在宅ワークの間に、不倫相手とこそこそ連絡をとる夫
不倫をしていた人たちは、このコロナ禍の日々、連絡だけは密にとっているようだ。ところがそんな夫の姿を見てしまった妻は、当然、穏やかではいられない。
夫がこそこそ連絡をとって
夫婦ともに在宅ワークとなっているというミカさん(42歳)。ふたりとも週に1度程度の出勤となっている。結婚して14年。3歳年上の夫と、この春から中学生になる娘と、小学校5年生になる息子がいる。
「子どもたちは自室で勉強したり、息抜きにゲームをしたりしているようです。昼間はあまりかまわないようにして、私はキッチンで仕事、夫はリビングで仕事をしています。どちらかがリモートで会議をするときはなんだかイヤですね。今まで見せてこなかったお互いの“仕事の顔”が見えてしまうのは、あまり快適なものではありません」
そう思ったとき、同時に「私は夫の全部を知りたいわけではないんだ」と痛感したそうだ。家にいるときは夫と父としての顔だけでいてほしい、と。
ところが最近、夫はリビングで仕事をしているのに、ときどき電話をしながらリビングを出ていくことがあるのに気づいた。
「あれ、おかしいと思ったとき、イヤな予感がしました」
こういう予感はだいたい当たっているものだ。あるとき、ミカさんがリモート会議に参加していると、リビングにいた夫がこそこそと電話で話しているのが目に入った。
「表情から見て仕事ではありません。会議中なのに気になって気になって。私の会議が終わると同時に夫が出て行ったので、こっそりあとをついていってみると夫は玄関のところでひそひそしゃべってる。『大丈夫だよ、またすぐ会えるよ』『愛してるってば。いつも言ってるだろ』と私には言ったことのない甘い声で囁いていました。怒りよりも、なんだか情けない気持ちでいっぱいになりました」
彼女はそのまま玄関からの死角に佇んでいた。すると電話を終えた夫が戻ってきて、妻を見るなり「うわっ」と驚いて声を上げたという。
「ご苦労さまですね、と嫌みを言ってやりました。すると夫は、『部下からいろいろ悩みを相談されちゃってさ』と空々しいことを言ってる。『へえ、あなたは部下から相談されると、愛してるって言うんですか、へえ』と答えました(笑)」
夫は黙って妻の顔を見つめていたとか。
今は我慢するしかないけれど
このご時世にたとえ離婚しても住むところや経済的に困る。ただでさえ不安定な子どもたちの心も気にかかるから、ミカさんは今は離婚を切り出すつもりはない。「だけど、覚えておけよ、という気持ちですね。あれ以来、夫にはほとんど敬語で話しています。私、相手に愛想をつかしかけているとき、つい敬語になってしまうんです。もう他人だという気持ちがそうさせるんでしょうけど」
夫は何ごともなかったかのようにふるまっているが、夫婦の会話はほとんどない。子どもたちも薄々、何かあったと気づいているようだ。
「夫も私も積極的に子どもたちに話しかけてはいるんですけど、子どもたちからみれば両親は互いに言葉を交わしていないとわかっていますよね、ふたりとも大きくなっているから。申し訳ない気持ちもあるけど、あんな愛の囁きを実際に聞いちゃうとね……。よくあんなことを自宅で、別の女性に言えますよねえ。メッセージ機能を使ってならまだしも、肉声で」
夫の仕事の顔のみならず、“男”としての側面も妻は見たくないのかもしれない。それは逆に言えば、妻にとって「夫はすでに男ではない」と言っているに等しい。
「確かにそうかもしれません。他に女性がいると知って嫉妬するよりは、家であんな電話をしている愚かな家族という目で見ているような気がします。いつの間にか、夫は家族で男ではなくなっている。自分だけ楽しい思いをしていることへの嫉妬はあるかもしれませんけど」
だからショックを受けているわけではない。ただ、夫の愚かさを嘆いているのだとミカさんは苦笑交じりに言った。