少子化に歯止めがきかない…それでも子どもを産まない理由
6月5日、厚生労働省が2019年の人口動態統計を発表した。それによると、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に生む子どもの数)は1.36で、前年から0.06ポイント下がった。2007年以来12年ぶりの低水準だという。
晩婚化、結婚しない人が増えているのがその理由だという。今の世の中、晩婚化も非婚も、それぞれの生き方ではある。
結婚したけど子どもはいらないと決めた
結婚したのは仕事を始めてから10年たったとき、と振り返るのはアミさん(36歳)。相手は趣味のサークルで知り合った同い年の男性だった。
「もともとは音楽教室に通っていた仲間で作ったサークルです。私はサックス、彼はピアノで主にジャズなんかを演奏してる。就職してから仕事が忙しくて趣味なんてもてなかったけれど、30歳のときに一念発起して、昔やっていたサックスをまた始めたんです。それが楽しくて結婚なんてしなくてもいいと思っていたんですが、彼とは気が合って」
1年ほどつきあって婚姻届を出した。結婚式も披露宴もなしで、友人を招いた簡単なパーティーを開いただけ。
「彼はフリーランスでWEB系の仕事をしていますが、はっきり言って収入に波があるんですよね。話し合って、彼が私の被扶養者になりました。家事はほぼ彼の担当。代わりに私は残業も出張も今まで通りにばんばんこなす。結婚という社会的契約に乗っかるなら、お互いにメリットがないとね、という話し合いのもとでそうなりました。彼は収入が安定、私は家事をしなくてすむ。相互補完ですね」
もちろん、一緒にいて楽しいし愛情があるからというのは大前提だ。本来なら結婚しなくてもいいと思っていたアミさんだが、彼と話すうち、お互いにメリットがあるなら婚姻届を出したほうがいいという結論に至ったのだという。
「ただ、子どもはいらない。そう言うと冷たい人間に聞こえるから声を大にしては言えないけど、私は仕事と趣味でていっぱい。彼も、仕事はがんばっているし、もっといい仕事をしたいとも思ってる。だからこそ子どもに縛られたくないと一致したんです。私も彼も、自分のしたいことをやっていきたい。そこに子どもを育てる余裕がないということです」
正直言って、このご時世、うちの会社は決して小さくはないけど、それでもいつ業績が悪化して倒産するかわからないから、と彼女は小声で言った。
自分の人生を優先させ、子どもはいらないと考えるカップルも増えている。もちろん、それは彼らの選択であって、誰もとやかくは言えない。
子どもはひとりでよかったかも
一方、「ほしかったけど、2人目はあきらめた」という女性もいる。ユキノさん(38歳)だ。30歳のとき3歳年上の男性と社内結婚して退職。32歳で長女をもうけた。「共働きも考えたんですが、やっぱり夫婦で同じ会社にいるのが私にはどうしても窮屈な感じがして。夫も同じ気持ちだった。だから私が退職したんです」
出産後、仕事を探したが、正規雇用はむずかしかった。以来、パートで働いているが、夫の収入が実質、目減りしている昨今、なかなか2人目をもとうと思えなかった。そこへこのコロナ騒動である。
「残業代やもろもろの手当が削られた分、夫の収入はさらに減りました。私もパート先から自宅待機を命じられていたので、家計は火の車。本当はもうひとり子どもがほしかったけど、なんとなく先延ばししていたんです。でもこれで2人目はいらない、と決意できました」
6月に入ってから、夫は出社するようになった。ユキノさんもパートを再開したが、今はもう一度、自分の人生を見直す時期だと考えている。
「この先のことを考えると、やはり私がどこかで正社員になったほうがいいのかもしれない、と。そこで今、就職活動をしているんです。昔とった資格がいくつかあるので、それをアップデートしながら活用できないかと思って」
経済的な理由から、2人目はもてないと考えている女性たちも多い。万が一、保育園に入れなかったら人生の計画がすべて狂ってくるのが目に見えているからだ。
「うちみたいに、子育てはしているけどそれほど収入が多くないという世帯に、もうちょっと手厚い支援があれば、2人目もいけたと思う。お金の支援というよりは、安心して子どもを預けられる環境の問題が大きいですね。小児科医と保育園が連携してくれるとか、夜遅くなってもケアしてくれるとか、そういう細かくて手厚い支援があれば、もっと女性はバリバリ働けると思うんです」
支援の方法にもっと個別プランがあってもいいはずだ。きめ細かな対策をとっていかない限り、少子化は止まらない。