ。そのとき彼女は妊娠5ヶ月だった。
「調子がよくてやさしいからモテるのはわかっていました。でも結婚して1年もたってないし、私は妊娠中。まさかこんなときに裏切られるなんてとショックでしたね」
2歳年上の夫とは2年つきあって結婚したが、その間にも浮気疑惑はあった。ただ、どんなに問いつめても認めないし、最後は「オレにはジュンコしかいないのに」と棄てられた子犬のような目で見つめてきたため、それ以上、責めることはできなかったという。
「浮気がわかったのは、夫が家の中で電話をしていたから。私、その日はあまり体調がよくなくて早めに帰宅して自室で休んでいたんですよ。夫が帰ってきてすぐに声が聞こえてきた。電話してるんだと思ったけど、聞こえてくる内容がラブラブすぎて、どうしたらいいものかと思うほどでした」
衝撃より、「やっぱり」という思いが強かった。電話が終わるなり、リビングに現れた妻を見て、夫は「うわあ」と驚いた。
「何も聞いてなかったフリをしました。そのときは責めることさえめんどうだったんです、体調が悪くて。調子がよくないと言ったら、夫はすぐに夕飯を作ってくれました」
こまめでやさしいのだという。だからこそ、浮気もするのかもしれないが。
2年前にはもうひとり子どもが生まれたが、夫はちょくちょく怪しい行動を繰り返している。
「私も仕事を続けていますが、もし離婚してシングルマザーになったら、経済的にも時間的にも、とてもやっていけないと思います。浮気といってもお金をつぎ込んでいるわけではなさそうだし、週に1、2回帰宅が遅くなるくらいなので、今のところは放っておこうかなと。夫が家庭を顧みなくなったりお金を入れなくなったりしたら、離婚はもっと現実的になると思うんですが」
子どもがふたりいると、とりあえず現実的に自分が楽な方向を選択しますねとジュンコさんは笑う。それにしても浮気されたと思いながら第二子を産むあたり、腹が据わっているともいえる。
「オンナにだらしないのはわかっているけど、もうひとり子どもがほしかったし……。でももうひとりいたら浮気をやめるかなという思いは少しありましたね」
離婚しない理由はそれだけではない。ジュンコさんの両親が離婚して、彼女は母ひとり子ひとりで育っていることも大きい。
「結婚したら、やはり添い遂げるのが正しいはず。そんな思いが強いんです。だからよほどのことがない限り、私から離婚を選択することはないと思いますね」
彼女が狙うのは、「夫が年をとって、女性への体力気力が衰えること」だそう。そうなって初めて、夫婦として生活を楽しめるのかもしれないと彼女は笑った。
落ち込む日々だけど、今は離婚しない
昨年、夫の浮気が発覚、夫自身も認めて謝罪したものの、半年後にまだ関係が続いていることがわかり、ユウミさん(42歳)はひどく落ち込んでいた。このところの自粛生活で、夫も在宅勤務となっていたが、週に1度の出社が「今週は2回なんだよね」と言って出かけていったこともある。おそらくその日は、相手の女性と会っていたはずだとユウミさんは言う。夫は2歳年下、そして相手の女性は夫の学生時代の後輩、バツイチ、子どもなしだ。そこまでわかっていながら、ユウミさんは今は離婚という選択肢はないと決めている。
「結婚して12年、子どもはまだ10歳と6歳です。私はパート仕事なので、離婚したら経済的に破綻します。ほとんどワンオペ状態であっても、夫の父親としての存在は大きい。子どもたちは父親が好きですしね」
ため息交じりにそう言ったあと、彼女はきりっとした口調でこう続けた。
「ただ、私自身は夫への愛情はありません。心の中で夫のことは見捨てています。でも生活をしていく上ではやむを得ない。だから15年後の離婚を見据えて、節約しながらお金を貯めていくつもりです。それまではせっせと夫の不貞の証拠も集めていきます」
長期戦を見据えて気持ちを切り替えたのだそうだ。ただ、もし夫の会社が倒産するとか、夫が事故や病気で働けなくなったら、あっさり離婚を選択するつもりだとも言った。
「冷徹だと思われるかもしれませんが、私、3年くらい前に夫から『オンナとして見られなくなっちゃったんだ』と宣言されているんです。ショックがひどくて1週間くらい、泣けてしかたがなかった。そんな男と結婚生活を送っている自分への嫌悪感もあったけど、離婚したら暮らしていけない現実もある。子どもの人生を最優先に考えての結論なんです」
夫としてではなく、子どもの父親として接する。そう決めてからは、自分の感情を封印しながら過ごしている。
「いつか見てろ。心の中でいつもそう叫んでいます」
ユウミさんはようやく薄い笑いを浮かべた。