新技術の盲点
ひかり電話が「IP電話」であることは前述したとおりですが、そもそもIP電話という技術は、長年にわたって培われてきた公衆電話交換網と比べると、非常に新しいものです。特にひかり電話は、ADSLで提供されてきたIP電話よりも高度な技術が必要で、そういった新しいシステムで不足しがちなのは、経験やデータです。
今回の原因となったプログラムミスも、今まで発見されなかったということは、いくつかの条件が重なった場合に誤作動をしてしまうものだったと予想でき、そういったものがまだ他に無いとは言い切れないどころか、恐らくいくつもあることでしょう。
使用している機器のキャパシティや耐久性についても、莫大な負荷をかけた状態でのデータなどがまだ不足している今、今後どのような故障が起こりうるかNTT側でも予測が困難な状態だと思います。
不安を抱えながら拡販し続けた理由
本来ならば、システム上の不安を抱えている状態では、様子を見ながらやるべきだったのですが、NTTはひかり電話を積極的に販売し、拡販に注力してきました。その背景には、競合する他社商品の登場はもちろん、ひかり電話を利用するためにはBフレッツ(光ファイバー)を導入が必須であることから、ひかり電話の拡販はすなわちBフレッツ拡販に繋がるといった理由があったものと思われます。
携帯電話が普及して固定電話離れが進んでいます。それに加え、IP電話や格安市外通話サービスの台頭により収益が悪化しつづけているNTT東西にとって、Bフレッツの拡販のみが唯一の活路といっても過言ではない現状があるのです。
今回の事態を受け、NTT東日本ではひかり電話の販売自粛に追い込まれました。
ライフラインにするのは時期尚早
ひかり電話の最大の魅力は、基本料金の安さと通話料金の安さです。基本料金は固定電話に比べると維持費が数分の1程度に抑えられるため、事業などで複数回線を持つ人にとっては是非とも導入したいところでしょう。一般家庭でも、ほとんど固定電話を使わないのであれば乗り替えたい人も多いはずです。新しいサービスですが、NTTブランドだけに信頼感に疑問を感じる人も少ないようです。
そのような理由でひかり電話を契約する人の多くは、利用中の固定電話の番号を移行して、固定電話を解約(休止)してしまうわけです。
固定電話は緊急時などのライフラインとしての役割を担っています。一般家庭においても、携帯電話を持っていない人の場合は、固定電話を止めてひかり電話にするのは、リスクがあるため時期尚早な気がします。
ビジネス利用の場合も、複数回線の一部をひかり電話にして、万が一ひかり電話が不通になった時でも業務に支障がないようにすれば、利用価値はあるとは思います。ただ、全部の回線をひかり電話に乗り替えるのは、現時点では筆者はお勧めできません。
システムの整備を最優先に
ひかり電話は、ADSL等で利用する050で始まるIP電話とは異なり、ライフラインとしての役割を担っています。NTT東西はそのことを真摯に受け止め、簡単に故障しないシステムを早急に整備して欲しい物です。
現在、携帯電話では110番に通報しても発信者の位置がわからず、119番に電話をしても管轄の消防署に繋がらない可能性があります。
通話急病で人が倒れた、火事になった、事件が発生したというときに「電話が繋がらない」という最悪の事態にならないように、NTT東西にはがんばって欲しいものです。
■参考サイト
・ NTT東日本