“オトナ婚”なのに親の反対を受けて煮え切らない彼
結婚するなら、誰からも祝福されたいのは当然のこと。だが、なかには子どもがいくつになっても反対する親もいる。煮え切らない彼の態度に女性はイライラするばかりだ。
結婚する気はなかったのだけれど
もともと結婚願望は強くなかったというミカさん(38歳)。ところが1年前からつきあい始めた5歳年上の彼は、半年ほどたつと、「結婚したい」と猛然とアプローチしてきた。
「そもそも彼は離婚経験者なんです。子どもはいなかったけど、離婚後はもう結婚はこりごりと思ったらしいです。それなのにつきあっているうちに、結婚願望がふくらんでいったみたい」
ミカさんは学生時代からひとり暮らし。ひとりに慣れているので、彼からの「じゃあ、とりあえず同棲しよう」という提案も、なかなか受け入れなかった。
「でも私もだんだん彼のことが好きになっていったので、彼のプロポーズがあってから3ヶ月ほどしたときに一緒に住んでもいいかなと思うようになりました。ちょうど私の賃貸マンションの更新時期が重なり、彼のマンションに越したんです」
彼は30代前半でマンションを購入、ローンを支払っていた。ローンと光熱費は彼、生活費はミカさんが払うということで、お互いに支出もラクになった。
「家事の分担なども気になっていたのですが、そのあたりはお互いにできるほうがやるということに。一緒に住んでみると、彼は意外と束縛もしない。あれほど強烈なアプローチがあったわりには好きにさせてくれる。予定を合わせて会社帰りにデートしたり、週末は一緒に出かけたりと楽しい日々が続きました」
これほど楽しいなら結婚してもいいかなと彼女は考え始めた。それを見透かしたように、彼からまたもプロポーズ攻撃。
「そこで大事なことを思い出したんです。年齢が年齢だから、私は子どもを産むつもりはない、ということ。それでいいなら、と彼に言うと、彼は『僕がミカと一緒にいたいんだ。子どもはどちらでもいい』と。私も、自然に任せてもしできればそれはそれで受け止めようとも思いました」
ふたりの間では何も問題はなかった。それが昨年末のことだ。
突然の親の反対を受けて
43歳と38歳の結婚である。ミカさんは親に報告はしても、ふたりだけで婚姻届を出せばそれですむと思っていた。「ごく親しい友人と食事会くらいはしたいなあ、なんて思っていました。ところが彼は結婚しようとなったら、すぐに『いつ、実家に来てくれる?』と。あ、そういうこともするんだと意外でした。報告だけして、会うのはあとからゆっくりでもいいんじゃないかと思ったけど、彼はどうしても会わせたいって。それならと、今年のお正月に挨拶にいったんです」
彼の実家は東京から飛行機で1時間以上かかる場所だ。両親は70代半ばで、彼の弟一家とともに暮らしている。
ある程度、息子から状況は聞いていたのだろう。一応、迎え入れてはくれたが親戚なども集まっている中で、彼の両親は彼女に尋問のようなことをした。
「なぜその年まで結婚しなかったのか、子どもは産めるのか、長男の嫁として何を考えているのかと矢継ぎ早に聞かれました。どうしてそんなことを答えなければいけないのか、さっぱりわからない。私の人生を否定されているようで悲しかった。彼もちょっと驚いたみたいでしたけど、彼、まったく両親に逆らえないんですよね。黙っているだけ。私も地獄のような時間を耐えようかと思いましたけど、とうとう我慢できなくなっちゃって」
ミカさんは静かに、だがきっぱりと言ったそうだ。
「結婚したいと言ったのは、おたくの息子さんです。私は自分なりにきちんと生きてきたつもり。結婚しなくてもいいと思っています。いきなり尋問みたいなことをするのは失礼じゃないですか」
と。そして彼女は立ち上がってひとりで外へ出た。
「ホテルに泊まる予定だったんですが、そのまま私は帰京しました。彼からは電話やメッセージがありましたが、『とにかく私は帰る。あなたは好きにして』と返しました。結局、彼は2泊の予定を1泊にして帰宅しました」
それが彼の曖昧なところだとミカさんは指摘する。親にも彼女にもいい顔をしたかったのだろう。
「親が賛成しないから婚姻届を出すのは少し先にしたい、だけどミカとは別れたくない。彼はそう言いました。私も別にどうしても婚姻届を出したいわけではないからそれでもいいけど、あなたの優柔不断な態度が非常に不快だったと言ったんです。彼はひたすら謝っていましたね」
再度、別居に踏み切るかどうか悩んでいるうちに、新型コロナウイルスの影響で引っ越しもできなくなった。
「ふたりとも在宅での仕事が多くなって、なんとなく家庭内別居に近い状態ですね、今は。険悪なわけではないけれど、私はやはり彼を信頼しきれなくなっているところがあるし、彼は彼で、あのときの私の態度が親や親戚には強烈すぎたと嘆いているし」
この先、生活が落ち着いていくと自ずと答えが出るわけでもないだろう。いつかきちんと決着をつけなければと思いながら、ふたりとも向き合うことを避けている状態は続いている。