夫の前妻とのつきあいに疲れて
不倫から、結果的には略奪愛となって結婚した女性がいる。ただ、夫の前妻は離婚後もときどき遊びに来たりする。前妻に悪意はなさそうだが、現在の妻の気持ちとしては穏やかではないだろう。
結婚生活はすでに破綻していた
家庭のある男性と恋愛し、最終的には彼が離婚して結婚という形をとったのはイツコさん(38歳)だ。結婚して1年あまりだが、疲れ切っているという。
「彼は昔、私が勤めていた会社の先輩。そのころはよくグループで遊びに行ったりしていましたが、その後、私が転職してつきあいはなくなっていました。再会したのは33歳のころ。偶然、仕事関係の集まりで会ったんです。聞けば彼もその後、転職していて同じ業界にいたみたい」
ときおり飲みに行ったり食事をしたりするようになるが、当時、彼女には恋人がいたし4歳年上の彼には家庭があった。
それでも会うたび、彼と一緒にいる時間がかけがえのないものになっていく。2年後、当時の恋人が浮気、イツコさんはすぐに別れを決意した。
「その余波で先輩と関係をもってしまって(笑)。そのまま先輩後輩から恋人へと関係が変わりました。自分でも気づいていたんですよね、先輩のことが大好きだということに。だから当時の恋人と別れることにあまり躊躇がなかった」
つきあうようになった既婚の先輩は、「うちはもう夫婦関係が破綻している」と言った。そこで彼女は「じゃあ、離婚して」と告げた。
彼の離婚は2年後に成立、彼の妻も浮気をしていたので慰謝料はなし、ふたりの子の養育費だけで離婚した。
「どうやら奥さんも別れたくて離婚のきっかけを探していたみたいですね」
ふたりきりで新婚生活を始めた。ところが3カ月もたたないうちに、週末になると彼の元妻が子どもたちを連れてやってくるようになった。
我慢の限界が近づいている
最初は自分が彼を奪った形になったことを負い目に感じていたイツコさんは、元妻と子どもたちに料理をふるまったり手作りケーキをごちそうしたりした。「だけどそのうち、どうして私がこんなことをしなければいけないのか、しかも彼女は手土産ひとつもってきたことがない。おかしいんじゃないのと思い始めたんです。彼にそう言ったのですが、彼は子どもに会いたいから、『まあ、いいじゃないか』って感じで……」
ふたりとも平日は仕事だから、週末しか一緒にいられない。それなのに新婚生活を邪魔されて、イツコさんはだんだん気持ちが沈んでいった。
「私は週末も仕事に行ったり、ひとりでジムに行ったりするようになりました。夜帰ってくるとまだ元妻一家がいたりする。土曜に来て日曜にも来ることがあって、あるとき、夫に『いいかげんにしてよ』と叫んでしまいました」
夫の子どもたちはふたりとも小学生。ひとりはこの春、卒業だから中学生になったらもう来ないと言っているらしい。だが、元妻は下の子を連れてこれからも来るだろう。
「夫が私との関係をどう思っているのかわからなくなって、尋ねてみたんです。そうしたらイツコと結婚できてうれしいって。だったら私との時間も大事にしてほしいと伝えたんですが、『子どもはすぐ成長して、いつ会えなくなってもおかしくないから』って。元妻には会いたいわけではないと言っていました。でも来るとけっこうふたりでしゃべっているし、奥さんも気が利かないわよねと私が言ったとき、夫はちょっと不満そうだった。案外、今も元妻を気にかけているのかもしれません」
直接、元妻に「毎週来るのも大変だから、月1くらいにしたらどうですか」と言ったこともある。すると彼女からは「大丈夫よ、そんなに遠くないし」と場を読まない答えが返ってきた。
「今は気にしないようにして、私は私で出かけたり自室にこもったりしています。最近は土日のどちらかになったので、少しだけ気持ちがラクになりましたけど、夫への信頼と愛情は激減しています」
嫁姑問題もそうだが、夫婦の間に他者が入ってきたとき、夫が誰に顔を向けているか、そこを妻はしっかり見ている。しかもイツコさんは話し合いができない状態。妻の不満を夫はまったくわかろうともしないのだ。
「もちろん、大変な思いをしながら待って結婚したんだから、そう簡単に別れるわけにはいきませんけど。うーん、この人、こういう人だったのか……という気もしていますね」
力なく笑った彼女の表情は曇ったままだ。